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定番棚で購買の意思決定を後押し―ストアギークによる新たなインストアサイネージの形

 

2023年10月17日、株式会社ストアギーク(株式会社フェズと株式会社フリークアウト・ホールディングスの合弁会社)は新たなリテールメディアサービスに関するラウンドテーブルを実施。新たなインストアサイネージである「ストアギークサイネージ」が発表された。

 

 

視認性・コンテンツ・効果検証に問題が残る既存サイネージ

同社 取締役 安藤 尚人氏は既存インストアサイネージの課題について言及。主な要素として視認性、コンテンツ、効果検証の3点を挙げた。まず、店内ではサイネージの視認性が十分に担保できていないという。店舗は消費者が商品を買いに来る場所であり、メディアを見るという意識はない。既存のデジタル広告のように、「YouTubeを見る」という行為の中に広告が差し込まれる形態とも異なるため、ただのノイズになってしまう可能性もある。

また、既存のコンテンツもインストアサイネージ向けではない。基本的にはテレビCMやデジタルコンテンツ素材の流用がメインとなっており、インストアサイネージに特化したクリエイティブは作られていない。

効果検証も他のデジタル広告に比べ不十分である。データを起点としてPDCAを回すことが当たり前となっている昨今、現在のインストアサイネージはメディアサービスとして使いづらいという声もマーケターから聞かれるという。

同氏は、「視認性、コンテンツ、効果検証の面でメーカーが求める価値が作れていないことがインストアサイネージの課題である。さらに、このような状況下で様々な形式のサイネージが各小売様で乱立している。店舗横断的に、メーカー様がマーケティングに活用できるようなサイネージがまだ存在していない」と見解を述べた。

 

 

定番棚・エンド棚・入口における課題

インストアサイネージの課題は視認性・コンテンツ・効果検証に留まらない。同氏によると、店舗の売上の中心を占めるのは定番棚だが、この定番棚という位置にも課題があるという。

小売店はあくまでも商品を目立たせることが前提であり、メディアを置くことで商品の陳列スペースが奪われてしまうことは本末転倒である。そこで定番棚には小さいポップのようなメディアが設置される。また、サイズの大きいメディアが設置される場合も、棚の上部というケースが多い。その結果、ほとんど消費者の目に入らないといった構造になっている。そこで定番棚での課題を回避するため、設置場所の主流となっているのが入口とエンド棚である。確かにここでは視認性が確保できているものの、入口の場合は購入の接点から遠いためリーチのみに終始している。エンド棚に関しては効果も期待できるが、バイヤーの企画やシーズンによって実施できるメーカーや業種業態が限られてしまい、メーカー基点での柔軟な展開が限定的であるという。

 

 

ストアギークサイネージで新たな体験価値を

視認性・コンテンツ・効果検証の課題に加え、定番棚の課題を解消するために作られたものがストアギークサイネージである。

特徴的な縦型デバイスで、定番棚の商品を阻害しない形で消費者が視認できる構造となっている。

コンテンツもストアギークが自前で作成しており、複数パターンが想定されている。サイネージ全体で商品のキービジュアルを見せていくようなものや、「お勧めの商品」として推奨品を売っていくようなもの、商品自体の啓蒙を目的とした教育型コンテンツなど、メーカー・小売のニーズに合わせて柔軟な出し分けが可能となっている。

効果検証は親会社である株式会社フェズのID-POS連携のデータを用いて、サイネージ設置店舗と非設置店舗の同一期間での比較検証ができる構造を作っている。実証実験も1年近く行い、訴求商品自体の購入に留まらず、対象カテゴリー全体の購買率が引き上がるという結果も出ているという。

 

資料提供:株式会社ストアギーク

 

 

同氏は、「一部の訴求商品が伸びていくだけでなく、ストアギークサイネージを起点に、棚全体やカテゴリー全体の売り上げがいかに伸びるかがミッションの核である」とした上で、「今後は、流通を横断してマスマーケティング的にリテールメディアを活用することが広告活動で必須になる。統一規格で複数の流通を横断する構造をストアギークサイネージで作っていきたい。まずはオーラルケアカテゴリーに特化して定番棚へ拡大していき、最終的には全国数万台規模、複数カテゴリーで展開していく。最終的には各小売様のメディアサービスにおけるインフラとなることを目指している」と今後の展望を述べた。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当

立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。
その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。