日本上陸1周年を迎えたOguryの展望とは[インタビュー]
Ogury Japanのカントリーマネージャーを務める松本氏(写真左)と媒体責任者の新井氏(同右)
「ペルソナ・ターゲティング広告」という世界的にも珍しい広告プロダクトを展開するOguryが日本上陸を果たしてから早1年。今年4月には盛大な1周年パーティーを開催し、日本独自のR&D構想を発表するなど、日本市場における影響力を拡大してきている。今後の事業展望について、Ogury Japan株式会社のカントリーマネージャーを務める松本亮氏に話を聞いた。
(Sponsored by Ogury)
日本独自のR&D構想を発表
―Ogury Japan株式会社は今年4月に日本上陸から1周年を迎えましたが、設立からの1年はどのような年でしたでしょうか?
Oguryは、2014年の設立以来、デジタル広告のグローバルリーダーとしての地位を確立してきました。特にヨーロッパ圏と米国での拡大に注力してきましたが、事業の初期から日本市場への進出を見据えていました。コロナ禍の影響で想定よりも時間を要する状況となりましたが、ついに2022年にそのタイミングが実現しました。この結果、会社としても日本進出のために十分な準備期間を設けることができ、私は国内事業の責任者として素晴らしいチームを築くことができています。
・Ogury独自のクッキー・IDレステクノロジーが多くの企業様に評価され、設立から1年で130社を超える企業様とお取引をさせていただき、今日に至るまで日々拡大し続けています。
・お取引社様の多くは、国内外のナショナルクライアント、大手広告会社、大手媒体社など各社様。お陰様でお取引総額も当初予定以上に拡大しております。
・立ち上げ当初私一人だったメンバーも、この1年で12名まで拡大し(2023年8月現在)、さらに2024年に向けていくつかのポジションをオープンする予定です。
―4月には関係者向けに1周年を記念したパーティーも同社にて開催されました。2023年に推進する新たな注力領域の一つとして特に国内外資企業の中では珍しい日本独自のR&D構想である「Ogury Tokyo Lab」を発表されましたがその詳細について教えてください。
「Ogury Tokyo Lab」は、中長期の日本事業を牽引する重要なプロジェクトです。広告会社が保有する調査データとの連携を通したターゲティングの強化、クッキーやモバイルIDに依存しないブランドリフト調査、ラグジュアリーブランド向けの商品開発、新しい領域におけるプロダクト開発などを想定しています。いずれの取り組みも、日本のお客様から寄せられる意見や要望を起点に、新たなアイデアを具体化し、日本市場での実証実験を通じて商品化していきます。
このプロジェクトの目的は、日本から、OguryのR&Dの発信地として他の市場に先駆けて新しい取り組みを行い、広告市場に新たな価値をもたらすことです。日本での成功事例をグローバルに展開し、Oguryの商品力をより強固にしていきます。
まず、第一歩として4月に「Ogury Audience Partnership Program」をローンチしました。「Ogury Audience Partnership Program」は主要なデータパートナーとの連携を通じて、多彩なデータセットを活用します。従来のOguryのデータに加えて幅広いデータソースを利用することで、より適切なターゲット設定を可能にします。このProgramは既にいくつかの広告主で導入済みであり、その効果も実証されています。これはまさに、日本から世界に向けてスケールを広げる可能性を秘めた重要なプロジェクトの一つです。
広告関係者の6割がトラッキングによるブランドリスクを警戒
―Oguryは「ペルソナ・ターゲティング広告」という広告手法を展開されていますが、従来の広告手法との違いを教えてください。
デジタル広告業界は多くの人にとって既知の通り、クッキー・IDレスのモデルへとシフトしています。しかしながら、多くのプレイヤーはまだその必然性を認識していないようです。プライバシー侵害の懸念が高まる中、なおも従来のターゲティング広告を使用し続け、それを唯一の方法と見なしている傾向が見受けられます。
しかしながら、よく考えれば、1 to 1マーケティングに由来するいわゆる「ウルトラ・パーソナライゼーション("Ultra-Personalization")」は、個人情報に依存したサードパーティークッキーによって実現されたものです。現状では、広告のトラッキングは社会的に受け入れが難しいものとなり、それに拒否反応を示すユーザーの数は増加し続けています。広告主もまた、特定の個人をターゲットにするのではなく、同じ特徴を共有する大規模なユーザーグループにリーチすることに関心を向けるようになっています。
