×

ヤフー、広告サービスの品質向上へ―2022年度は約1億3千万件の広告素材を非承認に

ヤフーは6月13日、「広告サービス品質向上の取り組みに関する記者説明会」を開催した。本説明会では「広告サービス品質に関する透明性レポート」の結果に関する説明やトピックスのほか、Yahoo! JAPANの広告サービス品質向上に関する取り組みや対策などについて紹介がなされた。また、公益社団法人日本広告審査機構(JARO)より、消費者からの広告に対する意見・苦情から見る広告業界の課題などについての説明もなされた。

(※)写真左・ヤフー株式会社マーケティングプラットフォーム統括本部 トラスト&セーフティ本部長 一条 裕仁 氏。写真右・公益社団法人日本広告審査機構 事務局長 川名 周 氏

 

広告表示への苦情はコロナ禍前の水準に減少

JAROは公正な広告活動の推進を通じて広告・表示の質的向上を図ることを目的として、1974年に設立された公益社団法人。広告主・新聞・放送・出版など約900社が所属しており、2024年には50周年の節目を迎える。

 

広告・表示について、JAROでは消費者からの意見や苦情をオンライン・電話・FAX・郵便などで受け付けており(URL)、
本説明会では「2022年度の広告審査状況」について事務局長の川名氏より、報告がなされた。

 

2022年度(2022年4月~2023年3月)に受け付けた苦情・照会などの総件数は12,030件となった。前年度比87.4%で1割余りの減少となったが、川名氏は「コロナ禍の不安や巣篭り需要に伴うメディア接触時間の増加により、2020年度に過去最高となる15,100件を記録していたが、ここ2年間で若干減少し、コロナ禍前の水準になった」と傾向についての分析をした。

 

JAROプレスリリースより引用

業種別の変化については「医薬部外品」が微増ながら1位となり、過去最高件数になった。前回1位だった「化粧品」は前年度比57.3%と大きく減少したが、依然として、インターネット広告を中心に「毛穴等の画像や映像が不快」という苦情も多いほか、詐欺的な定期購入契約に関連する苦情も目立った。

 

JAROプレスリリースより引用

JAROでは消費者や企業などからの苦情に対応して、その審査処理を行う部門を設けており、特に悪質なものについては審議の上、「見解」を決定し、相談者・広告主等に通知するほか、事例としてもホームページ等で発信している。その結果、今期は26件を審議し、「厳重警告」7件、「警告」17件、「要望」1件をそれぞれ発信した。

 

JAROプレスリリースより引用

2022年度の見解に関わるトピックスとして、川名氏は以下の3件を挙げた。

 

①定期購入など価格表示に関する「見解」が14件
②月額制(サブスク)のように誤認させる役務提供
③不適切なNo1表示「見解」8件に含まれる

 

川名氏はこれらのトピックスについて「苦情件数は減っているものの、見解に至るものも依然としてあり、悪質な広告案件は引き続き存在している。特に①・②のように、表示内容ではなく契約内容での見解が増えている」と話し、価格・料金体系等を誤認させるための手口が近年は巧妙になってきていることを報告した。

 

※「2022年度の広告審査状況について」の詳細はJAROホームページに掲載(URL)。

 

「最上級表示、No.1表示」が広告の非承認理由でトップに

ヤフーでは、ガイドラインの詳細説明や審査実績を「広告サービス品質に関する透明性レポート」として公開するなど、広告サービス品質向上のための取り組みを継続的に実施している。

 

ヤフーの広告審査には、①広告アカウント審査②広告素材の審査、の大きく2つがあるが、2022年下半期は、①広告アカウント審査において3,824件のアカウントが非承認となった。

 

ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」より引用

広告アカウント審査による非承認理由としては、開設時審査では「(サイトが存在しないなど)通常の環境で表示することができないもの」、開設後審査では「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」がそれぞれ大半を占めた。

 

②広告素材の審査については、Yahoo! JAPAN広告掲載基準に基づき、虚偽誇大広告などの法令に違反する広告を禁止するだけでなく、ユーザーに不快感・不安感を与えるような広告表現についても制限をしている。また、審査にあたっては、広告の入稿前から掲載開始後まで、審査スタッフとAIシステムで協働し、24時間365日、審査を実施をしている。

 

その結果、2022年度は約1億3千万件の広告素材を非承認とした。非承認理由としては、「最上級表示、No.1表示」がトップにあがり、「広告クリエイティブ上での最上級表示において、客観的な根拠の表示のない広告が多い(一条氏)」ことから、非承認となったとしている。

 

ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」より引用

また、素材別(広告のタイトル・説明文、画像、動画)の非承認理由についても、「最上級表示、NO.1表示」が「広告のタイトル・説明文」および「画像」でトップに上がった。しかし、その一方で、表現方法が多様な「動画広告」については「ユーザーに不快感を与えるような表現」がトップとなった。

 

「暮らしのレスキューサービス」を中心に消費者保護を強化

一条氏は、社会情勢に合わせた対応として、消費者トラブルが増加している「暮らしのレスキューサービス」に関する取組を紹介。

 

ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」より引用

トイレ修理や水漏れの修理などについての消費者トラブルが増加していることを受けて、ヤフーでは、レスキューサービスの広告を出稿中の広告主を対象に、本人確認の強化をおこなったほか、ユーザートラブルの情報が複数確認された場合にはアカウントを停止するなど、消費者保護への取り組みを強化したことを報告した。

 

2022年「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(DPF法)」が施行され、ヤフーにおいては、Yahoo!JAPANにおける広告の透明性を確保しながらも、分かりやすい情報開示を心がけていることにも一条氏は言及。ヤフーにおける広告サービス品質に関する取組について、次のように話した。

 

「ヤフーでは“透明性”については特に意識して情報発信をしている。ヘルプページなどのリニューアルや広告基準啓発のためのコンテンツをリリースもしたが、その結果、サポート窓口に寄せられる問合せも前年度比で約26%減らすことも出来た。今後も、ユーザーからの意見を取り入れながらも、広告主がおこなえる表現の自由を過度に規制することなく、良いバランスを保ちながらも、アップデートを続けていきたい(一条氏)」

 

※ヤフーのDPF法に関する取り組みの詳細は、ホームページに掲載(URL)。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。