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CTVはコンテクスチュアル広告の主戦場となるのか

サードパーティCookieの廃止が目前に迫るなか、プライバシー規制に抵触することなく、消費者を効果的にターゲティングできる、コンテクスチュアル広告が見直されている。

 

コンテクスチュアル広告は汎用性が高いため、さまざまな環境に適用可能だが、広告主にとってとりわけ魅力的なのはコネクテッドTV(CTV)環境だ。CTVはこの10年で驚異的な成長を遂げ、今や全世界で10億人以上の視聴者を擁している。CTVの視聴者層は多種多様だが、なかでもミレニアル世代とZ世代に人気が高く、彼らの視聴行動はデジタル広告のエコシステムに変革をもたらしている。

 

CTVでは、視聴者の行動や嗜好について、従来型テレビ放送よりもはるかに詳細なインサイトを得られる。またCTVはコンテクストを利用してキャンペーンを調整することで、広告主に効果を最大化する機会を提供する。さらに、多くの市場で、視聴者は従来型テレビ放送よりもストリーミングサービスの広告を好むという報告もあり、広告主のCTVへの投資意欲は高まる一方だ。2026年までに、このメディアに投じられる広告費は300億ドル(約4兆1400億円)を超えると予測されている。

 

しかし、CTVにも欠点がないわけではない。とりわけ、視聴環境の断片化は広告主にとって頭の痛い問題だ。CTV広告に関して言えば、リーチの広さは注目に値するものの、いつ誰が見ているのかという詳細な情報が抜け落ちている。例えば、1つのNetflixアカウントが、『ピープ・ショー ボクたち妄想族』を視聴している場合、X世代の視聴者が昔の名作を懐かしんで見ているのかもしれないし、同じ世帯にいる大学生の子どもが初めてこの作品に出会って見ているのかもしれない。こうした問題はCTVだけでなく従来型テレビでも同じことだ。しかし、CTV以外のデジタル広告分野では、これらはさほど懸念材料にならない。そのため、CTVの魅力が相対的に弱くなる理由になりうるだろう。

 

はたして、CTVはコンテクスチュアル広告の旗手なのか、それとも他のチャネルが優位に立ち、CTVは後塵を拝するのか?我々は、業界の専門家に意見を求めた。

 

 

CTVはコンテクスチュアル広告の可能性を拡げる

コンテクストおよびセマンティック(意味)ベースのターゲティングは、CTV広告市場の将来に重大な役割を果たすでしょう。ほとんどの消費者は、友人や家族と一緒にCTVコンテンツを見ることを好むため、実際に視聴しているのが誰かを明確に特定することはできません。そのため、個人を対象としたターゲティングは、不可能とは言わないまでも、極めて困難です。しかし、コンテクストやセマンティックに基づく分析によって、広告とコンテンツをペアリングすることができます。これにより、視聴しているのが世帯の誰であれ、視聴者のその瞬間の興味に応じた広告を提供することが可能になります。またこの方法は、個人データではなくコンテンツに基づいているため、プライバシーが配慮されたアプローチとして、消費者にも受け入れられやすいでしょう。

 

広告主はすでにコンテクスチュアル広告をCTV戦略の重要な要素と位置づけていますが、もっと踏み込んだ戦略も可能です。広告主にはコンテクスチュアル広告のターゲティング手法に関し、もっとニュアンスを意識したアプローチを採用することが望まれます。例えば、スポーツアパレルブランドなら、当然スポーツコンテンツをターゲットにするでしょうが、ブランドの精神を体現するもの、例えばアクションや冒険、興奮といった要素を含むコンテンツに注目することもできるはずです。定番のコンテンツの枠にとらわれず、より創造的な発想に立つことで、広告主は選択の幅を広げ、コアのターゲットだけではなく、新たなユーザー層にもリーチすることができ、より効果的にブランドを成長させられるでしょう。

 

ショーヒーローズ・グループ グローバルCTVディレクター、サラ・ルイス(Sarah Lewis)氏

 

 

