MCA、"Marketer's Home"をテーマに会員総会を開催-マーケターの価値を再発見する[イベントレポート]
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on 2023年10月04日 in一般社団法人マーケターキャリア協会 (MCA)は9月14日、早稲田大学 日本橋キャンパス WASEDA NEOにて「MCA2023会員総会」を開催した。
MCAは「マーケターの価値を明らかにする」をミッションとして、2019 年に設立。2023年9月現在はマーケターを中心としながらも、ブランドマネージャー・リサーチャー・経営層など非常に幅広い層で構成されており、約1,300人の会員が所属している。
キャリア構築や交流、採用支援など多岐に渡り活動
会員総会は事務局の中村全信氏の司会にて進行。
はじめに、開会の挨拶に立った田中準也代表理事は、設立からの4年間を振り返りながら「MCAの運営は理事やメンター、会員の皆様を含めた全員の総力をもって成り立っており、本日を迎えることが出来た」と感謝の言葉を伝えた。
2023年度の活動報告では、各担当理事からMCAの展開する様々な事業活動や今後の取り組み予定について紹介がなされた。
MCA 道場は、プロフェッショナルとしてのマーケターのキャリア構築を支援することを目的としたキャリア育成プログラム。田中代表理事と講師による対談や、受講生自身が参加するワークショップ等を通じて、マーケターとしてのスキルを磨くことができる。
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田中代表理事は10月2日に開催予定の第9回目・MCA道場には、パナソニックコネクト株式会社デザイン&マーケティング本部の関口昭如氏を迎えることを紹介し「今注目のBtoBマーケティングのお話と一緒に、BtoBマーケターのキャリアを振り返りながらお話をいただければと考えている」と参加を呼び掛けた。
続いて、中村大亮理事と北原規稚子理事より、MCA メンターシッププログラムの今後の活動内容を中心として報告がなされた。
MCAメンターシッププログラムは、MCA所属の著名マーケターをメンターに迎え、1対1で1時間×6日、6か月間を通じて、対話を続けていくプログラムとなっており、中村理事は本メンターシッププログラムの提供価値について、「自分理解が客観的に出来る」「モヤモヤが解消する」「キャリアの方向性が定まる」の3点を取り上げた。
一方で、運営側の課題として、メンターシッププログラムの内容理解が正しく伝え切れていない点について提起し、今期から新たに「サシキャリ」と名称を改めるとともに、ロゴも刷新することを発表した。
「サシであなたに寄り添う、というのをテーマとしているが引き続き、マーケター目線で併走し、メンティーの方々のモヤモヤを解消したり、キャリアを一緒に考えたりしたいと考えている。お試しプログラムの「ちょいサシ」の展開も予定しているが、非常に満足度の高い内容となることは間違いないので、まずは興味を持っていただければ嬉しく思う(北原理事)」
MCA Meet Upについては、長田新子理事が説明。
MCA Meet Upはテーマごとに第一線で活躍している著名なマーケターをゲストに招き、パネルディスカッションとネットワーキングを行う交流イベント。現在は16プログラムまで開催し、パラレルキャリア(本業を持ちながら別の活動をすること)やニューノーマル時代での生き残り方など、様々なテーマを取り扱ってきた。
長田理事はMCA MeetUpを「MCAの入り口となる場」と称し、今後の予定としてオンライン開催の早朝プログラムである朝活と、オフライン開催のネットワーキングを引き続き開催していきたい旨を伝えた。そのなか、ネットワーキングについては「社内ではなかなか解消できない悩みを話す場としても活用いただきたい」と参加を呼び掛けた。
続いて、小野進一理事がMCAサポーターズについて説明。
MCAサポーターズはマーケターのキャリア構築を支援するための企業との共同プログラム。直近の活動としては、株式会社ピクルスに協力し、マーケター診断クラウド「ヨミトル」の診断結果に対して、MCA所属のマーケターがキャリア構築のためのアドバイスを追加するなどの支援を実施した(URL)。
そのほかには、MCA所属のマーケターを会社に派遣して社員研修を実施するプログラムなども進行中であり、小野理事は「MCAに協力をしていただきたいという会社がいれば是非お声がけください」と呼びかけた。
最後に、富永朋信理事がいきなりマーケター就活と早稲田マーケティングカレッジについて説明をした。
いきなりマーケター就活ではマーケティング志向の高い学生とそのような採用を考えている企業とのマッチングを目的に開催し、過去3年間で180を超える大学から参加があり、29人の学生に内定が出ている。また、今年度も株式会社イトーヨーカ堂・ディップ株式会社などの大手企業の協賛のもと開催予定となっている。
早稲田マーケティングカレッジ(URL)は早稲田大学が主催の社会人向けプログラムであり、MCAでは共催という形で本プログラムに協力をしている。プログラムは半年をかけて実施され、富永理事は「このようなプログラムはアカデミア寄り(理論的)になったり、または事業会社寄り(実践的)になったりなど、一面的なコンテンツとなりがちだが、本プログラムは両方ともバランスを良く学ぶことが可能だ」と特徴を述べた。
マーケターが抱える“1人プランニングの危うさ”とは?
