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テレビとデジタルを融合する―ATS Tokyo 2023イベントレポート(5)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が12月8日、都内にて開催された。

 

「テレビとデジタルを融合する」をテーマとしたセッションには、株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 シニアプロダクトマネージャー 綾瀬 龍一氏、株式会社ブレインスリープ デジタルマーケティンググループ 執行役員 池城 安雲氏、株式会社トライステージ 執行役員 谷本 秀吉氏が登壇。

 

インターネットとの接続が進み、コネクテッドTVなどデバイスとしての進化が進むテレビ。ますます進むテレビとデジタルとの融合が、広告の世界にどのような変化をもたらしているのか。広告主・広告代理店・媒体社それぞれの視点を交えて議論がなされた。

 

谷本氏

 

谷本氏は冒頭、2023年に実施された株式会社サイバーエージェントと株式会社デジタルインファクトと共同で実施された、「国内動画広告の市場動向調査」について言及。2023年にはコネクテッドテレビの動画広告市場規模が1,000億円を超える予測が出たことを踏まえ、「電通が発表している日本のインターネット広告費の媒体費が約2.5兆円となっているが、コネクテッドテレビはそのうちの約3~4%を占めることになる。今後は更に認識がされて成長する市場・広告商品になっていくのではないか」と期待を寄せた。

【参考】サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査を実施(URL

 

池城氏

 

本セッションは3つのお題に基づいて進行。「テレビの魅力」について綾瀬氏は媒体社(ABEMA)の立場から「テレビはその画面サイズ・臨場感を持ってマーケティングや広告が展開可能。また、長時間の視聴にも適しており、総じてブランドストーリーを伝えやすいデバイスである」とテレビの魅力について述べた。

 

また、広告主の立場からは池城氏が「インターネットの大企業であるGoogleやAmazonがテレビCMを打っているのが一つの答えではないか」と取り上げたうえで、「テレビとデジタルが融合していくなか、コミュニケーションツールとしてのテレビの持つ、リーチ力や信頼性・安心性は日本において非常に大きいのではないかと思う」と話した。

 

綾瀬氏

 

続いてのお題でもある「テレビとデジタルとの融合は、今どのような流れで起こっているのか」では、綾瀬氏から池城氏に対し「ABEMAやYouTubeなどユーザーが普段利用するメディア・媒体が分散しているなかで、自分たちのメッセージがどこでどういう風に伝わっているのかや効果検証などについてはどのように考えているのか」との質問がなされた。

 

それに対し池城氏は「媒体だけでなくユーザーも多様化しており、全てをカバーすることは難しくなって来ている」と前置きしたうえで「テレビもデジタルも要は手段。媒体を起点で考えるよりはもっとシンプルに『自分たちが伝えたいメッセージを誰に伝えたいか』を念頭に、コンテンツに最適化させるプランニングやマーケティングへ、今後更に進んでいくのではないか」と考えを述べた。

 

 

最後のお題である「テレビの今後の可能性について」では、綾瀬氏が「マーケティングチャネルとしての魅力はあるものの、現状の広告は本編を遮るものでしかないのも事実だと思う。まだまだテレビのポテンシャルは引き出していけると思うので、広告体験の再開発をABEMAとしてはチャレンジしていきたい」と展望を語った。また、池城氏は今までの話も振り返りながら「デジタルが入ってくるメリットはデータの活用に尽きるので、テレビと融合していくことでPDCAを統合的に回していきたい」と述べた。

 

最後に谷本氏は「市場の発展にはコンテンツ、データ、インタラクティブ性の3つが必要だ」と提言。「データが取れるのであれば、掛け捨てで広告費を投じ評価していくのではなく、投資型で中長期的な視点の成果で見て行くべき。だが、その時には多くの広告主が納得のできるメジャメントが必要になってくるだろう」と考えを話した。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。