CPAを抑えた新規獲得にはAdvantage+ショッピングキャンペーン―AI時代にこそ求められる広告代理店の知見[インタビュー]
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on 2024年4月08日 in(左から、信山氏、竹村氏、久保氏)
機械学習を用いてパフォーマンスの改善を図るMetaのAdvantage+ショッピングキャンペーン(ASC)。登場から1年半、常にベストプラクティスを生み出し続けているのがセプテーニである。
Meta主催の「Meta Agency First Awards 2023」で「Best solution ASC部門」最高位のGoldを受賞していることからも、その実績が伺える。
セプテーニではどのように本プロダクトと向き合ってきたのか。ASCの強みや同社の運用体制について、Septeni Japan株式会社の担当者3人にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 渡辺 龍)
(Sponsored by Septeni Japan)
■Septeni Japan株式会社
ディスプレイグロース本部 第一ディスプレイコンサルティング部 課長代理 信山 祐馬氏
同 シニアコンサルタント 久保 隆世氏
統合マーケティング本部 メディア戦略推進部 エキスパート 竹村 優里氏
自動運用により、予想していなかった新規層を獲得
―まずASCとはどのようなプロダクトなのでしょうか
信山氏:「Advantage+ショッピングキャンペーン」の略で、機械学習を用いたMetaのプロダクトの1つです。配信にあたっての初期設定が少ないながらも、見込みの高いオーディエンスにリーチしやすくなっているので、売上拡大を目指しているお客様に対して効果を発揮します。
―活用メリットはどういった点になりますか
信山氏:シンプルに獲得効率が高いです。当社ではASCを導入しただけでアカウントの6~7割はCPAの改善が図れているので、ここは大きなメリットです。
また、新規ユーザーの開拓にも優れています。例えば、レディース服のプロモーションの場合、通常のキャンペーンであれば女性に絞って配信するのがオーソドックスな手法です。一方で、ASCはデモグラの指定ができません。そのためASCでは全体のユーザーからAIが最適なターゲットを選定し配信します。結果として、ASCを活用することで予想外にレディース服のプロモーションで男性の新規層が獲得できたというケースがありました。
―レディース服が男性に売れるという結果は人間には予想しづらい点ですね
信山氏:今まで想定していなかった新規の層が獲得できたのは、機械学習の力によるところが大きいですね。EC系だけでなく業種を問わず効果が出やすいので、Meta広告を運用するうえでは主要な手法になっています。
―通常キャンペーンとの違いはありますか
久保氏:ASCは手動の調整レバーが少なく、ターゲティングや配信面の指定は基本的にはできません。また、通常キャンペーンではクリエイティブを4~6本ぐらいを並走させますが、ASCでは最大150本と、多く用意することが推奨されています。こういった特徴から、クリエイティブの重要度が高くなっているとともに、より早く勝ちクリエイティブの発掘ができます。
―細かいターゲティングを求めている広告主には不向きなのでしょうか
久保氏:確かにお客様によってはターゲットを絞りたいという声もありますが、そこは入稿するクリエイティブのデザインや訴求である程度コントロールできています。
例えば人材系の広告では、アルバイトに応募したい人と、正社員に応募したい人でインサイトが違うので、この2通りでクリエイティブを分けました。また、男性の応募率が高いという実績があれば、よりその層を獲得しやすいデザイン、例えば男性の人物画像を入れることで、ターゲティングをコントロールしている事例はありますね。
信山氏:そもそもASC単体でキャンペーンを回すことはほとんどありません。ASCではオーディエンスコントロールができないため、メディアの最適化に準拠した広い層にリーチし獲得を狙う目的で配信します。一方で、ASCの最適化だけではリーチできない層を通常のキャンペーンで配信ターゲティングを人為的に設定し、特定のユーザー層を狙い撃ちするという、2本柱で走らせることが理想です。
各部署の連携でベストプラクティスを探り当てる
―2023年にはMeta Agency First AwardsでASC部門を受賞されました
竹村氏:この賞はMetaが推奨する主要なビジネス領域で優れた実績を上げたパートナー企業を表彰するためのもので、今回セプテーニはASC部門で最もランクの高いGold賞をいただきました。2023年の通期でASCの導入率、アカウント数、売上などをもとに、ASCの普及に貢献したことが受賞に繋がったと思います。
―受賞の背景には、セプテーニ流のASCへの向き合いかたがあったのでしょうか
竹村氏:それぞれの部署が自分の役割に沿って動いた結果だと思います。
私は社内でも少し特殊な役割を持っていて、まず媒体からの情報をすべて集約して、子会社も含めたセプテーニグループ全体に共有していきます。
情報が社内に散らばっていて、現場ではアップデートを知らなかった、ということがないように、当社では、しっかりと媒体ごとに情報の集約と共有を機能させることで、グループ全体の知識を一定以上に押し上げています。
―媒体とは密接にコミュニケーションを取っているのでしょうか