Oguryは、ユーザーの個人のアイデンティティではなく、データ化された「ペルソナ」に基づいてターゲティングする独自のテクノロジーを開発しました。私たちはこのテクノロジーを「ペルソナ・ターゲティング広告」と呼称しています。これにより、広告主はユーザーのプライバシーを尊重しつつ、大規模なユーザーグループにリーチする新たな持続可能な広告アプローチを実現できます。
業界内でもこうした傾向からクッキーレスソリューションが広がりつつあるようです。確かにクッキーレスに対する機運が高まっていると肌で感じます。しかし、広告主はこの新しいムーブメントの中で、様々な選択肢の中から最適なソリューションを選ぶのに苦労しています。実のところ、IDソリューション、コンテクスチュアル、セマンティック、コホートベースのターゲティングにおいての代替は完全な理想形とは言い切れないところがあります。
Oguryは最近、クッキーのない世界におけるデジタル広告の未来について、日本を含む1,000人の主要なブランドおよびメディアエージェンシーのエグゼクティブを対象としたグローバル調査を実施しました。調査によると、対象者の60%が、ユーザートラッキングはブランドにとってネガティブなリスクになり得ると考え、56%がクッキーやIDはユーザーのプライバシーを脅かすものであると考えていることがわかりました。それにもかかわらず、回答者の41%以上が、広告やIDに依存しないターゲティングテクノロジーについてよく知らないという結果も出ています。
これは、ターゲティング広告の新しい形について広告主の視点から理解し難いという傾向があり、クッキーレステクノロジーを取り巻く認識がまだまだ著しく不足していることを示しています。クッキーレスソリューションがまだ本当の意味で一般に普及していないことを意味しています。
ペルソナ・ターゲティングの強みとは
―では、広告主はクッキーやIDを用いた広告の代替として、こうした新しいソリューションをどのように取り入れていくべきなのでしょう?
コンテクスチュアル・ターゲティングとセマンティック・ターゲティングは、クッキーやIDの代替として昨今使用されてきました。しかし、ユーザーの特定の興味ではなく、同じページの文脈に基づいて誰がページやアプリを見ているのかを予測しようとするため、本質的なターゲティングの観点から言えば、ユーザーに正しく効果的にリーチするのが難しいと言えます。よりアグレッシブな手法としてのコホート型広告は、ユーザーのサイトやアプリの閲覧履歴を収集し、その行動を分析し、一般的なトピックを特定することで、より広いレベルでの全体的な傾向を把握します。しかし、コホートを使用することは、ユーザーの意識的な同意なしにユーザーデータを収集することを意味します。
ここ数年、多くのIDソリューションも登場しています。それらは一見完璧なクッキーソリューションの代替のように見えるかもしれませんが、クッキーの拡張性という点においてはまだ議論の余地が残されています。IDソリューションはサイロ化され、相互運用ができず、ユーザーの同意を必要としますが、オンライントラッキングを拒否するという潮流において、ユーザーの同意を得ることはますます難しくなってきています。IDソリューションはまたその性質から、ユーザーデータの共有を受け入れないパブリッシャーの特定のネットワークに依存しているため、リーチできる範囲は極めて限定的である可能性があります。
ペルソナ・ターゲティング広告においては個人のオンライン行動を追跡することはありません。その代わりに、統計学に基づき対象ペルソナが含有される可能性が高い記事をターゲティングします。
―ペルソナ・ターゲティング広告は具体的にどのように機能しているのでしょうか?
Oguryでは、様々なデータを統合した上でユーザーのペルソナを構築していますが、そのうち基盤となる独自データとして、2014年から2020年にかけて20億台以上の携帯電話から集計され、ユーザーの明確な同意を得て収集されたパターン化されたデータを用いています。このデータから得られた傾向値は、大規模なユーザーパネルに配布される独自のアンケート調査によって定期的に強化され、更新されていきます。
それにより、Oguryは2022年時点で2,000万件のデータポイントを収集し、2023年内には4,000万件の大台に到達する予定です。このデータは、コンテクスト・ターゲティングとセマンティック・ターゲティング(前述の通り、これだけではユーザーを真に理解するのに十分ではありません)、および進行中のキャンペーンから得られる配信データとパフォーマンス・データを用いて改良されていきます。
この独自の調査データと様々な角度から得られるデータの組み合わせにより、他には類を見ない正確性の高い適切なターゲティングを可能としています。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。