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オープンインターネットメディアが彩るデータクリーンルームの新しい流れ[インタビュー]

昨今、活用が進んでいるデータクリーンルーム。現時点では圧倒的なユーザーを抱え、彼らのファーストパーティーデータが活用できるGoogleAmazonMetaなどの「Walled Garden」が提供するデータクリーンルームの活用が主流となっている。 

 

そんな中、「オープンインターネット」と呼ばれる一般のWebサイトなどのメディアを束ねたデータクリーンルームが登場し、今後のデジタルマーケティングにおいて楽しみな存在になる気配がでてきている。 

 

「オープンインターネット」のメディアは、それぞれユーザーの趣味嗜好により深くマッチしたコンテンツを提供することで熱烈なファンを抱えている。また、誰もが知りたいことを調べる際に、最終的にはWebサイトをチェックしていることも多いのではないだろうか? 

 

そんなオープンインターネットを活用したデータクリーンルームについて、その事業を推進する二人に話を聞いてみた。 

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対談者:  綿本和真株式会社フォーエム 代表取締役) 

 

梅野浩介(Globalive株式会社 代表取締役) 

 

本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。本日のテーマは「オープンインターネットメディアが彩るデータクリーンルームの新しい流れ」です。近年、データプライバシーへの配慮が重要視される中で、広告主やパブリッシャーが安全にデータを活用するための仕組みとしてデータクリーンルームの導入が進んでいます。では、まずお二人から自己紹介と、データクリーンルームへの取り組みについてお話しいただけますでしょうか。 

 

梅野氏: 私はGlobalive株式会社の代表を務めています梅野です。弊社は、広告テクノロジー分野における海外の最先端ソリューションを、日本市場に適合させるためのコンサルティングサービスを提供しています。私たちは特に、日本国内のパブリッシャーや広告事業者とのパートナーシップを重視し、クライアント企業が持つデジタル広告の潜在力を最大限に引き出すことを目指しています。実際、昨今ではプライバシー保護と広告パフォーマンスの両立が重要視されており、そのソリューションの一環として、私たちはデータクリーンルームの導入を推進しています。 

 

現在、弊社が日本での展開をサポートしている「Optable」と「ID5」は、クライアントがユーザーデータを安全に活用できるよう設計された革新的なソリューションです。Optableは主にオープンインターネット領域のデータクリーンルームとして機能し、クライアントが保有するデータを匿名化しつつ、安全に活用できる仕組みを提供します。また、ID5は共通IDの提供により、オープンインターネット上でログイン情報がないユーザーも含めて推計技術によりプライバシーを保護した形で安全に識別できるのが強みです。こうした技術の普及により、広告のターゲティング精度やパフォーマンスがさらに高まり、オープンインターネット全体の健全な成長に寄与できると考えています。 

 

綿本氏: 株式会社フォーエムの代表を務めております、綿本です。フォーエムは、主に日本国内のパブリッシャーやコンテンツプロバイダー向けに収益化支援を行い、グループ会社は海外向けの支援も担当しています。顧客のビジョンを実現させるため、私たちは「デジタルプレミアムマーケットプレイス」という概念を提唱し、パブリッシャーが持つコンテンツの価値を最大化し、質の高い広告体験を提供しています。 

 

今回の対談テーマである「データクリーンルーム」についても、当社が積極的に取り組んでいる重要な分野です。フォーエムでは、パブリッシャーが持つファーストパーティーデータを安全に活用できるデータクリーンルームの導入を支援し、プライバシーに配慮した形で広告の効果を最大化する手段として位置づけています。また、ID5のような共通IDソリューションを導入することで、より一貫性のあるターゲティングが可能となり、広告主にとっても有用なプラットフォームを構築しています。この取り組みが広がれば、オープンインターネットにおけるパブリッシャーと広告主双方にメリットが生まれ、より豊かなエコシステムが形成されることを期待しています。 

 

データクリーンルームの役割と仕組みについて 

 

ありがとうございます。さて、データクリーンルームという概念について少し詳しくお聞きしたいと思います。データクリーンルームは最近、プライバシー保護とデータ活用の両立のために注目されていますが、具体的にはどのような仕組みで、どのような価値をもたらすものなのでしょうか? 

 

梅野氏: データクリーンルームとは、企業が保有する顧客データや行動データを安全に共有し、データに基づいた広告効果の分析やターゲティング精度の向上に活用するための環境です。クリーンルーム内ではデータが匿名化され、第三者が直接アクセスすることはできません。これにより、情報漏えいやプライバシーリスクを低減でき、広告主とパブリッシャー双方がデータを活用してより効果的なマーケティングが可能になります。 

 

Optableの場合、広告主が保有するファーストパーティーデータをオープンインターネット上で安全に活用できるように設計されています。このプラットフォームを利用することで、1つのメディアだけではデータボリュームが小さくても、複数のメディアが束なりデータを安全にコラボレーションすることができます。そのデータを分析、活用することでオープンインターネット上でもデータドリブンなデジタルマーケティングが実現できるのです。一方で、オープンインターネットの課題である「ログインのないユーザー」に関しては、ID5が提供する共通IDを活用することで補完しています。これは、ユーザーがログインしなくてもID5の推計技術で安全に識別ができるため、オープンインターネット全体でのデータ活用の幅が広がります。 

 

綿本氏: 私もその点は非常に重要だと思います。データクリーンルームは、パブリッシャーにとっても大きな意味を持っています。特に、フォーエムが支援するパブリッシャーは、非常に有益なコンテンツを提供しているので、ユーザーの関心や行動データをより深く理解することで収益面で更なる貢献ができると考えています。しかし、プライバシー保護が求められる現代においては、従来のデータ活用法では限界があるため、データクリーンルームが新たな解決策となると確信しています。 

 

パブリッシャーが安全にファーストパーティーデータを利用し、ID5によって一貫したユーザーターゲティングが可能になれば、広告収益も増やせますし、広告主もオープンインターネットに対してより多くの予算を投じやすくなるでしょう。OptableID5を組み合わせることで、データクリーンルームはパブリッシャーと広告主の双方に大きなメリットをもたらし、オープンインターネット全体がより健全で持続的に発展していくことを期待しています。 

 

導入における課題と普及のためのステップ 

 

一方で、データクリーンルームの導入にはまだ課題も多いと思います。具体的に、普及にあたっての課題やハードルはどのようなものがあると感じていますか? 

