多くの広告主がクッキーの消滅を認識しつつも、次の一手を決めかねている
現在、広告業界は前例のない規制、倫理、技術的な課題な観点から大規模な改革が行われています。GDPR のような厳格な規制から、広告目的でのデータ共有のオプトアウトやサードパーティCookie の廃止に至るまで、広告ID(識別子)は確実に廃止されつつあります。
(Sponsored by Ogury)
Oguryが委託調査したIDCによる最新の調査によると、広告主の60%の方がクッキーやIDは時間の問題で廃れていくと認識しています。私は広告主や広告会社がこの変化を理解しているということを受け、クッキー・IDレスソリューションの必要性を益々実感しています。
しかしながら、広告主のうち41%がクッキーやID以外のターゲティング手法についてあまり知識がないか全く知識がないという事が分かりました。これは明らかに、クッキーレステクノロジー企業が認知活動を強化する必要があることを示しています。しかしながら、昨今乱立しているクッキーレス・ソリューションに対して最適解を見つけるのは、広告主や広告会社にとって簡単なことではありません。
実際のところ、Unified ID やコホートベースのターゲティングを含む新しい”代替”ソリューションの大部分は、依然としてID に依存しています。それはまさにシーシュポスの神話*の、丘の上に岩を転がすという彼の無駄な試みを現代に再現するかのようです。これらのテクノロジープロバイダーが、それが彼らの最善の意志でありつつも、クッキー・ID代替ソリューションとして、スケーラビリティを担保するのは非常に困難であるだろうと私は考えます。
*フランスで言い伝えられる”不条理”を表現した哲学書
Unified IDが抱える課題
相互運用できずサイロ化されたこの仕組みでは、マーケティング担当者が求めるリーチを獲得することは困難です。Unified ID を推進する各社がそれぞれ多額の投資を行っている状況では、1つの共通のUnified ID 標準に合意することは事実上不可能と考えます。たとえそれが奇跡的に起こったとしても、広域なキャンペーンを大規模に実行することの難しさは依然として解決されないでしょう。
仮に、相互運用性が何らかの形で解決された世界を想像してみましょう。その最良のシナリオであっても、ユーザーがオンライン追跡の多くを拒否していることによって、データを取得するハードルが存在し続けます。さらに、多くのパブリッシャーは、これらのUnified ID ソリューションがユーザーデータを共有することが最善の利益ではないと判断しており、あまり支援を受けられていません。さらに、Apple のSafari ブラウザのプライベートリレー設定により、ユーザーのIP アドレスが暗号化され、ユニークID と照合することができなくなります。
しかしながら、Cookie とID を使用しなくとも視聴者に大規模にリーチできると信じていると多くの業界関係者が回答した(広告主61%、広告会社51% )ということは、非常に興味深いと同時に、早急に啓発が必要であるとも言えます。
一方でコホートベース広告もプライバシーリスクに
Google は、ユーザーの閲覧履歴を分析して一般的なトピックを見つけるターゲティング様式であるGoogle トピックを使用して、コホートベースのターゲティングの最前線に立ってきました。実際には、コホートは閲覧習慣に基づいてユーザーを集め、同じコホートID を与えます。つまりこの手法は依然としてID に基づいているということが相対的に証明されます。
しかし、より興味深いのは、たとえ集約レベルでユーザー行動を捕捉したとしても、結局のところ、コホートベースのターゲティングは完全にユーザーの無意識下でユーザー情報を収集し、デジタル行動の追跡に依存しているということです。コホートベースの広告ではユーザーのプライバシーリスクがまったく考慮されず、広告主の60% がユーザー追跡がブランドリスクの源と考えるという懸念が未解決のままであるということを私はお伝えしたいと思います。
“人”ではなく“擬人(ペルソナ)”のターゲティング
ID ベース広告の代替えとして、持続可能性が高く活用範囲が広い、クッキーやIDに依存しないペルソナベースのターゲティングの価値が高まっています。広告主は適切なターゲットに対して効果的にリーチをしながら、プライバシー最優先で将来性のあるパラダイムを生み出せるようになります。
そうすることで、広告主はGDPR を含む消費者や規制当局の要望に合わせながら、スケーラビリティに関する懸念を克服できると私は信じています。ペルソナ・ターゲティング広告は、オンラインでユーザーを追跡するのではなく、ユーザーがコンテンツを消費する目的地である、広告掲載面をベースに視聴者に関する数百万の実用的なデータポイントを収集する調査を活用して、カスタマイズなペルソナを構築します。
例えば、広告主がゲームアプリの視聴者を限定したいと考えているとします。Oguryのアンケート広告の機能を使ってユーザーに直接質問することで、ゲームアプリを使用しているという単純な事実を超えて、サイクリング、料理、ペットなどに対するこの特定のユーザーの親和性についてより深く理解できるようになります。このようにして、業界はユーザー中心から掲載枠中心の視点に移行し、広告主が慣れ親しんだスケーラビリティを実現しながら、消費者のプライバシーに関する強化された基準も満たすことができます。
IDC の調査では、広告主と広告会社が従来型の手法からの移行を検討していることがわかっています。サードパーティCookie の廃止後に必要な対応について尋ねたところ、回答者の32% が、現在提携しているアドテクサプライヤーを変更すると回答しました。このうち64% は、個人データの収集に依存しないアドテクソリューションへの予算を増やすと述べています。こういったトレンドを受けて、今後ますますペルソナ・ターゲティング広告が世界的に活用されていくと私は確信しています。クッキーやIDに依存しないペルソナ・ターゲティング広告を活用することで広告主はスケーラビリティを犠牲にしたり、消費者のプライバシーを危険にさらしたりすることなく、ブランド運営を効果的に持続することができます。
コラム執筆者
松本 亮
Ogury Japan, Country Manager
L’Oréal、BMW、Johnson&Johnsonなどでブランドマーケティングやカスタマーマーケティングに従事。2014年からCriteoでアジア太平洋担当のマーケティング・マネージャーとして事業拡大に貢献したのち、GumGumの日本ローンチを担当し、クッキーレス広告市場の創出と拡大をけん引した。2022年4月より現職。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。