1st Party Dataを活用し、広告運用を最適化-OMO戦略を推進するパルのKARTE Signals活用とは
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on 2024年1月24日 inクッキーレスが進行していくにつれ、広告配信におけるファーストパーティデータの活用手法についての注目が集まっているが、デジタルマーケティングの現場では今、どのような準備が進められているのか。ファースト・パーティ・カスタマー・データ活用により広告配信最適化を実現する「KARTE Signals」を提供する株式会社プレイドと、多数のアパレルブランドを全国展開している株式会社パルの講演内容を転載してお届けする。
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2023年10月19、20日に開催され、1万人以上が来場したアジア最大級のマーケティングカンファレンス「ad:tech tokyo」。同カンファレンス内のセッション『脱 CPA!いま取り組むべき1st Party Dataを活用した広告戦略のご紹介』にて、顧客に合わせたインターネット広告戦略の事例が語られました。
同セッションには、多数のアパレルブランドを全国展開している株式会社パルのWEB事業推進室所属でCXディレクターの名嶋恵佑氏と、同社ADディレクターの高島涼氏が登壇。そして、同社が導入した1st Party Dataを活用して広告配信の最適化を支援する「KARTE Signals」の事業責任者の鷹嘴昌弘とプロダクトマーケティングマネージャーの武石啓二朗の計4名が登壇。
セッションの前半ではKARTE Signalsの紹介と、パルにおけるOMO戦略の概要やKARTE Signalsの活用例が共有され、後半ではパネルディスカッションが行われました。
1st Party Dataを駆使し、適切な広告配信を実現
2022年4月に施行された個人情報保護法の改正により、個人情報の取り扱いが厳しくなっています。プライバシー保護を目的としたCookieの規制強化に伴い、コンバージョンの計測に欠損が生じたり、ターゲティング広告に3rd Party Cookieが使えず、PDCAを効率的に回せないなど、オンライン広告のパフォーマンスに負の影響が生じています。
鷹嘴「インターネット広告が始まって以来、担当者は主にCPA(顧客獲得単価)を重視したKPIを掲げ、広告を運用している企業が多いと思います。インターネット広告の環境変化も踏まえると、顧客を獲得した後、どのようにロイヤル化し、LTV(顧客生涯価値)が上がったのかなど、長期的な指標を定量的に評価する必要があると考えています」
KARTE Signals事業責任者 鷹嘴昌弘
こうした背景があり、注目されているのが顧客からの同意を得て企業が独自に情報を収集できる1st Party Dataです。ただし、このデータを活用するためには、ユーザープライバシー、データの準備、広告媒体の連携、一貫した体験設計など、乗り越えなければならないハードルも多々存在します。
KARTE Signalsは、こうした1st Party Dataを活用するためのハードルを乗り越え、広告効果を改善するワンストッププラットフォーム。鷹嘴は、KARTE Signalsの主な機能である「Dashboard」と「Connector」を紹介しながら、どう事業に寄与するかに言及しました。
鷹嘴「『Dashboard』は、広告効果を可視化し、適切な広告媒体の選定や予算配分に寄与します。KARTEによるユーザー統合機能に加え、広告媒体データの自動取得、さまざまな切り口での広告分析機能などを備えています。
『顧客はEC・実店舗それぞれで、商品をどれくらい購入したのか』『店舗売上に貢献している広告キャンペーンはどれか』などを可視化でき、獲得後のユーザー行動をトラッキングし続けられるため、高いLTVの顧客を獲得する際のROIの分析も可能です。
『Connector』は、1st Party Dataを収集して、広告媒体に自動連携し、データドリブンな広告運用をサポートする機能。Cookie規制により欠損したCVデータの補完、自社データを活用したターゲティングリストの自動連携、各CVの価値をベースとした入札価格の最適化などを行います。これにより、広告配信を最適化し、広告効果の改善に寄与します。」
