スタートアップが、グローバルで戦うために欠かせないもの[インタビュー]
2022年の春にリリースされ、日本をはじめ北南米、東南アジアを皮切りに世界に広がっているTapNow。フォローし合った友人の写真が、スマホのホーム画面のウィジェットに送られるという今どきのSNSが、国境を越えて世界中のZ世代からの支持を受け、瞬く間に広がった。
TapNowを開発したのは、サンゴテクノロジーズ株式会社創業者の代表取締役CEO 野間 悠磨氏。
野間氏は、グローバル市場に打って出るにあたり、AppleSearchAdsやTikTokなどのメガラットフォームが提供する運用型広告と、アトリビューション分析ツールは欠かせないという。
TapNow誕生に至るまでの背景から、その後の成功に向けた展開について、お話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)
(Sponsored by AppsFlyer)
新しいネットワーク構造のSNSを作りグローバル市場に打って出る
―起業されたきっかけと、TapNowをリリースするに至るまでの経緯についてお聞かせください
私はアドウェイズに在籍していた頃、中国や東南アジア向けのアドネットワークやDSPを作る事業開発の責任者として、中国とベトナムに数年駐在をする機会がありました。自分が世界で戦えるプロダクトを創ろうという熱い気持ちで取り組んでいたのですが、結果的にホームランを打つというような大成功を収めることなく、実は悔しい思いをして帰国したという過去があります。
その時の経験から、グローバル市場で勝負するためには、会社員の立場で実現することが難しいと考えて、起業することにしたのがそもそものきっかけです。ただし当初は、どのようなプロダクトを作るのか決まっていなかったため、まずはベトナムで優秀なエンジニアを採用し、当初の1年半は受託開発の仕事をしていました。
その後、設立当初の想いを実現するために、いくつかのプロダクトを作っては壊しを繰り返しながら、2022年4月にTapNowを世に出しました。
世の中にSNSが色々とあるなかで、家族と「こういうのがあったらいいよね」という会話から着想を得たTapNowは、表向きはウィジェットを使いスマホのホーム画面で写真を共有し合おうというエンドベネフィットを謳っています。ですがもともとは、今までのSNSとは異なるネットワーク構造を持たせたSNSを作りたいという想いから作り始めました。
FacebookやInstagram、Twitterでは、ユーザーは身近な人から徐々に仕事関係、親戚など人間関係の濃淡を超えてネットワークが広がっていきがちです。そうすると徐々に息苦しくなってきて、やがては情報発信をしなくなってしまいがちです。TapNowは身近な友人との狭いネットワーク構造を機能として持たせているところが一番の特徴であると考えています。
ですが、そのような小難しい良さを若年層、Z世代の人たちに伝えることは難しいと感じました。例えばネットワーク構造の新しさをネット広告で訴求しても、ユーザーには伝わらないであろうと思ったのです。
そこで、キャッチ―で分かりやすく、今までなかったような機能を追加で探しました。その時に、ウィジェットを使って写真を共有し合うという機能を見つけ、搭載してベータ版を完成させました。そしてこれをTikTokに流してみると、大きな反響がありました。
ユーザーは、これまでプロモーションを中心にしてきた日本国内だけなく、TikTokerを通じてTapNowがバイラルで広がったブラジル、さらに当社の開発拠点であるベトナム、その後プロモーションをかけながら増えつつある米国やメキシコなどを中心に、世界中に広がりつつあります。
現時点でのアプリの累計インストール数は70万強で、MAUは、約30万人程度であり、アクティブユーザー率が高い点について投資家や業界関係者からもご評価いただいています。
グローバルで勝負するのに必須―世界を目指すスタートアップがAppsFlyerを選ぶ理由
―マーケティング活動の現状についてお聞かせください。
TapNowのKGIは、アクティブユーザー数に設定しています。アクティブユーザーを増やすためにインストール後30日後、60日後も利用してくれるユーザーを集める必要があります。
そのためには、どういった流入経路できたユーザーが継続的に利用する傾向があるかをしっかり把握し、最良ユーザーの獲得のためのPDCAを回していくしていくことが重要です。ですから、デジタル広告のKPIは、ユーザー獲得をみるCPA(顧客獲得単価)にしています。コンバージョンポイントとして見ているのは、「アプリをインストールして2日以内に1人以上をフォローしたユーザー」で、それはAppsFlyerの計測を実施しながらトライアンドエラーでユーザー獲得施策を改善してきてわかったTapNowにとってのキーとなるポイントです。
