プライバシー時代におけるアプリのリタゲ配信の未来とは―Remergeが解説セミナーを開催[ニュース]
アプリマーケティングにおけるリターゲティングDSPのRemergeは1月25日、都内にて、アプリマーケティングの最新動向を解説するイベントを開催した。
(Sponsored by Remerge)
「App Talk by Remerge」と題した本イベントには、Remergeのほか、モバイルアプリの計測・分析ツールを提供するAdjust、モバイルアプリのデータや分析環境ツールを提供するSensor Towerなどが登壇。またアプリマーケティングの第一線に立つマーケターを招聘してのパネルディスカッションも併せて開催された。
プライバシー時代のデータ取得状況
Remergeの日本&韓国カントリーマネージャーを務める趙英氏は、2021年より利用許諾の取得が義務付けられたIDFAについて、利用許諾率が当初の予想を大きく上回り、現時点でIDFAのある広告在庫がiOS全体の50%超も存在すると言及。また近日中にリリースが予定されているSKAdNetwork 5.0ではリエンゲージメント配信の広告効果計測が可能になる予定であることも踏まえ、Remergeの機械学習インフラなどを活用することで、プライバシー規制が強化された状況下においても引き続きマーケティングに有用なデータを取得し得るとの見通しを示した。
勝ちクリエイティブの傾向とは
続いて登壇した、Sensor Tower アカウントマネージャー 中村慶光氏は、「10分でわかる2024年モバイルアプリ/ゲームのクリエイティブトレンド」と題したプレゼンテーションを実施。同社の分析環境下において、高い広告効果が確認されている広告クリエイティブの傾向を案内した。
ゲーム広告の主流となりつつあるプレイ動画では、操作を失敗した事例をあえて見せることで、動画視聴者の勝利欲を刺激する構成が人気を集めていると紹介。また不自然なまでに揺れるキャラクターや、「○○するだけでポイントが貯まる」といったコピーなど、目を疑うような強烈な印象を与える広告が流行していると伝えた。
さらに月に数千単位に及ぶパターンの広告クリエイティブ数を用意することが決して珍しくなくなっていると説明。AIイラストメーカーやAI動画生成ツールの活用が増えていることが背景にあると考えられ、その結果として、AI機能が適用しやすい静止画の比率が高まっていると述べた。
プライバシー規制の進行はやや遅延か
RemergeのCEO兼共同創業者であるPan Katsukis氏は、大手広告プラットフォームによるプライバシー規制の最新動向を解説。SKAdNetworkの不便さに対する不満の声を受けて、これまで閉鎖的との批判を受けてきたApple社も徐々に業界関係者の意見に耳を傾け始めたように思えるとの感想を述べた。
一方のGoogle社と同社とでは、Google Privacy SandboxのAPI開発について頻繁に打ち合わせを行っていると報告した上で、2024年度中に廃止を予定しているGoogle Chrome上のサードパーティCookie廃止が完了するのは2025年初頭にずれ込むのではないかと予測。同様に、Androidの広告IDとなるGAIDの廃止が本格化するのも、Google社の予定時期よりやや遅れる可能性が高いと述べた。
さらには、IDFAがない広告在庫に適用できる広告最適化技術がかなり発展してきていると指摘。IDFAがない広告在庫は割安であるがゆえにさらに有効活用し得るとの見解を示した。
Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏は、インクリメンタリティ分析機能やLTV予測機能など2024年に注目すべき同社のAIと機械学習による『次世代』新規ソリューションに加えて、Remergeとの連携機能を紹介。ECサイト内で商品ページの閲覧やクリックが発生した際に該当する商品IDやユーザーIDをAdjust SDKで計測し、Remergeと連携することで、その商品と関連した広告を表示する機能や、Adjust管理画面で作成したユーザーセグメントをRemergeに連携することで、Remerge上での学習期間が確保できない際のデータ補完を行う手法などについて案内した。
リタゲ配信のノウハウを開示
セミナーの終盤には、アプリマーケターによるパネルディスカッションを開催。リターゲティング施策の現状やプライバシー規制対応のあり方などについての議論を行った。本セッションには、女性向け恋愛ゲーム「イケメンシリーズ」の開発・運営を行うサイバード マーケティング統括部 統括部長の松野智彦氏、大手アパレルブランドのナノ・ユニバースを運営するTSI プラットフォーム本部 ストラテジー&アナリティクス部 データマネジメント課 佐藤悠歩氏、婦人科特化型オンライン診察プラットフォームを運営するネクイノ 事業推進本部 スマルナチーム マーケティングユニット ユニット長 坂口兆志が登壇した。
松野氏は、新規獲得とリターゲティングではそれぞれかなり異なる広告クリエイティブを制作していると紹介。新規獲得は目を引きやすく、リターゲティングではゲームの知識があることを前提としたキャラクター特有のセリフを前面に押し出す広告クリエイティブを展開していると述べた。
坂口氏は、リターゲティング配信向けのセグメントを細かく設定しても、作業工数に見合うだけの広告効果が出るとは限らないとの経験則を共有。ある程度まで整理されたデータを用意すれば、広告プラットフォーム上での機械学習を通じて最適化を図った方が効率的であるとの見方を示した。
佐藤氏は、LTVや客単価が高いアプリユーザーをできる限り多く確保するために、オンライン施策だけに留まらず、接客時にアプリのダウンロード推奨を行った店舗人員を評価する制度を整備していると伝えた。
また広告配信事業者の選定においては、三社一様に、広告成果とともに担当者のコミュニケーション能力を重視すると発言。泥臭い対応や、特定の業界事情への理解、積極的な提案などを高く評価しているとの意見が見られた。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。