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eCPMが低下する中でゲームアプリの広告マネタイズはいかに行うべきかーironSource from Unityがセミナー開催[ニュース]

Unity、TikTok for Business、Pangleの3社は、6月13日、都内にて、「2023年モバイルゲーム最前線 市場環境の変化に強いマネタイズ・グロース戦略」と題した共催セミナーを実施した。

(Sponsored by ironSource from Unity)

 

広告機会は増えるも単価は低下

「2023年モバイルマーケットトレンドとマネタイズ戦略のネクストレベル」と題したセッションでは、ironSource from Unityの峯秀一郎氏が最新のゲームアプリ市場動向について発表を行った。UnityとironSourceは2022年11月に合併を完了。現在ではゲームアプリの開発から販売やマーケティング及びマネタイズまでを一気通貫で支援する統合的なプラットフォームを運営している。

 

峯氏は、世界的にゲームアプリの一日当たりのユーザー数(DAU)は増加しているものの、課金ユーザーは減少しており、代わって広告視聴を選択するゲームユーザーが増加中であると報告。概して経済的に豊かな国では課金率が高くなり、逆に経済力が低い国では広告視聴率が高くなるとの傾向を示した。

 

またリテンション率やプレー時間などの各指標は市場ごとに違いがあるものの、各国別の傾向は見出し得ると説明。この状況を踏まえた上で、まずは広告費用が割安な市場でテストを実施し、その結果を例えば「Tier1市場のリテンション率はTier2市場よりも2%~3%ほど低くなる」といった具合に差分を加味した上で先進国市場にも適用する手法を紹介した。

 

峯氏はさらに注目すべき傾向として、ゲームの寿命が伸びていることにも言及した。2023年4月における米国市場の売上トップランキングの上位100タイトルのうち、96タイトルがリリースから1年以上、86タイトルは3年以上経過している現状に着目。いかにリテンションを高めるかが重視されるようになったと分析した上で、アプリ内課金のみと比べ、アプリ内広告を導入している方がリテンション率は高いとの実態を伝えた。

 

一方で、2021年第4四半期を境に広告表示回数1000回当たりに換算した際の広告単価(eCPM)は低下傾向にある。つまりゲームデベロッパーは、アプリ内広告を活用する機会が拡大している一方で、効果的な運用を行わなければ十分な収益を確保することができない状況下に置かれていることになる。

 

広告収益を最大化するための原則論

続いて峯氏は、ゲームアプリのマネタイズを最大化するための具体的な手法について解説を行った。同氏によると、広告収益の最大化とは、詰まるところ、広告単価と広告表示回数それぞれの最大化に他ならない。このうち広告単価については、アプリ内入札などの技術の発展を受けて自動最適化が進んでいるため、人手が介在する余地は少なくなってきている。よって広告表示回数つまりはユーザー体験の最大化が鍵を握る。

 

また一般論として、1人のユーザーがインストールするゲームアプリの本数は限定的であることから、同一ユーザーに広告を見せれば見せるほど、成果報酬型の広告収益は低下していく。言い換えれば、同じ10回の広告表示であったとしても、1人に広告を10回表示するよりも、10人に一回ずつ広告を表示した方が広告成果につながりやすいため、広告単価は高くなる傾向にあるという。

 

さらには市場やゲームのジャンルによって、広告接触率や平均動画視聴回数が異なることにも留意すべきである。マーケターは、市場やジャンルごとのベンチマークを理解し、マネタイズ戦略における最適化施策の内容や優先順位を判断していく必要がある。

 

どこで誰にどのように広告を表示すべきか

峯氏は以上の事実を述べた上で、ゲームアプリのマネタイズを最大化するためには、ユーザー体験を十分に吟味した上で開発初期段階から準備に取り掛かるべきと強調。かつてはゲームをリリース後に広告モデルの検討を開始する事例が多くあったものの、現状では多くのスタジオが、ゲームの開発開始後1週間から1カ月以内に収益モデルを策定していると紹介した。

 

さらにはゲームのコア機能だけではなく、アイテムやキャラクターの収集といったそれ以外の要素に相当するメタゲームを含めた設計が必須と指摘。コアゲームとメタゲームの間を往来するユーザーが実際にどのような導線を辿り、どのようなイベントに対してどのような行動を起こすかを理解した上で、課金ポイントや広告視聴ポイントを設計すべきと訴えた。

 