現在は、デジタル広告の月額予算を数百万円程度安定的に投資し、ターゲットとする国とプラットフォームを見定めている最中です。出稿先の広告媒体は、Apple、Google、Facebook、Instagram、TikTokなどのメガプラットフォームが多い状況です。
―マーケティング活動において、AppsFlyerをどのように活用されていますか。
AppsFlyerを活用しているのは、主にユーザーがアプリをインストールするまでの領域の分析です。もちろんユーザーによる他のユーザーフォローなどの動きを分析することも出来ますが、メインは「どこから流入したユーザーが・・」のところです。
その先は、MixPanelというユーザー行動分析ツールを、AppsFlyerと連携させて利用しています。
これにより、どの国で、どの媒体から来たユーザーの定着率が高いのか、私たちにとって有難い動きをしてくれているのか、などを測ることが出来るのです。
―AppsFlyer導入に至るまでの経緯についてお聞かせください
実はTapNowをリリースする前にいくつかのアプリをリリースし、その失敗からスタートダッシュにおいて計測ができることは必須である、と考えていました。そういった背景もあり、TapNowのリリース直後にAppsFlyerを導入しました。
以前から使っていたこともあり、エンジニアとしてわかりやすいこと、オンライン上でセルフサービスですぐにアカウントを発行し、利用を開始できることなどが大きな魅力だと思っています。
また、導入に至るまでのフローがシンプルで、スムーズであることは、私たちのような立ち上がり直後のスタートアップにとって本当に有難いのです。例えば、AppsFlyerより安価なソリューションであっても、面倒なプロセスを経てようやく使えるというのは、時間がいくらあっても足りないスタートアップ企業にとってはかなりのネックとなります。
再現性ある広告施策は、インフルエンサーマーケを凌駕する
―AppsFlyerは、貴社の事業成長にどのように貢献していますか?
現在、TapNowが成長を続けている要因は、TikTokなどで広告運用が上手くいっているということと、海外への積極的な展開が上手くいっていることなどが挙げられます。
他のSNSアプリのマーケティング活動を見ていると、ユーザーを増やすためにバイラルを生むことに注力してインフルエンサーを起用するケースも多くあります。
この方法は瞬間風速を伸ばす意味においては有効ですが、一方で息の長い海外のユーザーを増やす上で、日本からその手段をとり、きめ細かなマーケティング活動を行うこと自体、コスト的にも施策サイクルを回す観点でも現時点ではあまり現実的ではないと私は考えています。
こうした点を考えると、FacebookやTikTokなどのプログラマティックな広告プラットフォームは、クリエイティブさえ用意すれば、すぐにでも海外配信をすることが出来るメリットがあります。
このような場合、TapNowではAppsFlyerがなければアプリ広告のマーケティングは成立しないと感じています。
AppsFlyerを導入する前は、自社アプリのインストール数がわかるのはインストール発生の二日後以降であったため、今どの程度のユーザーが来ているのかということが、見えない状況でした。AppsFlyerの導入によりこれを解決することが出来ました。導入当初は、細かいデータを見ながらユーザーの動きがどうなっているのかをSQLなどを使いながら色々と分析をしていました。現在はアトリビューション分析機能で、CPIとCPAを見るというところでシンプルに利用しています。
また、TapNowはアプリの性質上、バイラルで広がることが重要になってきますが、バイラルを生み出すためには、SNS広告が必要です。そのためには広告出稿をしなければどれだけいいサービスでも広がっていきません。これに関しても、AppsFlyerを利用し、PDCAを回すことで実現できました。
TapNowをリリースした時期は日本でウィジェットを使って繋がるコンセプトを持つ競合アプリが沢山ありました。結果的にTapNowが今でもアプリとしてユーザーに使われ続けているのは、まさにAppsFlyerのおかげであると思っていることがあります。
