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生成AI、MFA、アテンション指標などがキーワードに―DoubleVerifyが最新のインサイトレポート調査結果解説セミナーを開催

デジタルメディア測定、データおよび分析における先進的なソフトウェアプラットフォーム企業のDoubleVerifyは、6月27日、最新版の調査レポート「2024 グローバルインサイトレポート(以下GIR)」の調査結果の解説を行うウェビナーを開催した。

(Sponsored by DoubleVerify Japan)

 

DoubleVerifyは、世界中の市場ごとの詳細な分析レポートをまとめたGIRを毎年発表しており、今回で8回目の発表となる。本レポートでは、100の市場における1兆インプレッション以上のデータから、メディアの品質とパフォーマンスのトレンドを検証している。

 

AI技術の功罪

DoubleVerify Japan株式会社の代表取締役及び日本法人代表を務める武田隆氏は、生成AI技術の発展に伴い、詐欺スキームがさらに巧妙化していくことが懸念されていると報告。こうした詐欺スキームの中には、ウィルスのように変容を繰り返しながら影響力を拡大させていくものが含まれると警鐘を鳴らした。

 

 

一方でAI活用の利点についても言及。同社が2023年に買収したScibids社開発の予測型AIを活用することでメディアコストを効率的に削減し、広告費1ドルあたりの収益率が4倍に増加した事例を紹介した。加えて、メディアバイヤーはデジタルメディアのキャンペーンの最適化のために全体の24%に相当する時間を費やしていると指摘した上で、予測型AIを活用することでこうした時間を大幅に削減することが可能であるとの展望を示した。

 

MFAとアテンション指標

続いて武田氏は、広告を掲載し収益を得ることのみを目的として作られた低品質なサイトを意味するMade for Advertisement(MFA)に関する動向を語った。同社の調査によると、MFAインプレッション量は前年比19%増。アドフラウドには相当せず、ビューアビリティ水準を満たすことが多いため、これまでMFAを定義し、対策を取ることが難しかった。

 

しかしながら、広告がどのような画面上でどのように閲覧または視聴再生されたかを計測する「エクスポージャー(露出)」やユーザーがスワイプやクリックなどを通じていかに反応したかを測る「エンゲージメント」といった要素を含むアテンション指標を適用すると、MFAでの数値がDoubleVerifyのベンチマークに対して非常に低い傾向にあることが分かる。さらにアテンション指標は、ブランド認知度や売上増加といった多様なKPIに対する中間指標としても機能することから、マーケターの関心も高く、今後は日本市場においてますます普及していくことが見込まれている。

 

ブランドスータビリティ(適合性)と二酸化炭素排出量

欧州各地での総選挙や米国の大統領選挙さらに日本では東京都知事選挙など、2024年は世界各地で政治的なイベントに大きな注目が集まることが予想されている。武田氏は、政治ニュースなどが活発に報じられるようになると、ブランドスータビリティ(適合性)の違反率が高まる傾向にあると指摘。こうした違反事例に対して何も対策を取らなければ、10億インプレッションあたり29万4000ドル(約4600万円)に相当する広告費が無駄となる可能性があるという。

 

またDoubleVerifyでは、サステナビリティの観点から、Scope3社の技術を用いてオンライン広告における二酸化炭素排出量を測定。DoubleVerifyが配信管理を行っているキャンペーンでは、そうでない場合と比較して排出量が21%少なかった報告した。

 

政治ニュースなど氾濫する情報の中でのブランド適合性

GIRの調査結果を踏まえ、セミナーの後半では、DoubleVerify Japan ビジネス開発部長 八木拓也氏による進行の下で、パネルディスカッションが開催された。

 

議論の最初のテーマとなったメディア品質について、三井住友カード株式会社 マーケティングユニット(東京)の中村啓夢氏は、キャッシュレス業界を牽引していく立場としてブランドのイメージを毀損せずに広告効果を最大化する取り組みに注力していると発言。広告代理店任せにせずに、複数のパートナー企業と話し合って対策を講じていると述べた。

 

株式会社Hakuyodo DY ONE プラットフォームビジネス本部 プラットフォームソリューション局 ソリューション推進部部長 秋吉哲也氏は、各種のポリシー遵守や除外設定機能及び同社独自の除外プレイスメントリストの活用に加えて、DoubleVerifyを始めとする高度なアドベリフィケーションツールの利用を広告主に対して推奨していると報告。さらには社内の勉強会を通じて、メディア品質を高めていくための知見を深めていると伝えた。

 

LINEヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 経営企画・事業開発統括本部 トラスト&セーフティ本部 本部長 一条裕仁氏は、自社メディアに加えて提携するメディアの品質の担保を重視していると説明。自社の努力だけに留まらず、24時間にわたり絶え間なく稼働する外部ツールの有効活用を訴えた。

 

次にブランド適合性について、中村氏は、政治的な局面ではとりわけX(旧Twitter)やYouTubeといったソーシャルで不適切な配信面が増えやすいとの危機感を覚えつつも、コンテンツの生成スピードに負けない取り組みが重要であるとコメント。また、政治関連の話題を排除しながら、攻めと守りの両立が重要と語った。

 

秋吉氏は、ブランド毀損を回避するためには、DoubleVerifyなどの除外プレイスメントリストの整備や、予約型のPMPの有効活用さらにはキーワード除外といった対策を行っていると報告。さらに一条氏は、「死活問題」であるブランドセーフティはプラットフォームまたは媒体側で責任をもって管理し、広告主ごとに考え方が異なるブランドスータビリティ(適合性)はDoubleVerifyなどの広告配信側で管理するのが得策との考え方を示した。

 

MFAについては、中村氏がカスタマーファーストの理念を追求するためにもユーザーから邪魔と受け取られるような配信面への広告表示は避けるべきであるとの考えを提示。秋吉氏は、MFAは入札戦略の最適化に向けての機械学習や広告効果計測にも悪影響を与えかねないとした上で、現状ではDoubleVerifyなどMFA排除に対応したツールの導入が最も有効な打ち手であると述べた。さらに一条氏は審査時には問題のなかった提携媒体がリニューアルなどを経てMFA化してしまう場合があると指摘。継続的なパトロールが必要であると伝えた。

 

日本市場ではまだそれほど馴染みがない概念である広告配信におけるサステナビリティについても、秋吉氏は最近では広告主に対するオリエンテーションの機会などで関連の取り組みに関する説明を求められることが増えたと報告。またアテンション指標については、一条氏が注目はしていたものの指標化が難しい概念であると考えていたがゆえにDoubleVerifyの先進的な取り組みを評価するとの見解を述べると、秋吉氏はブランドリフトとの相関性をリアルタイムで計測できることから大きな期待が集まっていると話した。

 

さらに生成AIについて中村氏は「Scibidsなどの自動最適化機能を有効活用することで、人間はインサイトの深堀りなどにもっと多くの時間を割けるようになる」との将来像を提示。秋吉氏は「アテンション指標がアッパーファネル施策だけではなくローワーファネルとの相関も強い」と指摘し、一条氏は「AIによる脅威にはAIで対抗」と述べた上で、AIが生成する不適切なコンテンツや広告をAI機能を活用することでブロックしたいとの考えを伝えた。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。