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未来指標であるアテンション指標はいかに用いるべきなのか― DoubleVerifyが最新のインサイトレポートの調査結果解説セミナーを開催

デジタルメディア測定、データ及び分析向けソフトウェアプラットフォーム企業のDoubleVerifyは、6月1日、最新版の調査レポート「2023 グローバルインサイトレポート(以下GIR)」の調査結果の解説を行うウェビナーを開催した。

(Sponsored by DoubleVerify Japan)

 

日本市場はディスプレイ広告のビューアビリティに課題

DoubleVerifyは、世界中の市場ごとの詳細な分析レポートをまとめたGIRを毎年発表しており、今回で7回目。本レポートでは、約100カ国、1,000以上の広告主による約5.5兆件の広告取引に基づき、メディア品質とパフォーマンスの傾向を分析している。

 

DoubleVerify Japan株式会社の日本代表及びカントリーディレクターを務める武田隆氏は、ポストビッド(入札後)のメディア品質指標に関するグローバル動向を紹介。以下のように、ブランド適合性、アドフラウド、ビューアビリティといったメディア品質を示す各指標は全般的に改善及び安定している傾向を伝えた。

 

・ブランドスータビリティ(適合性)違反率は横ばい(変化なし、7.1%)
・フラウド違反率は減少(前年対比25%減で1.1%)
・2022年のビューアブル率は上昇(ディスプレイ広告: 69%、ビデオ広告: 74%)

 

 

ただし、APACと日本市場においては、ディスプレイ広告のビューアビリティが低いことに注目。フラウド率とフラウドの種類が増加中であるが、他地域と比較した場合、依然として低い水準であると報告した。

 

また武田氏は、改めてブランドセーフティとブランドスータビリティ(適合性)の違いについて言及。前者は著作権侵害や過激グラフィック、マルウェアなど業種や業態を問わずあらゆる広告主が留意すべき一方で、後者は各社の違いに応じて細かなチューニングを行うべきものであると説明した。

 

対策を行わないとどうなるか

DoubleVerifyでは、今回のレポートで、同社のソリューションを用いて広告配信の最適化管理を行った場合と、行わなかった場合を比較する実験を実施した。その結果、非管理キャンペーンにおいて、アドフラウドにより無駄になったインプレッションは最大で全体の4分の1にまで上ったという。また最適化管理の有無でビューアビリティは最大42%、ブランドスータビリティにいたっては約2倍の差が出た。

 

10億インプレッション当たりの損失額に換算すると、アドフラウドは約1630万円、ビューアビリティを確保できていないものは約6200万円、ブランドスータビリティを確保できていないものは約2700万円相当に達したことになる。

 

 

このような状況下において、DoubleVerifyは、「あらゆる環境」で「あらゆる指標」の計測を行うための整備を進めている。基盤がまだ新しいがゆえにアドフラウドなどの攻撃にさらされやすいコネクテッドテレビやデジタル音声広告、リテールメディアといった新興メディアへの対応も積極的に行っており、近年注目を集めているアテンション指標に対してはDV Authentic Attention ®という新規ソリューションを採用。測定・分析・最適化対象の拡大を続けている。

 

自動最適化はどこまで進むのか

セミナー後半に開催されたパネルディスカッションには、味の素株式会社 コミュニケーションデザイン部 コミュニケーション戦略グループの油谷一輝氏と、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社執行役員及び株式会社 博報堂DYメディアパートナーズ デジタルアカウント推進部 部長の清水康隆氏が登壇。DoubleVerify Japan ビジネス開発部長 八木拓也氏による進行の下で、オンライン広告配信の設計や運用を行う現場の実態について様々な観点から議論が交わされた。

 

油谷氏は、とりわけユーザー生成コンテンツ(UGC)が多く集まるSNSプラットフォームへの対策に課題意識を抱えていると発言。予め適切な対策が施された広告配信プラットフォームを選別してはいるものの、それだけでは不適切な広告配信を完全に防ぐことはできないため、事後検証を併せて実施することが重要であるとの考えを示した。

 

さらにブランディング目的のキャンペーンにおいては、配信結果に応じた最適化作業を獲得型キャンペーンほどには細かく行うことは一般的ではないことから、自動最適化のツールの有用性が高まり得るとの持論を述べた。

 

これに対して清水氏は、多くの広告プラットフォームが不適切な広告を配信前に除外する機能を装備し、広告代理店がブラックリストまたはホワイトリストなどといった仕組みを用意したことで、現在はブランドセーフティを確保する環境はかなり整備されたとの見解を提示。より高度かつ柔軟な設計と運用が求められるブランドスータビリティに関しては、どこまで手動でのカスタマイズを繰り返すべきか、もしくはツールやシステムの利用を通じて効率化を図るべきかについて試行錯誤を続けている最中であると述べた。

 

この発言を受けて武田氏は、広告配信手法が複雑化すればするほど広告配信管理に関する業務負担は増え続け、手作業によるミスも発生しやすくなると指摘。DoubleVerify社では、顧客と綿密な打ち合わせを行った上で、サービス提供開始後も細かなチューニングを続けているとの現状を伝えた。

 

アドフラウドの実態把握は依然として課題

アドフラウドについては、油谷氏が広告プラットフォームの管理画面上だけでは、その実態や影響を把握することが難しいと吐露。またコネクテッドテレビやデジタル音声広告など比較的新しい端末や媒体は脆弱性を抱えているとの考えから、必ずツールを通じて安全性を確認するという方針を示した。

 

清水氏も、アドフラウドの危険性自体は今や社会的に広く認知されるようになったにも関わらず、その実態を把握し、適切な対策を立てることは依然として難しいと同調。優良なユーザーに対して適切な内容を表示するウェブサイトであったとしても、アドフラウドが発生し得るという点にも難しさがあると述べた。

 

これらの発言を受けて、武田氏は、DoubleVerify社においてはイスラエルのテルアビブにアドフラウドの専門的研究を行う研究所を運営していると報告。アドフラウドに関する知見の蓄積への自信をのぞかせた。

 

アテンションは未来の指標となるか

本パネルディスカッションは、近年注目を高めているアテンション指標についても取り上げた。油谷氏は「デジタル広告は数字がたくさんとれるからこそ何をKPIとすべきなのかが難しい」との課題意識を示しつつ、アテンション指標への期待に言及。「音楽再生を目的としてYouTubeを利用している場合もある」との具体例を挙げた上で、アテンション指標を通じて映像視聴と音楽再生のみを区別できるのであれば、広告配信の最適化に向けた参考値となり得るとの考えを示した。

 

清水氏は「アテンション指標は有用である一方で、使いこなすにはまだまだ時間がかかる」と発言。広告主が知りたいのは、「広告が事業の成果につながるか」「広告を目にした人の心が動いたか」といったことであり、アテンション指標は上手く使いこなすことさえできれば、それらの疑問への回答を得るための一助になり得ると述べた。

 

一方で広告配信を行う上では、広告単価が重要な指標の一つであり続けることには変わりはないと主張。また例えば「アテンション指標は向上したが、CPCは悪化し、一方でコンバージョンは改善した」ということがあり得ると指摘し、これらの異なる指標を掛け合わせながら、最終的な目標を達成するための施策を練り上げていくことがマーケターや広告代理店の腕の見せ所になるとの考えを述べた。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。