×

2024年に来るアドテク新時代に我々はどう対応すべきか―広告業界の新しいムーブメントへの準備はできていますか?

2023年、とりわけ直近6ヶ月におけるChatGPTを中心とした生成AIの進化と市場での変化は驚異的なものであったことはご承知の通りと思います。そして当然そのインパクトは広告業界でも大きかったことは言うまでもありません。広告業界内でもAIの重要性が高まるのと同時に、新たなゲームチェンジャーが広告業界、そして私たちのビジネスを大きく変えていく局面に来ていると感じます。

(Sponsored by Ogury)

 

Googleはおそらく年内にいよいよサードパーティー・クッキーの廃止を開始します。多くの方にとって既知の通り、サードパーティー・クッキーとは広告主によるユーザートラッキングの主要なテックエンジンとして機能してきたユーザー個々人のIDに依存するコードのことであり、過去10年間、デジタル広告はこのID依存の広告手法を主としてユーザーのプライバシーを犠牲にしてきました。しかし、個人情報保護の世界的な大きな時代の流れの中で、この損なわれてきたユーザープライバシーを回復しようとするムーブメントは年々大きくなり、クッキーはいよいよ全面的に廃止されようとしています。ブランドマーケター、オンラインパブリッシャー、メディアエージェンシー、そしてアドテクプロバイダーの全てを含む広範なデジタル広告のエコシステムでは、将来の持続可能性(サステイナビリティ)とビジネス成長のために戦略的選択の岐路に立たされています。

 

AIの台頭で他の業界同様、デジタル広告業界においても、AIが雇用を脅かす存在であると懸念する業界関係者も多く存在しています。しかし、「木を見て森を見ず」。そもそも我々が直面しているクッキーおよびIDの終焉は、AIが社会全体にもたらすだろうインパクトと同じだけの破壊的な革命を広告業界に及ぼすのです。IDCのグローバルレポートによれば、この大局的な課題に対して、広告主のわずか41%しか具体的な解決策としてのクッキー・IDレスのターゲティング手法に知見を持たないのです。

 

アドテク新時代~広告業界の新しいムーブメント

この差し迫ったクッキー・IDレス時代の極めて大きな重要性を十分に理解するためには、これまでの3つのビジネスエポックを振り返って、それらの点と点を結ぶ新しいテクノロジーを理解することが近道だと考えます。まず、第一にGoogleの検索エンジンの台頭がありました。これにより、マーケターはユーザーインテント広告を最適化できるようなりました。次に、ファーストパーティーデータの収集で優位性をもった、主にfacebookをはじめとするSNSメディアの台頭が続きます。

 

そして今、広告業界の潮流として、リテールメディアの波が押し寄せています。小売企業は、消費者データへの独自のアクセスを活用し、リテールメディアネットワークの構築を通じて新たなビジネスモデルを確立しています。リテールメディアは急成長している広告チャネルの中でも上位の成長率をマークしています。GroupMの2023年世界中間予測によると、今年は約10%成長し、市場規模は1,257億ドルに達するとされています。

 

SNSとリテールメディアの波はファーストパーティーデータという宝庫を十分に活用することによって加速されてきました。ユーザーデータ活用におけるユーザー個人の自由意志の尊重と意識的な同意はこれらの波を結びつける一貫したダイナミズムとなります。しかし、SNSプラットフォームを主体とするリテール業界やウォールガーデンとは別に、サードパーティーデータであるクッキーやIDに依存している企業やブランドのエコシステムは依然として存在しています。そして、クッキー・ID広告の終焉は間近に迫っており、2024年が新しい時代の幕開けとなろうとしています。

 

こうした背景から広告業界の新時代はクッキーレス・IDレス広告の時代となるだろうと考えます。このムーブメントはもはや止めようがなく、クッキーやIDを用いた従来の広告が今後も何らかの形でスケーラブルかつ持続的に生き残るだろうとどこか楽観してしまっている人々には警鐘を鳴らす必要があります。まず昨今、ユーザーは広告によるトラッキングをはっきりと拒絶する傾向が増えてきました。例えば先日、YouTubeが未成年をターゲティングしている問題がNYTimesなどで大々的に取り上げられ、大きな波紋を呼びました。同時に、世界の規制当局もこうしたユーザーの声や重大なプライバシー侵害の問題を鑑みて、個人情報保護規制への動きが強まっています。特に欧州や北米ではその傾向が日本国内より早くそして厳格にGDPRやCCPAのようなプライバシー規制によって対応してきました。一度発された全世界的なこの社会の流れは止められないでしょう。

 

今こそアドテク新時代のスタートをきる時

こうした流れは広告業界にとってこれまで過度に依存してきたかつ不自然な慣行から大転換を果たすチャンスです。そして今すぐにでもこのチャンスを掴む事ができるのです。Oguryはペルソナ・ターゲティング広告はもちろん、それ以上の新しい革新的な手法を常にアップデートしています。新しい手法は世界的なプライバシー規制に準拠しつつ、マーケターはIDを用いる事なくコンテンツが消費される適切なユーザーのデジタル面に照準を合わせることが可能になります。Oguryが提供するこの新しい選択肢は、これまで課題となってきたIDに依存した広告手法に代わるスケーラブルでプライバシー優先のアプローチを実現できる有益な手法であると確信しています。企業のこうした方針転換は今後のビジネス成長および業界変革に対しての急務となります。

 

GroupMのレポートによると、AIは2023年末までに広告収入の半分に相当する部分に影響を与えるだろうとされています。それ以上に、サードパーティーデータの終焉という局面を迎える広告業界の私たちは、業界内のカードがかつてないほど入れ替わる現状を目の当たりにします。AIがもたらすだろう危機に対しても真摯に向き合うのと同時に、しかしながら数ヶ月後に迫るこのデジタル広告業界が迎えるインパクトの方が遥かに大きいだろうと私は危惧しています。クッキー・IDレスのデジタルエコシステムへの移行は、広告業界全体を巻き込んだ喫緊の取り組みとして、業界内全体に訴えたいと考えます。

 

コラム執筆者

 

山口 武

Ogury Japan, Commercial Director

 

 

ニューヨーク大学卒。Experian Marketing Solutions, Incの本社にて大手広告主のマーケティングキャンペーン設計や戦略的コンサルティング業務に従事。2011年に帰国後、コムスコアジャパン株式会社を経て、Integral Ad Science Japan及びMedia.Monksのカントリー・マネージャーを歴任。2023年より現職。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。