CTV(コネクテッドTV)広告の測定とアトリビューション:その課題と解決法
by ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS on 2023年12月25日 in ニュース
世界中で、約20億人に迫るオーディエンスを誇るCTVは、近年急速に人気が上昇しており、さまざまな市場でコンテンツの消費の仕方を根本的に変えている。例えばイギリスでは、CTV視聴者の32%がスマートフォンやゲームコンソールなどの代替デバイスでコンテンツを視聴しており、中でもAVODユーザーの70%は広告付きのコンテンツを毎週のように視聴している。変化しているはオーディエンスだけでない。公共放送さえも、ここ数ヶ月の間にコネクテッドTV領域に進出し、このメディアの人気の高まりを浮き彫りにしている。
悪化する経済環境の中でも、CTVは、広告主の間で人気を保ち続けているが、この媒体が他のチャンネルよりも遥かに高いROIを達成していることを考えれば、これも驚くことではない。また、リニアテレビよりも、ストリーミングサービスの広告の方がオーディエンスに好意的に視聴されているというレポートは、広告主の信頼をより一層強化するだろう。2024年までに、世界のCTV広告売上は約296億ドル(約240億ポンド)に達し、その後の4年間でさらに100億ドル(約81億ポンド)以上成長すると見込まれている。
ただし、CTVには欠点もある。例えば、広告主に混乱を引き起こす略語の多さは厄介な問題のひとつだ。だが、このチャネルの最も顕著な欠点の一つは、測定だ。特にアトリビューション計測は、CTVを最大限に活用しようとする広告主にとって継続的な課題となっている。CTVはリニアテレビよりもはるかに豊富なオーディエンスインサイトを提供できる一方で、データの分断化や測定指標の標準化の遅れが、データ駆動型キャンペーンの威力を発揮し、広告主の成果を最大化することを難しくしている。
CTVにおける計測とアトリビューションの課題や、それらの解決策をより深く理解するために、業界の専門家たちに意見を聞いた。内容は以下の通り:
広告主はブランドセーフティのソリューションに投資すべき
CTVの計測とアトリビューションの主な課題は、ブランドの安全性が見通せないこと、計測システムが標準化されていないこと、データが断片化されていることなどです。これらの課題は、広告主がキャンペーンのパフォーマンスを比較検討したり、CTVユーザーの視聴行動を追跡したり、広告が安全で適切な環境に表示されていることを確認したりすることを、極めて困難にしています。
最初の課題に対する解決策としては、ブランドセーフティソリューションに投資することが挙げられます。CTVは期待の大きい領域ですが、必ずしもブランディングには適していません。リスクのあるコンテンツによってブランド毀損が生じる恐れがあるからです。ブランドアイデンティティを守ることはとても重要です。ブランドセーフティソリューションは、規模を限定することなく、CTVのキャンペーンをリアルタイムデータで保護します。2つ目の課題に対する解決策は、プラットフォームとテックベンダーが協力し、標準化された測定ソリューションを開発することです。これによって、広告主はキャンペーン毎のパフォーマンスを比較し、結果に応じて対処することができるようになります。最後の課題の解決策は、ファーストパーティデータを使用して、ユーザーの視聴行動を追跡し、それに基づいて特定の広告を配信させることです。これらのデータは、ウェブサイト訪問、アプリの使用状況、ロヤリティプログラムなど、様々なソースから収集できます。
メーガン・ライシェルト氏、IAS SEAのカントリーマネージャー
CTVは、リニアテレビの補完として捉えるべき
ウォールドガーデン間の計測では、引き続き効果の増分測定が課題になります。これを解決するには、CTVのビッグスクリーンを、コスト効率の良いリニアテレビの補完チャンネルと捉えれば良いのです。スマートTVの自動コンテンツ認識(ACR)のデータを利用してユーザーの視聴しているコンテンツを特定し、リニアテレビでリーチできていないオーディエンスを把握します。それを元にリーチ拡大のためのプランニングを行い、サードパーティのパートナーを活用してリーチの増分を検証すれば良いのです。
また、アトリビューションは測定の一種であるため、同様に断片化の課題に直面しています。とは言え、これまでにテストした方法の中に、メディアプランにおけるCTVのポジションを強化する有望な結果が見えてきました。例えば、QRコードやコール・トゥ・アクションを通じたダイレクトレスポンス、CTV広告露出をサイト訪問にリンクさせるキャプチャピクセル、そしてブランドリフトの研究などです。これらには、私たちMiQのA/Bテストを利用しています。本当のチャレンジは、これら全てを結びつけることであり、それには業界全体で協力し合って解決することが必要です。
マイケル・ランパード氏、MiQ アドバンストTVのプロダクトマネージャー
孤立したプラットフォームが正確なデータ分析を妨げる
CTVの測定は、データの不透明性から生じる課題に直面しています。プラットフォームデータの分断と、コンテクスト適合性などの主要指標への制限された可視性は、CTVの効果を正確に評価するのを妨げています。コンテンツのジャンルなどの情報不足がさらに問題を複雑化し、他のメディアと比較してパフォーマンスを正確に評価し、オムニチャネル戦略にCTVを統合することを難しくしています。
