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インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿―ATS Tokyo 2023イベントレポート(13)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が2023年12月8日、都内にて開催された。

 

「インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿」をテーマとしたセッションには、UNICORN株式会社 取締役 井上 孝仁氏が登壇。

CPA、CPI、ROASなどの広告費用対効果の計測ができることはインターネット広告に期待されている大きな要素の1つだが、様々な要因で広告効果の計測精度が低下している状況となっている。この問題点についてスマートフォンアプリ事業者が広告を出稿するケースを事例として、その背景や今後の展望について、プレゼンテーションがなされた。

 

井上氏

UNICORNは全自動マーケティングプラットフォームを運営し、機械学習を用いたハイパフォーマンスな広告配信を実現している。井上氏は「今のデジタル広告業界は理想的な状態とは程遠いのではないかと思い、あるべき姿の実現に向けてサービスを提供している」と話し、インターネット広告計測全般に関わる問題点、評価の闇について取り上げた。

 

インターネット広告の大きな特徴としては、広告の費用対効果を計測できることが挙げられ、これが市場成長の一因にもなってきた。しかし、この費用対効果の計測について井上氏は「実際は正しく計測が出来ていない、もしくはしづらくなって来ているのではないか」と提起した。

 

この問題が起きている理由について、井上氏はラストタッチ計測に①成果判定の優先順位が広告識別子マッチングに寄っている②広告媒体毎に「タッチ」ポイントの基準がバラバラ③媒体間でラストタッチの奪い合いになっている④プライバシー配慮がないビジネス構造とそれら広告ID等の規制、など複数の課題点があると話す。

 

これらの課題に対応するため、井上氏は一部のアプリデベロッパーの間ではラストタッチ計測に代わり、「インクリメンタル(Incremental)計測」が注目されていることを紹介した。

インクリメンタル計測とは、広告施策を実施しないと発⽣しなかったであろう成果のことを指し、「(広告に接触したが)広告に非接触でも発生する予定だったコンバージョンへの投資を減らし、広告起因のコンバージョン=純増のコンバージョンをしっかりと計測・評価し、ここに最大限の投資をしていきたいと多くの人は考えるのではないか」と井上氏は呼びかけた。

UNICORNでも「インクリメンタティテスト配信機能」を提供しており、ビュースルーコンバージョンを対象として、トラフィックの一部にダミー広告を配信することにより、ダミー広告経由でどの程度のビュースルーコンバージョンが発生したかを計測・分析、評価をしている。ユーザーにダミー広告を配信しているにも関わらず多くのビュースルーコンバージョンが発生した場合は、その広告枠においてはオーガニックのコンバージョンを吸い上げている状況が想定されるので、広告配信の抑制や停止につなげることができる。

ここで井上氏は「インクリメンタル計測は専門性と根気が必要で難易度が高い」としながら、アプリ広告においてはインクリメンタル計測に特化したプラットフォーム『POLARIS』があることを紹介。日本ではまだまだ認知度が低い一方で、⽶国‧欧州の⼤⼿アプリデベロッパーを中⼼に導⼊が進んでいることを取り上げ、「UNICORNもPOLARISの導入支援をしているので、気になる方は声をかけていただきたい」と話した。

 

ExchangeWireJAPAN編集部とのトークセッションでは、編集部からインクリメンタル計測の具体的な使用イメージについて質問が投げかけられた。

 

そこで井上氏は「インクリメンタル計測はリアルタイムに計測ができる手段ではないので、従来のラストタッチ計測との併用や工夫が求められる」と踏まえ、「例えば、誤タップを誘発する広告枠や視認性が低いにも関わらずコンバージョンにカウントされている広告枠をレポートで確認し、除外していく作業も大事である。そのうえで改めて、インクリメンタル計測をして広告を再評価していくことをオススメしたい」と回答した。

 

本セッションの説明で使われたスライドやプレゼンテーションの詳細内容については、UNICORNのブログ(note)にて解説をしている。
【外部リンク・UNICORN Narrative. URL

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。