記念講演では「Marketer's Home とは?」と題し、富永理事が総会に込めたテーマへの想いを語った。
富永理事は講演の冒頭、「マーケティングとは人間理解である。その背後には数学・経済・心理学など様々な分野の学びを深めることが大切である」と話した。一方で、表面的にしかマーケティング(スキル)を学ばないと、危険な“全能感”が生まれてくるケースもあるという。
この前提のうえで、富永理事は①時間による選考の逆転②利用可能性ヒューリスティック、2つのバイアスについても取り上げた。
①時間による選考の逆転とは、行動経済学のひとつで、例えば「A=1万をすぐもらえる」「B=2万円が1年後にもらえる」の2つの選択肢が示された場合、合理的に考えればBのほうが大きな利益を得られるにも関わらず、実際にはAを選ぶ人が大半である。これは時間による選考の逆転という強いバイアスを人間が持っているために、利得や損失が遠い未来にある場合はその価値を大きく割り引いて考えてしまうからである。
②利用可能性ヒューリスティックとは、人は自分の記憶から簡単に呼び出すことができる情報や経験に近いものを優先して選択してしまう心理的な傾向である。その結果、人は真の意味で物事をニュートラルやフェアに決めることが難しいとされている。
富永理事はマーケティングの全能感=賢くなったと思い過ぎてしまうマーケターに、この2つのバイアスが加わることで、1人でプランニングを進めてしまうことの危うさが生まれてしまうと警笛を鳴らし、「この問題を解決するためには、デッサン(深い観察)とアブダクション(仮説の生成)がまずは必要である」と解決法を伝えた。
そして、より本質的な解決方法の提案の一つとして、富永理事は同じマーケター同士で対話を続けていくことを提案した。
「マーケターの皆さんは日々孤独のなかで仕事をしていると思うが、他人の視点を借りることで、1人プランニングの危うさを解決できるだけではなく、自分自身の強みを伸ばすことも出来る。MCAというMarketer's Homeには、1,000人以上の仲間が集っている。同じマーケター仲間である彼らと発話・傾聴をし、励まし合いをしていただきたい(富永理事)」
マーケター仲間との交流が自身のレベルアップにつながる
パネルディスカッションでは、田中代表理事のモデレーターのもと、記念講演に登壇した富永理事をはじめ、MCAでメンターを務める、長田氏、北原氏、久保田夏彦氏らのマーケター陣が登壇し、「仲間と共創をした話(頼った話・頼られた話)」「今日からやりたいと思っていること」「若いマーケターへのメッセージ」などのマーケティングをテーマにしたお題に基づきながら、それぞれの経験談を語った。
また、会場参加者からの質問では「他人に自分のことを話しに行くのは難しいと思うが、皆さんが心がけていることはあるか」という質問が挙がり、マーケター陣からは「待っているよりも自分から行き、うまく行かなければ忘れて次にまた行く(長田氏)」「飲み屋でも良いのでマーケター仲間がいる環境にまずは行ってみる(北原氏)」「特に若いうちは色々な会社・業界の人と話す経験が大事。不特定多数の人と話をしたいならMCA Meet Upを使っていただければと思う(久保田氏)」とそれぞれの考えを伝えた。
最後に、富永理事がパネルディスカッションを振り返りながら「30年前の私へのメッセージ」という前置きのもと、次のようにメッセージを伝え、パネルディスカッションは終了となった。
「(30年前の私が今日の話を聞いていたら)『要は他人のアイデアを盗んで自分のアイデアにしろということか。オリジナリティは磨かないのか』と反発していたかもしれない。しかし、どんなにユニークに見えるアイデアもその人自身の過去の経験や他者からのインプットにインスパイアされており、完全にオリジナルなアイデアなど、そうは存在しない。また、アイデアが盗まれることもないでもないが、そのようなリスクよりもフィードバックをもらい、レベルアップが出来るメリットのほうが遥かに大きいので、積極的に交流をした方が良い(富永理事)」
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。