 

綿本氏: 大きな課題は、データクリーンルームの導入が一般的にまだ認知されていない点です。多くのパブリッシャーが抱えているのは「そもそもどのような効果が期待できるのか?」という疑問です。フォーエムでは、これまでいくつかのパブリッシャーと実証実験(POC)を行い、データの安全性や広告効果の向上に関する具体的な成果を示すことで、少しずつ理解を深めてもらっています。まずは業界全体で具体的な事例を増やし、導入の成功例を積み上げることが、普及を進めるために必要だと考えています。 

 

梅野氏: 日本市場でも当然データのプライバシー保護に対する意識が高いため、特に新しい技術の導入には慎重な姿勢が求められます。多くのパブリッシャーや広告主は、データクリーンルームを活用することによるプライバシーリスクについてまだ懸念を持っているのが現状です。そのため、導入に際しては法的なガイドラインの明確化や、技術面での透明性の確保が非常に重要になってきます。 

 

具体的には、パブリッシャーが自社のデータを安全に共有できる仕組みや、データクリーンルーム内でのデータ活用がどのように管理されているかを理解しやすい形で提供することが求められます。また、国内市場ではWalled Gardenのデータクリーンルームの活用が主流になっており、オープンインターネットのデータクリーンルームは、そもそも情報が少なく、効果を含めた利用価値を示せていません。綿本さんが言う通り、事例を増やすことで、期待された価値が提供できることを具体的に証明する必要があります。 

 

業界全体として取り組むべき課題とデータクリーンルームの未来 

 

今お二人のお話を聞いて、オープンインターネットにおけるデータクリーンルームの普及には多方面での協力が欠かせないと感じました。今後、業界全体で取り組むべき課題についてもお伺いしたいと思います。 

 

梅野氏: まず、データクリーンルームの価値を分かりやすく業界全体に浸透させるために、共通の指標や基準を設けることが必要だと考えています。現在、先進的な広告主が活用しているWalled Gardenのデータクリーンルームは、広告効果やユーザー行動のデータを企業に直接提供する形で一貫性を保っていますが、オープンインターネットではデータを提供する媒体やクライアントごとにデータ仕様が異なります。そのため、共通の指標や評価方法を整備し、誰でも簡単に効果を測定できる仕組みが必要です。 

 

また、パブリッシャーや広告主がこの仕組みに信頼を寄せて利用できるよう、実際に成果が出た事例を積極的に共有する場を増やすことも重要です。業界全体としての知見を共有し、データクリーンルームの利用が促進されることで、オープンインターネット全体の質が向上すると考えています。 

 

綿本氏: 同感です。また、データクリーンルームや共通IDに関する情報の啓蒙活動も非常に重要です。例えば、広告効果の評価方法や、共通IDによるターゲティングの仕組みをわかりやすく解説することで、パブリッシャーや広告主が安心して新しい技術に取り組めるようになります。業界外の方々にとっては、これらの技術が複雑に感じられることが多いため、例えば専門用語を使わずに説明できる共通言語を作ることも普及の鍵です。特に広告業界ではCPACPCといった効果指標が使われますが、データクリーンルームの効果を具体的な数字や実例で示しながら説明することで、理解が促進されると考えています。 

 

広告主やパブリッシャーへのメッセージ 

 

それでは、最後にこれを読んでいる広告主やパブリッシャーに向けて、データクリーンルームの導入やオープンインターネットへの取り組みについてメッセージをいただけますでしょうか。 

 

梅野氏: データクリーンルームの普及は、オープンインターネット全体の収益性を向上させるための重要な鍵となります。現在、広告主やパブリッシャーが保有するファーストパーティーデータは、効果的な広告戦略を築くために欠かせないリソースです。OptableID5のようなツールを活用することで、パブリッシャーはプライバシー保護を担保しつつ、ユーザーの行動データをより精密に分析でき、広告主もデータに基づいた広告配信が可能になります。私たちは、オープンインターネットの価値を最大限に引き出すために、今後もクリーンルームの普及に尽力していきますので、ぜひ一緒に新しいエコシステムを作り上げていきましょう。 

 

綿本氏: データクリーンルームの活用には時間がかかるかもしれませんが、それはオープンインターネットの健全な発展に欠かせないプロセスだと思っています。私たちフォーエムは、パブリッシャーの皆様が安全にデータを活用できるよう、そして広告主が信頼を持って広告を出稿できる環境を提供するために取り組んでいます。このような取り組みが広がることで、オープンインターネットがさらに活性化し、業界全体の収益性が向上すると信じています。皆さんも、この新しい未来の構築にご協力いただきたいと思います。 

 

本日は、貴重なお話をありがとうございました。今回の対談を通じて、データクリーンルームの普及がオープンインターネットの持続的な成長に欠かせないこと、そしてその実現には業界全体での取り組みが重要であることがよくわかりました。今後も、より良いインターネットの未来を共に目指していきましょう。本日はありがとうございました。 

ABOUT 角田 知香

角田 知香

イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。