資料提供:ironSource from Unity

 

参考とすべきは、ハイブリッドカジュアルゲームの設計である。「ハイパーカジュアルゲームのような気軽な操作」と「カジュアルゲームのように綿密なマネタイズ戦略」そして「ミッドコアゲーム並みの充実したメタゲーム」を兼ね備えた本ジャンルには、マネタイズのヒントがたくさん詰まっている。

 

さらには一般的には課金ユーザーは全体の5%~10%前後に過ぎず、30%~50%は課金も広告視聴もしないとの事実にも言及。ゲームによってはそうしたエンゲージメントの低いユーザーに対してバナー広告やインタースティシャル広告を表示させることが得策となる場合もあるとの考えを示した。

 

ATT施行以前と同様のトラッキング可

第2部では、TikTok for Business Japanの鮑永驍氏が「TikTok for Businessを使った最新ユーザー獲得における機能紹介」と題した発表を担当。ショートムービープラットフォームのTikTokとアドネットワークのPangleの概要について述べた後、ATT(Apple Tracking Transparency)によるトラッキング防止機能対策を目的としたiOSキャンペーン向けの「アプリプロフィールページ」を紹介した。本機能を活用してTikTok内にユーザーのデータを流通させることで、ATT施行以前とほぼ同様の広告最適化を行うことができるという。

 

 

また鮑氏は、ゲームアプリの広告マネタイズ作業を、テスト期間、プロモーション初期、中期、後期の4段階別に整理。まずは少ない予算でテストを実施後、プロモーション初期にはインストール数獲得を最優先して必要なデータを蓄積、以後は徐々に広告単価の最適化を図っていくべきと推奨した。

 

資料提供:TikTok for Business/Pangle

 

同じくアプリ内課金及び課金と広告のハイブリッドモデルにおいても、まずは十分なインストール数の確保に専念すべきと主張。広告プラットフォームの学習モデルを機能させるために、まずはインストール最適化を通じて学習に必要なデータを十分に取得した上で、少しずつ深いイベントへと最適化を行うための成果地点を移していくよう案内した。

アプリ内課金と広告マネタイズの共存性

第3部では、ゲームアプリの現場事情について議論を行うため、株式会社カプコンの村松照也氏と株式会社Aimingの境野太智氏がマーケターを代表して登壇。村松氏はスヌーピーを扱ったパズルゲームの「スヌーピードロップス」を、また境野氏はシューティングアクションゲームの「キャラスト魔法学園」におけるマネタイズ事例を語った。

 

「スヌーピードロップス」は、当初はアプリ内課金のみでの運用であったものの、大多数の非課金ユーザーのマネタイズを目的に広告挿入を開始。現在は広告収入の割合が全体の3~4割を占めている。

 

 

村松氏によると、新たなアドネットワークを追加する度に、恐らく競争入札が活発に行われた結果として、広告収益は向上した。一方で、SDKのアップデートや不適切な広告の排除、広告収益関連データの統合や整理といった手続きに思った以上の手間がかかると実感。現在はUnity社のアプリ内入札ソリューションであるLevelPlayを通じて一元管理を行うことで作業の効率化を図っているという。

 

一方のキャラスト魔法学園における広告収入の割合は全体の5割を占め、同時にアプリ内課金アイテムの一つである広告ブロック機能の販売も好感触である。この状況から、境野氏は、直接課金にせよ、広告表示による収益にせよ、一人のお客様からどの程度収入を得たいのかを設定し、アプリ内課金と広告マネタイズの適切な併用設計をすることで、収益機会を互いに浸食する可能性は低いのではないかとの仮説を示した。

 

峯氏はさらに広告マネタイズに対する反対意見として、競合アプリの宣伝に貢献してしまう可能性を危惧する向きもあるが、いずれにせよ自社アプリの外ではユーザーは様々な広告に接触すると指摘。いずれにせよユーザーの目に触れるのであれば、自社アプリ内にて高単価でその広告を販売するのが得策であるとの考えを述べた。

 

 

また境野氏は、IDFAの取得に許可をしたユーザーは、そうでないユーザーと比較してeCPMが40%も高いことを報告。大手プラットフォーム動向によって広告収益が左右される余地が大きいものの、事前に対応する術があまりないとの現状を踏まえた上で、できる限りの情報収集を行い、開発陣が迅速な対応を行いやすくする環境を整備していきたいとの思いを語った。

 

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。