ECと店舗のデータを統合するパル流OMO戦略と、KARTE Signalsの活用
KARTE Signalsは、1st Party Dataをオンライン広告の効果改善に活かすための仕組みです。では、パルはどのようにデータを収集しているのでしょうか。
名嶋氏と高島氏が所属するWEB事業推進室では、公式通販サイト「PAL CLOSET(パルクローゼット)」の運営のみならず、「パル流OMO戦略」というECと実店舗との連携を強めています。ECと実店舗で得られた会員データや購入データ、行動データといった顧客データをKARTEに蓄積しています。
名嶋氏「KARTEに蓄積するデータには、商品やコーディネートなどのデータも含まれます。それらのデータを他のツールと連携させ、お客様のリピートにつながる施策を行っています。
例えば、顧客が過去に購入した商品のサイズをEC内で表示する『サイズ補助機能』を実装したり、顧客がお気に入り登録した商品の価格や在庫の変動を、メールやLINEでお知らせしたり。
蓄積した顧客データは、施策につなげるだけではありません。店舗スタッフが顧客データを簡単に確認できるように、KARTEからLooker Studio(旧 Googleデータポータル)へデータを連携。全社で顧客データを共有する取り組みも進めています。」
パル流OMO戦略の全体像を示したスライド。顧客とスタッフの距離が近いというのも戦略の特徴で、SNSやスタッフコンテンツを通じてエンゲージメントを高め、ECやアプリを通じて得られたさまざまな顧客データを蓄積している
パル流OMO戦略の実行を通じて、KARTEに蓄積された1st Party Data。このデータをKARTE Signalsで活用し、広告配信を行っています。実際にどのように1st Party Dataを活かしているのか、KARTE Signals プロダクトマーケティングマネージャーの武石が語ります。
KARTE Signals プロダクトマーケティングマネージャー武石啓二朗
武石「大きく分けて『オーディエンスデータの活用』と『ダッシュボードの構築』の2つに取り組みました。
まず、前者のオーディエンスデータの活用について。従来のパル様の広告配信では、配信対象のオーディエンスリストを抽出する際にエンジニアへ都度依頼をしておりました。同一のリスト条件であっても対象範囲日数の修正が発生するため、抽出条件の微修正が都度発生。抽出の頻度をもっと高めたいが、微修正であっても変更できるタイミングは2週間に1回でした。さらに、修正のためには手動で60を超えるリストを代理店に送付する必要がありました。これでは工数がかかってしまい、頻度高くリストの更新をかけるのは難しい状況。Connectorの機能を用いることで、抽出条件を自動反映できるようになり、更新頻度も週1回へと引き上げることができました。
続いて、後者のダッシュボードの構築について。パル様の顧客は、広告に接触してからECで商品を購入したり、実店舗で購入したりするなど、コンバージョンに至るまで複数のチャネルが存在します。顧客一人ひとりのLTVを可視化するためには、ECと実店舗における顧客データの統合は必須。それらを解決するための環境を、Dashboardの機能をつかって構築していきました」
1st Party Dataを収集するための地道な社内の働きかけ
セッションの後半では、「データ整備と活用のための取り組み」と「広告データにまつわる悩みと課題そして展望」という2つのテーマについて、パネルディスカッションが行われました。まず、「データ整備と活用のための取り組み」に関して、鷹嘴から「データ収集にKARTEを活用し始めたきっかけはなんだったのでしょうか」という問いが投げかけられました。
名嶋氏「きっかけは、5年ほど前にKARTE Datahubをご紹介いただいたことです。お客様に対してよりよいサービスを提供できるようにするために、データは重要になっていくはず。データ活用の具体的なイメージがあったわけではなかったのですが、データの蓄積は一朝一夕で進むわけではないので、まず蓄積していってみようと。まず、店舗での購買データを集めるために、同時期にリリースされたアプリを活用。アプリの会員証を通じて、店舗で購入してくださったお客様の購入データが取得できるようになりました。