竹村氏:普段から近い距離でお話しさせてもらっています。セプテーニでは新しいプロダクトを積極的に導入していることを媒体側も知っているので、リリース後いちはやく当社に共有してもらうことも珍しくありません。導入が早いぶん検証も早く進められるので、媒体の悩みに対して、その要因をフィードバックしながら二人三脚でプロダクトの形を固めていくこともあります。
信山氏:「これを検証してみたらどうですか」「これを試してみたけど駄目だった」という会話を重ねながらお互いに知見を広げていくことで媒体と関係を築いていくことは重要であると考えています。そこも意識しながら、新しいプロダクトにはまずは触れるようにしています。
その結果、Meta主催のData AI Summitというイベントにも招待していただき、実際に私も登壇もさせていただきました。
―実際にASCではどのようにPDCAを回していったのでしょうか
信山氏:社内にはTSPJ(Transformational Strategy Project)という組織があり、ここで新しいプロダクトについての先進事例の創出などを進めています。ASCもローンチからこのプロジェクトが動き始め、年明けにはベストプラクティスが生まれていました。
―ベストプラクティスの発見といっても、一筋縄ではいかなかったのではないでしょうか
信山氏:まずは媒体が推奨するお手本通りの150本のクリエイティブを用意することから始めました。その結果をもとに、動画と静止画でのCTRの違いなど、日々の運用の中で見つけたファインディングスを更に発展させていきました。
ただお手本通りに進めるだけではなく、一定の疑いは必ずかけるようにしています。もっと良い手法があるのではないか、では次はこっちをやってみようということの繰り返しですね。
久保氏:TSPJで全量データの蓄積ができていたので、どういったクリエイティブを止めるべきなのか、クリエイティブを何本用意すべきなのかといったロジック作りも早かったです。また、Metaにはフォーマットによってリーチするユーザーが異なるという特徴があるので、フォーマットごとにキャンペーンを分けるなど、早くから応用的な使い方も見つけられたのはTSPJがあったからこそでした。
―クリエイティブの制作やオペレーションには、どのような体制で臨んでいるのでしょうか
久保氏:社内にクリエイティブ制作専門の組織があるだけでなく、制作に特化しているグループ会社もあるので、連携して良質なクリエイティブを量産することができます。Odd-AIという当社のAIツールを活用してクリエイティブの分析もしているので、質を担保しながらブラッシュアップのPDCAを効率的に回すことができています。
竹村氏:そのPDCAを支えるために、裏側のオペレーションのサポートもしていました。というのも、ASCは2023年の秋頃までバルク入稿ができなかったので、全て手動での作業でした。そこでグループ会社のFLINTERS(https://www.flinters.co.jp/)と独自のツールを開発して、広告入稿の工数を減らしました。
広告入稿チームからは、ツールによって入稿の煩雑さが体感として6割ほど減ったと聞いています。プロダクトのパフォーマンスを発揮するためには十分な広告量は必須で、それを支えるための基盤作りに貢献できたかと思います。
AI時代に問われる代理店の存在意義
―セプテーニでは今後どのような展開を見据えていますか
信山氏:これまではダイレクトプロモーションのお手伝いが中心でしたが、最近ではアッパーファネルのお客様にも領域を広げています。電通との協業も含めて、お客様の体感価値をさらに上げていきたいです。
また、広告運用においてAIの活用が主流になっていくことは間違いないです。代理店としてはいかに早くトレンドを掴み、ナレッジを蓄積できるかどうかが問われてくると思っています。
―AIが高度化していくなかで、どの辺りが広告代理店の腕の見せ所になるのでしょうか
信山氏:「言語化」と「クリエイティブ」が鍵になります。確かにAIに配信を任せ、ある程度の実績を出すことは誰にでもできます。そのあとの部分、実績をもとに「なにが起きているのか」や「次はどの層を狙うのか」といった原因と戦略を言葉で伝えられるかが大きな付加価値になります。
また、最終的にユーザーとの接点になるクリエイティブについて、どのようにユーザーに訴求して獲得に結び付けるかをいかに深掘りできるかは大事なところです。
―AI任せにしているだけでは新たな価値は提供できないということですね
信山氏:AIを活用していれば必ずいい結果がでるというわけではありません。例えば機械学習が進むことでリーチが収斂していき、ユーザーを取り切ってしまうケースも起こります。そのときには思い切って違う訴求のクリエイティブに変更したり、学習をあえてリセットしたりするなど改善を図ることが必要です。
AI時代だからこそ、まだまだ人間の存在は不可欠です。AIに乗っかるのではなく、AIを駆使することで新たな価値を創出していきたいですね。
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ABOUT 渡辺 龍
ExchangeWireJAPAN 編集担当
立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。
その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。