フルファネルでの成果を反映した、オムニチャネルのメディア品質指標がこれらの課題の一部を解決できる可能性があります。これにより、広告スペースの品質に対する理解力が向上し、有意義なクロスチャンネル間の比較と、総合的な投資判断が可能になります。
マーク・ガルディマン氏、Adelaide Metrics(アデレード・メトリクス) 創設者兼CEO
教育と理解が肝要
CTV測定の中核的な課題のひとつは、このプラットフォームに対する教育と理解です。CTVはテレビ広告の一種ですが、デジタルで配信されるため、広告主はCTVに対してデジタル広告と同じように測定できると考えがちです。しかし実際はそうではありません。ブランドリフトやアトリビューション、リーチ増分の計測が、以前よりかなり自由に行えるようになり、CTVの測定ソリューションも、この2年間でかなり進化してきました。しかし、まだまだゴールではありません。
さらに発展するためには、広告主がCTVの本当の可能性や、最も意味あるKPIを理解できるようになるための教育が不可欠です。CTRなどの時代遅れのKPIが通用しないだけではありません。ユニークリーチも、常にテレビスクリーンを意識して測定されるべきなのです。テレビは、モバイルなどの個人デバイスとは異なり、複数の視聴者で共有されるデバイスだからです。KPIを標準化し、CTVのテクノロジーに投資をすれば、今直面している測定のハードルを乗り越えられるだけでなく、CTVのフルポテンシャルを解放することができるのです。
サラ・ルイス氏、ShowHeroes(ショウヒーローズ) グローバルディレクターCTV
オーバー・アトリビューションを回避すべき
CTVは、テレビとデジタルの測定能力を融合させた、誰もが望む新しいホットスポットです。ただしCTVの進化は、複数のデバイスが使われ、サードパーティクッキーの終焉が迫る、この断片化した世界で起きています。
CTVは素晴らしいチャンスではありますが、多くの課題も抱えています。マルチチャネル戦略では、他のチャンネルやメディアソースによる成果をCTVに割り当てないようにして、CTVに過度なアトリビューション(貢献度)を付与しないようにする必要があります。CTVの価値を計測する上では透明性が必須ですが、現時点では、まだ十分ではありません。また、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)も、まだ十分に正確とは言えません。MMP(モバイル計測パートナー)がマルチデバイス対応のソリューションに取り組んでおり、TTDなどのDSPがCTV計測スイートを発表しているものの、これらの取り組みもまだ初期段階です。いくつかの企業は、このエコシステムの複雑さを解決できるアトリビューションソリューションを発表していますが、それで果たして解決できるでしょうか?私たちには、その結果を待つしかありません。
アグスティン・ヒメネス氏、TappxのSSPディレクター
IPベースに依存しすぎると視聴率を見誤る危険性がある
CTV広告の進化は、デジタル広告全般がサードパーティクッキーその他の、普遍的で安定した識別子から決別する中、計測とアトリビューションの課題に直面しています。IPベースの手法に過度に依存していると、特に複数の家族がいる家庭では、視聴率を誤計測しがちです。また、CCPAやGDPRなどの法規制も、IPの利用に関する懸念を示しており、グーグルのIPプロテクション(IP Protection)ツールなども、これらの懸念を反映したものです。
さらに、市場にはさまざまな測定手法が存在するため、DSPやSSPはインサイトを得るために、しばしばサードパーティツールに頼ります。しかし、最もハードルが高いのは、包括的なクロスメディア計測を実現することです。視聴者がデバイスを横断しながら視聴手段を多様化させる中、ブランドメッセージに一貫性を持たせることはますます困難になってきています。ダイナミックなCTV環境に自らの戦略を適応させることがとても重要なのです。
マテウシュ・イェドロハ氏、AdlookのVPブランディングソリューション
バイイングの一元化が鍵
「CTVはデジタル媒体だから、隅から隅まですべて完璧に計測が可能だろう」という誤謬に陥らないことが大切です。CTVのプロダクトは、その性質上、リアルタイムのパフォーマンスやアトリビューションの計測には限界があります。
これの解決には、バイイングアプローチを同一手法で一元化することです。そして、カスタムアルゴリズムがブランドにこの手段を提供します。CTVバイイングプラットフォームの既存アルゴリズムを利用するだけでなく、地上波テレビのデータなど、実世界のデータも組み込むのです。このカスタムアルゴリズムを用いてプランニングすることで、キャンペーンの全体が強化されます。カスタムアルゴリズムにこうしたデータを組み合わせることで、キャンペーンのインテリジェンスが向上し、対象オーディエンスに一貫性のあるアプローチを提供できるようになります。この技術を、ABテストやモニタリング調査などと組み合わせることで、ブランドは、CTV広告の本当の価値を理解し、どうすれば効果を最大化できるかを知ることができるのです。
デビッド・ニューマン氏、59Aの最高責任者
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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。
株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。