取得できるようになった購入データと、ECで取得していたデータを連携させて分析してみようとしてみたところ、データが足りない、使い勝手が悪いなと感じました。実際に分析してみようとしたことで、どのようなデータを集める必要があるかのイメージがついたのです。
そのときに足りないと感じたデータは、メルマガの許諾状況やお気に入り登録、閲覧履歴などのデータですね。実行したい施策から逆算して、これらのデータを取得し、蓄積できるよう環境を整えていきました」
株式会社パル WEB事業推進室 CXディレクター 名嶋恵佑氏
一口にデータと言っても、マーケティングチームが持つもの、ECチームが持つもの、店舗やアプリなどの基幹データで情報システム部門が持つものなど、さまざまです。これらの社内に点在するデータの収集を推進するにあたって苦労した部分ついて尋ねられた名嶋氏は、「アプリのダウンロードを促進することの難しさ」について振り返ります。
名嶋氏「アプリのダウンロードが必要だ、と一方的に伝えても、すぐに行動してもらえるとは限りません。各ブランドの本部にいるメンバー、ECの運用担当者、店舗スタッフ、それぞれの立場に、アプリのダウンロードの重要性を理解してもらうのには時間がかかりました。
私たちが、それぞれの立場からアプリのダウンロードに向けた取り組みを進めてもらうためにとったアプローチは地道なものです。
例えば、WEB事業推進室にいる我々と店舗スタッフが直接話す機会はあまり多くないため、月に一回ECの運用担当者と共催している勉強会の機会を活かして『アプリのダウンロード数を増やしていきましょう』と伝える。半年に一回開かれる各ブランドの本部の責任者との会議で『ここのブランドはまだアプリのダウンロード数を伸ばせる余地がありそうなので、もっと頑張れませんか?』と働きかける。こうした活動を続けて、2年ほどの時間をかけて浸透させていきました」
こうしたKARTEへのデータ蓄積を行い、それをもとに施策を展開していく中で、チームにも変化が生まれたそうです。
名嶋氏「社内にKARTEチームが発足し、KARTEに蓄積されたデータを使って施策の展開・改善をする体制が整いました。メンバーの構成は、マーケティングチームのメンバーを中心に、必要に応じてデザイナーやシステム担当者に入ってもらっています。人数は私を含め8名です。
チームとして動き始めた当初は、KARTEをうまく使いこなせるメンバーが少なく、苦労しました。KARTEの機能などツールの使い方を伝えるための勉強会を開催していたのですが、会を重ねても施策のアイデアが出るようにはなりませんでした。
メンバーの変化につながったのは、お客様を理解するための手法や知識を学ぶ勉強会でした。例えば、n1分析の方法やユーザーインタビューなどの知識です。これらの知識をインプットして、お客様を理解するための行動を重ねた結果、KARTEを使った施策のアイデアが出るようになっていきました」
顧客データに向き合い、広告の評価軸を変えていく
続いて、話題は「広告データの活用と展望」へ移りました。鷹嘴から「広告データについて、どのような課題が存在していましたか?」という問いが高島氏に投げかけられました。
高島氏「50以上のブランドを展開する『PAL CLOSET』では、ブランドごとに価格帯に幅があることもあり、インターネット広告を配信して効果検証しても、同じ指標では比較しづらく、良し悪しの判断が難しいという課題がありました。
また、広告媒体ごとに特性が異なることもあり、出てきた指標を横並びで比較することは困難です。例えば、CVにはつながりにくいものの、認知獲得で効果を発揮しやすいSNS広告は、CPA(顧客獲得単価)やROAS(広告の費用対効果)では正当な評価が難しい。
各媒体の広告配信レポートを見ても、他の媒体とのCVの重複が計測されることもあり、レポートからなにかを判断することは難しいと常々感じていました」
