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Zefr×Meta対談:短尺動画にもブランドセーフティが求められる時代がやってきた[インタビュー]

これまでYouTube広告のブランドセーフティ計測機能などを提供してきた米国テクノロジー企業のZefrが、Metaプラットフォームと事業提携を締結し、日本市場においてもサービスを開始することになった。リールと呼ばれる短尺動画を含む大量のコンテンツが生成される同プラットフォーム上で配信面の品質管理を行うことなど可能なのか。両社それぞれの見解を聞いた。

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Meta社とのデータ連携が必須である理由

 

―自己紹介をお願いします。

 

ラドン氏:Zefrの共同創業者兼共同最高経営責任者を務めるリッチ・ラドンと申します。広告主や広告代理店向けに大手広告プラットフォーム上でブランドセーフティとブランド適合性を担保するためのソリューションを提供しています。

 

坂下様:Facebook Japanの執行役員 営業本部長を務める坂下洋孝です。広告代理店様を始めとするパートナー企業様に向けた営業活動とブランドセーフティやブランド適合性などに関する取り組みのタスクフォースをリードしております。

 

Metaは世界の38億人とつながるアプリ・プラットフォームであり、中でもInstagramが日本市場では急成長を遂げています。広告プロダクトに関しては、サードパーティCookieを活用せずにコンバージョン計測ができるコンバージョンAPI(CAPI)、広告クリエイティブをセットするとウェブコンバージョンの最大化に向けて最適なユーザーと配信面に対して自動配信を行うADVANTAGE+ショッピングキャンペーン(ASC)、そして縦型のショート動画であるリール広告に対する需要が高まっています。

 

なお、リール動画はInstagramを費やす時間の20%を占めており、音声付き再生率は93%です。よって広告効果が高く、利用者の53%はリール広告視聴後に表示された商品またはサービスを購入したことがあり、また他のプラットフォームと比較してブランドリフトが139%向上したとの調査結果も出ています。認知施策にも獲得施策にも有効な広告プロダクトです。

 

―Meta社とZefr社の事業提携についてお聞かせください。

 

ラドン氏:Metaプラットフォーム上の広告に隣接するコンテンツに対して、Zefrがブランドセーフティとブランド適合性を計測するツールを提供しています。一年ほど前よりまずは北米や欧州市場を中心として取り組みを始め、インストリーム広告からリール広告へと計測対象を拡大し、この度、アジア太平洋地区でもサービス提供を開始しました。

 

―ブランドセーフティとブランド適合性の定義を改めてお聞かせください。

 

ラドン氏:ブランドセーフティに関しては、世界広告主連盟(World Federation of Advertisers, WFA)の後援を受けて設立されたGlobal Alliance for Responsible Media(GARM)が12種類のカテゴリを設定し、各カテゴリで、低リスク、中リスク、高リスクそしてフロア違反といった4段階の区別を行っています。

 

そして危険度が最も高いフロア違反に該当するコンテンツ上または付近で広告が表示されるとブランドセーフティが毀損されたと見なされます。フロア違反はすべての広告主にとって排除すべきコンテンツであるため、当社ソリューションでは自動的に排除しています。

 

 

一方のブランド適合性は、残りの低リスク、中リスク、高リスクに該当するコンテンツを排除または有効活用するために必要となる指標です。あるブランド企業にとっては高リスクだが、別のブランドには最適なコンテンツである場合があり得ます。

 

―ブランドセーフティやブランド適合性を計測する仕組みはどのようになっているのでしょうか。

 

ラドン氏:広告表示と隣接するコンテンツに関して、MetaプラットフォームとZefrがデータ連携を行っています。つまり、テキスト、画像、ロゴ、音声、いいね!、コメントなど、Metaプラットフォーム上にアップロードされたありとあらゆる情報を当社が受け取っているのです。ただしオーディエンスデータは取得しません。

 

これらのデータを当社が開発した識別系AIが分析し、さらには人間の目による確認作業を行うことで、各コンテンツをGARM指定のカテゴリごとに分類します。透明性を確保するために各コンテンツに付けたインデックスの公開も行っています。

 

坂下氏:Instagramだけに限定しても、コンテンツ最適化のために500種類以上のシグナルを取得しています。これらのデータの情報処理をリアルタイムで行う仕組みを開発するのは大変だったと想像します。

 

ラドン氏:Metaプラットフォーム上には膨大な情報が溢れており、これらをすべてスクレイピングすることは不可能です。だからこそMeta社とのデータ連携が必須でした。データ連携さえ行うことができれば、当社のAI技術が威力を発揮します。

 

両社のブランドセーフティ機能はいかに異なるのか

 

―Meta社独自でもブランドセーフティに関する取り組みを行っていますね。

 