データは利用可能、重要なのはその使い方

CTVでは誰が視聴しているのかが分からないため、番組のコンテクストを超えた、本当の意味でパーソナライズされた広告を提供することはできません。このような広告を改善する鍵は、視聴者情報とコンテクストの統合にあります。利用可能なデータはすでにあり、使い方に注意が必要なだけです。また、業界全体としても、コンテンツを定義するための統一カテゴリーを策定する必要があるでしょう。

 

幸いなことに、人工知能(AI)にはCTV広告に変革をもたらす力があります。視聴ユーザーを特定したり、コンテンツに対する視聴者の反応を判別したりする技術が、まもなく実用化されます。またオーディエンスの注目を惹くための最適な広告表示のタイミングも、データから判断できるようになります。CTV広告は飛躍的に進化しています。ブランドはこの魅力的なチャネルを、まもなく最大限に活用できるようになるでしょう。

 

アドフォーム 英国カントリーマネージャー、フィリップ・アクトン(Philip Acton)氏

 

 

過度の単純化には注意が必要

動画コンテンツに対する視聴者の感情は、その瞬間に作品の中で何が起こっていたかによって大きく変わります。火星から地球に飛来した殺人ゾンビが人類の支配を企てている時には、不安を感じているでしょう。ヒーローが人々を危機から救った後には、安心感や幸福感に満たされているはずです。広告主にとって、リアルタイムにオーディエンスの心情を知ることは、心に響くメッセージを届ける上でとても重要なことです。

 

そのため、コンテクスチュアル広告は、CTVの分野で非常に強力なツールになる可能性があります。けれども、過度の単純化には注意しなければなりません。コンテンツを、たった一つのカテゴリーに押し込めるのは危険です。広告主は、高度なコンテクスト分析技術を利用して、コンテンツの各場面について理解を深め、それぞれの瞬間にどのようなメッセージが効果的か把握すべきです。そうすれば、広告主は視聴者の心に効果的に訴えることができ、ビジネスの成果も劇的に改善されるでしょう。

 

ガムガム 欧州・中東・アフリカ担当ゼネラルマネージャー、ピーター・ウォレス(Peter Wallace)氏

 

 

コンテクスチュアル広告はCTVの多様な可能性をひらく

CTVを利用すれば、広告主はこれまでにない高度にパーソナライズされた体験を提供できます。視聴者は自分の興味に合わせて、見るコンテンツを自由に選びます。そのため広告主は、ユーザーの興味や関心に合わせて広告をタイムリーに届けることができます。ターゲティングに関して、広告主はもはや推定に頼る必要はありません。視聴履歴に基づいて、視聴者が求めているものを直に知ることができるからです。

 

CTVとコンテクスチュアル広告の融合は、顧客にメッセージを届けたい多くの企業に機会を提供するでしょう。広告主は、プログラマティックを利用して特定の視聴者層への大規模なターゲティングを展開することができます。また、データ分析ツールを活用してコンテンツの文脈を的確に理解することで、ターゲティングの最適化とメッセージの改善をはかることができます。特定の視聴者層をターゲットに特定のメッセージを発信することで、どのキャンペーンが有効だったかを正確に把握できるのです。

 

IAS APAC地域担当シニアバイスプレジデント、ローラ・クイグリー(Laura Quigley)氏

 

 

最適な効果を得るにはコンテクストデータが不可欠

視聴者が見ているコンテンツにクリエイティブを合わせることは、広告の関連性を高めるための前提ですが、最適な効果を得るには、もう一つのレイヤー、すなわち、移り気な人間の「アテンション(注意)」を考慮する必要があります。我々の調査によると、生身の人間が示すメディア消費にはいくつかの体系的な視聴パターンが見られます。それぞれのパターンで集中力の周期やピークが異なり、望ましい成果を達成するための能力にも差が生じてきます。

 

すべてのメディアでパフォーマンスを最大化するためには、いくつもの環境に適合するように、キャンペーンを慎重に調整する必要があります。ブランドは、単に広告とコンテンツをマッチングさせるだけでなく、プランニングやバイイングの段階から視聴パターンを念頭において、さまざまなプラットフォームに固有のアテンションパターンに広告を適合させる必要があるのです。

 

アンプリファイド・インテリジェンス グローバルパートナーシップ担当エグゼクティブバイスプレジデント、アレックス・カーン(Alex Khan)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS

2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。