KARTE Signalsを導入したことで、こうした課題を解決できたと高島氏は言います。例えば、SNS広告に関しては、「認知」という側面だけでなく、店舗売上の貢献度合いを判断できるようになったそうです。
高島氏「KARTE Signalsを活用すると、お客様が広告に接触した後、店舗での売上にどれだけ貢献しているかがわかるので、広告出稿の優先順位を検討しやすくなりました。さらに、『この広告媒体は高単価のブランドと相性が良い』といった仮説を立てて運用するなど、広告の仮説検証もやりやすくなりました。広告のROIが可視化され、データドリブンで運用を回せるのはとてもありがたいですね」
株式会社パル WEB事業推進室 ADディレクター 高島涼氏
SNS広告の一番の目的は、ECへの流入を促すことだと高島氏は言います。同社はSNSが強みであり、流入獲得という面では大きな課題はなく、SNS広告の運用目標も毎月堅実に達成しているそうです。SNSが強みになっている背景には、どのような取り組みがあるのでしょうか。
高島氏「弊社では、SNSのフォロワー数やSNS経由の売上といった実績を給料やボーナスに還元するインセンティブ制度が整っています。また、社内の中でSNSを活用した良い事例を共有する体制もあります。こうした取り組みが積み重なって、SNSの強みにつながっているのだと思います」
続いて、鷹嘴より「CPAやROASといった短期的な指標と、ROIやLTVといった中長期的な指標では、顧客獲得や育成の考え方が異なると思います。どのように考えを整理された上でECのコンテンツを提供されているのでしょうか?」という質問が投げかけられました。
高島氏「短期的な新規顧客の獲得と、中長期的な顧客育成に関しては別軸で捉えていますが、ECに訪問したお客様への施策は大きく変わらないと考えています。大きく3つの方針があり、①快適で使いやすいサイトである、②鮮度の高いコンテンツが揃っている、③お客様が自分に関係あると思えるコンテンツがある。これらが揃ったECを作ろうと取り組んでいます。
EC内のブランドコンテンツは、既存顧客との関係性を深めて、中長期的に売上や価値を上げていく『ファンベース』という考え方を採用しているため、既存顧客が楽しめるものが多くなりがち。そのため、新規顧客がインターネット広告を通して訪問することになるTOPページには、自分ごと化できるコンテンツの充実も欠かせません。最近では、骨格診断や身長別のコンテンツなどを増やしました。
この状態を実現するために、お客様の行動パターンなどについて、関係者間で共通認識を持てるようにコミュニケーションを図っています。例えば、『こういった広告を打ち出して顧客をサイトへ送客するので、サイトの中でもこういう仕掛けがあると、Webの滞在時間が伸びたり、CVにつながったりしそうです』と施策の全体像を話すことで、メンバーが納得感を持って進めやすくなると考えています」
最後の質問は、「マーケターから考える顧客データの重要性について」。パルでは、「36ヶ月のLTV」を追いかけているそうですが、その設定にはどのような背景があったのでしょうか。
高島氏「どの年代のお客様であっても、3年が経過するとライフスタイルは変わると考えられます。LTVの期間をライフスタイルが変化する36ヶ月で区切ることで、顧客データも扱いやすくなると考え、この期間に設定しました」
最後に、1st Party Dataを広告に活用してきたことで見えてきた兆しについての話題となり、これまでの手応えについて名嶋氏と高島氏のお二人からコメントがあり、セッションは終了となりました。
高島氏「インターネット広告に関して、従来とは異なる、新たな評価軸ができたのは良かったですね。自分たちでKARTE Signalsのダッシュボードを見て、分析や仮説立案ができるようになったので、施策の幅も広がりました。お客様の行動を観察し続け、より良く改善していきたいと思います」
名嶋氏「1st Party Dataを活用する上で重要なのは、『知ること』。鍵となるポイントを見つけ、そこに対して施策を行うことで高い効果が生まれると実感しています。お客様を知ることこそが、広告運用を上手く行うためのコツだと感じています」
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