当時、競合アプリと比較してTapNowのほうが、機能が劣る部分があるのは否めませんでした。一方でUIについては私たちのほうが優れているという自負がありましたが、何よりも明らかな違いがマーケティング戦略でした。多くの競合アプリがインフルエンサーを担いでバイラルを起こしている状況で、TapNowはAppsFlyerを使いながら、効果が改善されるような地道な広告運用をしていました。これは私自身がアドテク業界での経験から培った、再現性がある施策を実施するということをベースにしています。運用型広告は、再現性があるという点で重要なメリットがあるからです。
結果、TapNowは、広告施策を計測しながら再現性ある効果改善を行い、AppStoreのランキングに残り続けることで、結果的に競争に勝つことが出来たと思っています。
―今後貴社のアプリで一番成功につながった理由についてお聞かせください
理由の一つには、リリースしたタイミングが良かったということが挙げられます。
アプリをリリースしたのが2022年4月と、アフターコロナの初期であったということが挙げられます。アフターコロナには、リアルな交流が活発になります。
例えば、位置情報を友達同士で共有すると言ったリアルな情報をシェアし合うことや、一緒に写真を撮るなどコロナ前の世界に戻ってきた感があるサービスが広がってきました。このタイミングとTapNowのリリースのタイミングが重なりました。
人と人とがコミュニケーションをとるとき、心地よい距離感というものは世代や時代によって異なります。それは例えば50代の方々が若いころはメールでしたが、それが後の世代ではLINEのようなメッセージアプリになり、今では画像や動画というように移り変わっているということからもわかります。そして、今の若い世代は位置情報を共有し合うというところまで来ているのです。
TapNowはこのような流れに乗ることが出来たと考えています。TapNowユーザーの99%がα世代やZ世代なのですが、スマホのホーム画面で写真を共有し合うというコミュニケーションはこの世代が求めているような「人と人との距離感」とちょうどフィットしました。私たちが提供した距離感というのがこの世代に受け入れられたのです。
―今後どのような取り組みを進めていかれますか?
TwitterやFacebookなど、これまでのSNSにおいて重要な指標は、利用時間です。なぜなら広告によるマネタイズは事業にとって大きな意味を持つことは明らかで、そうなると利用時間が伸びないと売上が伸びないという構造になっているからです。
一方でTapNowは身近な人たちだけで楽しんでもらうというのがコンセプトであり、それは利用時間を伸ばすということは含まれません。むしろ、サービスのコンセプトとは反すると言ってもいいかも知れません。
したがって、知らない人の面白い動画のような楽しめるけどノイズになるようなコンテンツが入ってこない方がTapNowではユーザーフレンドリーであり、サービスのコンセプトに合っています。これは言い換えると、可処分時間を奪えないものです。
TapNowは今後もこのコンセプトを大切にしていきたいと考えており、マネタイズについては、ユーザーの利用時間が短くてもしっかりと収益につながるように、まずはアプリ内課金モデルを目指していきます。
―AppsFlyerに対して今後どのようなサポートを期待しますか?
私たちの目標が、グローバル市場に展開して成功を収めるというところにあります。そのためにはAppsFlyerからのサポートが必要不可欠です。
AppsFlyerはユーザー向けにモバイルアプリを提供されていて、手軽に現在のインストール数を確認することが出来、とても重宝しています。ですので今後さらに使いやすく機能がアップデートされることを期待しています。
アプリリリース直後からの広告展開とアトリビューション分析が必要な理由
―スタートアップでアプリ開発・運営をされている方にコメントをいただけますか?
アプリユーザーを増やすときの火種づくりにおいて、再現性をもって出来る施策というのはやはり広告施策です。
日本ではアプリ開発事業者の多くが、リリースしてある程度成長してから広告を出稿し始めたり、テスト段階では一部のユーザーに対してデバックをしていることが多いです。
一方海外ではアプリをリリースしたタイミングからAppsFlyerのようなツールを導入するのが一般的です。それは、低予算から最初の火種づくりが出来、再現性を持たせることで、次につながっていくということが可能だからです。
アプリスタートアップが、グローバル市場でアプリをリリースした直後には、AppsFlyerのようなアトリビューション分析ツールを導入することをお薦めしたいです。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。