坂下氏:最新のレポートによると、Metaプラットフォーム上に表示されたいじめや嫌がらせに関するコンテンツの割合はわずか0.07%です。つまり99.3%はユーザーからのレポーティングより先に事前検知して排除しています。

 

 

また広告主様向けには、「ブランドの権利保護」という仕組みがあり、広告主様が事前に登録したキーワードやロゴが不適切な利用された場合にはアラートが出され、Metaに対して該当するコンテンツを除去するためのリクエストを出すことができます。

 

さらにインベントリーフィルターと呼ばれる機能を使用すると、フィード広告のそばに表示されるコンテンツや、コンテンツ内広告が表示されるコンテンツの健全度を管理することができます。同機能と並行して、Zefrの仕組みをサードパーティツールとして導入し、日本語にも対応しました。

 

―Meta社独自のブランドセーフティ機能に加えてZefrの仕組みを導入したのはなぜですか。

 

ラドン氏: Meta社が自社で管理する機能だけでなく、当社のようなサードパーティ事業者が独立した立場から計測することは重要だと思います。

 

坂下氏:さらにZefr社のツールであれば、ブランドセーフティに留まらず、ブランド適合性についてより深い設定を行うことができます。例えば広告主様によっては、ブランドセーフティは確保されていたとしても、ニュース記事の間に挟まれる形で広告が表示されるのは避けたいといった独自の基準を持っている場合があり得ます。

 

さらにZefrであれば、他のプラットフォームにおけるブランドセーフティ計測を行うことができるので、媒体間での比較ができます。グローバル企業が複数のプラットフォームで複数の言語を用いながら広告運用を行う際などに強みを発揮するのではないでしょうか。

 

ラドン氏:なお、Meta、YouTube、TikTokといったZefrとデータ連携するすべてのプラットフォームからのインサイトを得る仕組みを今年中にリリースする予定です。

 

獲得型広告でもブランドセーフティは必要?

 

―Metaのリール動画広告は、獲得型キャンペーンでも多用されているとのことですが、ブランドセーフティに対する需要はあるのでしょうか。

 

ラドン氏:仰るように、従来は獲得型マーケティングを行う広告主は売上やダウンロード数といった広告効果が最大の関心事であり、広告と隣接するコンテンツの品質にはそれほど注意を払ってきませんでした。

 

ところが、Meta社は先手を打ってリール動画広告においてもブランドセーフティを高めるための取り組みを開始しました。今後はブランドセーフティという概念が適用される対象が拡大していくことを見越しての動きだと捉えています。

 

生成AIの登場によって大量のコンテンツを容易に生産できるようになった現代においては、誤った情報や不適切なコンテンツの量も桁違いに増えます。ブランドセーフティの重要性も格段に高まっていくはずです。

 

坂下氏:最近では日本市場においてもブランドセーフティに対する意識が高まってきました。デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が「アドフラウドを含む無効トラフィックの除外」と「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」に関する業務プロセスの監査基準を制定しており、基準に準拠して業務を適切に行う広告業の事業者として100社以上が認証を受けるなど機運は確実に高まっています。

 

―リール動画広告の広告効果を高めるためのコツをお聞かせいただけますか。

 

坂下氏:音声付きの再生率が非常に高いことを念頭に、UGC的な広告クリエイティブを作成するのが効果的です。またブランドのロゴが、上下に表示される別のコンテンツに隠れてしまわないように、セーフティゾーンと呼ばれる位置に配置することも重要です。

 

さらにMetaのAI技術を最大限に活用するために、できる限り多くの配信面に対してできるだけ多くの広告フォーマットを表示させることを推奨しています。

 

 

―ブランドセーフティに関して今後の目標などについてお聞かせください。

 

坂下氏:グローバルプラットフォームでは日本語対応が遅れるケースもありますが、ブランドセーフティに関してMetaとZefrがそれぞれ提供するツールの日本語機能がほぼ同時にリリースできたことをうれしく思います。日本の広告主様に対してより多くの選択肢をご用意することができました。日本市場におけるブランドセーフティ及びブランド適合性に関する取り組みを一層強化していきたいと思います。

 

ラドン氏:MetaのようなSNSプラットフォームが生まれたことでより多くの人々とつながり、世界の出来事をより身近に感じることができるようになりました。広告主様は世界で起きている様々な事象とSNSの影響力を十分に把握する必要があります。

 

AIという革新的な技術は、世界をより良い環境にするために有効活用するべきです。ZefrはAI企業として、広告主様にとってより良い世界の構築を目指していきたいと考えています。

 

<お問い合わせ先>
Zefr
https://www.zefr.jp/
E-mail: zefr@legoliss.co.jp

 

※本インタビュー記事で紹介している機能の概要やデータなどは本記事執筆当時に把握した内容を記しています。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。