The Trade DeskがIDソリューションの事例解説セミナーを開催[ニュース]
グローバルアドテクノロジー企業であるThe Trade Deskは、10月11日、都内にて、媒体社及びデータプロバイダ事業者を対象にIDソリューションの導入事例を解説するセミナーを開催した。
(Sponsored by The Trade Desk)
「ポストクッキー時代に対応するIDソリューションがもたらす未来とは?」と題した本セミナーには、100名以上の媒体社及びデータプロバイダ関係者が登録。The Trade Desk社が「手作り」と表現した本セミナーは、司会進行からマイクの受け渡しまで、同社関係者がすべて担う形式で実施された。
Cookieは「準最適な手段」
2部構成となった本セミナーでは、The Trade Desk Japanのデータパートナーシップディレクターを務める城間恒斗氏が、冒頭のプレゼンテーションを担当した。同氏は、「現在のリターゲティング広告においてほぼ100%利用されている」というサードパーティCookieを、あくまでも「準最適な手段」であると主張。オンライン広告業界は、目下、以下のような課題に直面していると述べた。
・2024年1月からGoogle ChromeにおけるサードパーティCookieのサポートの段階的廃止が予定されていること
・Cookieのマーケティング利用についてユーザーの理解を得るためのコミュニケーションが十分になされていないこと
・近年注目されているコネクテッドテレビ広告ではサードパーティCookieによるターゲティングがサポートされていないこと
城間氏は、Cookie規制が進行すれば、従来のオンライン広告配信で活用されてきたリターゲティング、アクセス解析、アトリビューション分析、MA/CDP/DMPの利用がすべて難しくなると説明。将来的にはファーストパーティCookieの利用も制限される可能性を踏まえ、IDソリューションという新規の枠組みを構築する必要性を訴えた。その具体的な取り組みとして、The Trade DeskではUnified ID 2.0というIDソリューションの開発及び普及に取り組んでいる。
「Cookieが使えなくなると、未来のマーケティングは絶望的という印象を持ってしまうかもしれませんが、当社としては業界における転機だと考えています。ユーザーのプライバシー保護に特化し、広告主にとってより精度の高いIDソリューションの開発に取り組み、業界一丸となってインターネット広告の仕組みをアップグレードしようとしているのです」(城間氏)
業界横断的なソリューション
現在は、Unified ID 2.0のみに留まらず、ID情報を用いた様々なソリューションの開発が進められている。そこでThe Trade Deskは、Unified ID 2.0を様々な用途に耐え得るソリューションとすべく、以下を始めとする異なる領域における事業者との連携を図りながら、IDの統合を進めている最中にある。
・個人情報を基にしたIDグラフ
・類推IDグラフ
・クリーンルーム
・ハッシュ化されたEメールID
・DMP/CDP
「Unified ID 2.0については、IAB Tech Lab、Network Advertising Initiative、Prebid.orgといった主要な関連業界団体からも助言をいただきながらフレームワークの開発を進めてきました。またこれまではThe Trade Deskが開発や運用における中心的な役割を果たしてきましたが、最終的には第三者機関にこれらの作業を委託し、その中立性を担保できるような仕組み作りを目指しています」(城間氏)
城間氏によると、同社ではDMPの開発を通じて、約250社のデータプロバイダとデータを統合している。こうした取り組みによって、Cookieレスな環境下においても、クロスデバイスでの精緻なリーチとコントロールを実現。またサードパーティCookieと比較してファーストパーティデータの量が限定的であることを鑑みて、Look-a-like機能を装備することで元データの何倍ものターゲティング拡張を可能にするなどの環境整備を行っている。
導入しないという選択肢はない
後半部は、The Trade Desk Japan インベントリデベロップメントディレクターの白井好典氏による司会進行の下で、媒体社関係者を交えたパネルディスカッションが開催された。
報知新聞社 デジタル戦略本部開発営業部 課長の神山哲氏は、ニュースサイトの会員化を実装した上で、Unified ID 2.0を始めとする各IDソリューションとの連携を推進中。サイバーエージェント AmebaLIFE事業本部 アドテクマネタイズ局の岸下和樹氏も同様に、月間50億PVを誇る同社のアメーバブログに各種のIDソリューションを実装している。
両社ともに、サードパーティCookie廃止後は「何もしなければ広告収益は半減する」と想定した上で、「各種のIDソリューションを導入しないという選択肢はない」と主張。また2024年1月に控えたサードパーティCookieの段階的廃止開始から「逆算」する形でIDソリューションの実装に早期から取り組んでいると述べた神山氏に対して、岸下氏も同様の見解を示した。
「2023年以内に各種IDソリューションの導入を完了し、2024年を迎えたいと考えています。また2024年度にかけて、アプリ対応も進めていく予定です」(岸下氏)
その結果、スポーツ報知では、BidCPMがUnified ID 2.0なしの場合をありの場合と比較して最大41%向上。またアメーバブログでは、UID2導入による買付インプレッションが67%増、支払い金額が47%増という好結果を生みだしている。
もがいてもがいて広告収益を確保
この日は、IDソリューションを導入する上での課題についても議論が行われた。まずは「社内調整」。神山氏は、報知新聞社では早期段階で法務部門とIDソリューションの必要性と技術面や細かい点を含めてコミュニケーションを図り、各部門とも理解を高めていたので、導入は円滑に進み、社内の他部門からの反応や反発についてはなかったと振り返る。
一方のアメーバブログにおいては、社内の組織変革のタイミングと重なったこともあり、社内エンジニアの調整が大変だった。岸下氏は、そうした環境下において、サーバー周りのエラー発生時などに、The Trade Desk社の迅速な対応に助けられたと述べた。
またIDソリューションを最大限に活用する上ではサイトへのログイン率の向上が鍵となるが、両社ともに会員限定コンテンツの強化や特別イベントの実施などの施策を展開することで課題解決を目指している。
「当社では、新しいソリューションにはまず飛びついて、試行錯誤を繰り返すべきという方針を掲げていますので、とにかくもがいてもがいて収益を確保したいと思います。コンテンツについても編集局と相談をしながら、IDソリューションを活用しやすいダイレクト流入を増やすような施策を進めていく予定です」(神山氏)
パネルディスカッションの終盤では、会場参加者との質疑応答を実施。その後はネットワーキングパーティーへと移行し、神山氏と岸下氏を輪の中心としながら、媒体社そしてデータプロバイダ同士による課題共有が図られた。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。