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MADSが目指すのは“価値ある情報”の発信-Cookie規制により注目が集まるリアルマーケティング[インタビュー]

2023年、株式会社マイクロアドデジタルサイネージは株式会社MADS(エムエーディーエス)へと社名を変更した。同社はデジタルサイネージアドネットワークおよびコンテンツマネジメントシステム「MONOLITHS」を提供してきたが、2022年においては、リテール(小売店)に設置されるサイネージを中心として、更なるビジネス展開を進めてきた。2022年の取り組みと“MADS”の今後の展望について、穴原誠一郎代表取締役に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

 

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店頭サイネージで非計画購買を促進

―2022年における貴社のデジタルサイネージビジネスのお取組状況は。

この1年間はリテールサイネージや新宿の屋外3Dサイネージ「クロスビジョン」など、コロナ禍にローンチした既存ビジネスを中心として、広告サービスの拡充と販売を中心に事業拡大を続けてきた1年となりました。特にリテールサイネージについては顕著に伸びています。

 

我々は広告効果の可視化として主にPOS(商品販売情報)データを使ってレポーティングを行なっています。POSのリフト値を一つの成果ポイントとして見ていますが、クライアント様や商材、店舗の場所等によって、結果が出やすいパターンや運用の中でやっていくべきことが見えてきました。

 

我々の広告、コンテンツの配信システム「MONOLITHS」は時間や環境に合わせた細かい配信設定が可能ですが、この細かい配信設定により広告効果を上げることができます。例えば同じ商材であっても、駅から近いロケーションなのか、それとも郊外の大型店なのかによって、配信の時間帯や頻度、配信内容を変えることによって広告効果は大きく変わります。

 

この1年間で広告配信のノウハウも蓄積されてきましたが「適切な配信をすれば必ずPOSは動く」ことについて、我々は大きな自信を持って事業を続け、ニーズマッチングも出来たと感じています。

 

加えて、最近は販売促進だけでなく、商品認知の拡大を希望されるお話も増えてきました。

 

我々のサイネージは商品の棚前ではなく店頭に設置し、非計画購買の促進を図っているため、商品認知の拡大にも寄与はしていますが、今後はサーベイの利用など商品認知における適切なレポーティング方法についても検証と検討をしていきたいと思います。

 

―貴社が手掛けている店頭のサイネージは、棚前に設置されるサイネージと比較し、どのような役割の違いがあるのでしょうか。

非計画購買の促進、という話ともつながりますが、我々が入り口にサイネージを置いている理由は、来店をした全ての人の目に触れる可能性が最も高いからです。入口のわずかな時間では目に入らないのではという印象論もありますが、広告効果はこれまでのPOSの結果で立証されています。また、弊社の展開するデジタルサイネージにはスタンドに店内用の買い物カゴを併設するなど、目に入りやすい物理的な工夫も行なっています。

 

棚前での訴求は効果的だと思います。ですが、その棚に行かない限りサイネージやPOSMは見えません。我々は棚前で商品の宣伝をする以前に、その棚に向かわせるための導線を作ることが重要なポイントだと考えています。

 

リテールメディアで取り扱われている商品の多くは店頭における宣伝だけでなく、各メーカーが並行して、テレビCMを中心とした(マス)マーケティングを行っているので、商品の認知はある程度進んでいます。

 

しかし、テレビCM等を見て「この商品良いな」とユーザーが感じても、実際に商品を買いに行ったときには忘れていることは往々にしてあります。そこで、一度別の媒体で接触をした商品のことを店頭のサイネージで再想起させれば、棚に向かうための導線を作り上げることが可能となります。

 

その商品や対象カテゴリのものを来店の時には買おうと思っていなかった人に対して、購入を促進できるのが、店頭のサイネージの役割となります。ただ、その際には放映する時間帯や頻度をコントロールして、ターゲットゾーンに適切に当てていくことも重要となります。

 

―貴社の展開するリテール向けデジタルサイネージ広告を出稿した企業のブランド数も累計100ブランドを突破しました。

クライアントの広告出稿の実績・レポートに基づき、広告効果が明らかになって来た結果の裏付けだと考えています。今後もジャンルや商材を問わず、リテールに商品を展開されているメーカーから、幅広く広告出稿をいただけるようサービス展開していきたいですね。

 

また、クライアントのなかで、宣伝予算と販促予算のくくりはありつつ、段々と垣根が低くなってきている印象もあります。我々が両方の予算を預かるケースも増えてきました。

 

一方で、広告出稿の大多数で良い結果があがって来てはいるものの、中には結果が伴っていないケースも確認しています。そこには「広告に合わせて配荷されている商品量が少ない」、「そもそも広告配信量や予算が少ない」など、様々なケースがありますが、これらのケースについても、より良い結果が出るように分析を進めていきます。

 

―屋外3Dサイネージ「クロスビジョン」のお取組状況は。

こちらは運営管理のユニカ社と配信システムの提供管理を行うMADS、ビルオーナーのクロススペース社と共同運営をしていますが、引き続き安定した稼働が続いており、現在までで平均すると月におよそ20案件ほど出稿をいただいております。

 

販売はウィークリーが基本となっていますが、3Dサイネージはクリエイティブが重要な媒体でかつ、そこでしか使えない専用の素材をご用意いただくことになるので、長期で出稿をいただいているケースも多いですね。

 

また、3Dサイネージのすぐ近くにある「アルタビジョン」とクリエイティブを連動放映させた事例もありました。このような取り組み自体は渋谷駅前のビジョンなど、以前からも見られましたが、オンプレ(構内=オフライン)ベースのシステムではなくオンラインベースのシステムが確立したことで、連携も非常にしやすくなったと感じています。

 

 

Cookie規制により高まるサイネージ需要

―デジタルサイネージ市場について、リテール回りでは今後どのように市場が拡大していくのでしょうか。

 

昨年もお話した通り、リテールや店舗のDX化が進んでいく過程で、デジタルサイネージと呼ばれているオンラインディスプレイの導入が進んでいくのは必然的な流れと言えるでしょう。

 

更に、リテールの全体的な流れとして、デジタルマーケティングのプレイヤーがリアルのマーケティングに次々と参入しており、市場自体が今後ますます大きくなっていくことに期待しています。

 

リテール企業は自社アプリなどの導入が顕著に進んでおりますが、リアルの店舗でのDXとの連動を目的として、デジタルマーケティングの企業と連携ないしは協業しているケースが多く見られます。

 

―彼らの市場参入にはどのような背景があるのでしょうか。

その背景にあるのは、Cookie利用の規制です。

 

広告予算はコロナのようなことがない限りは、基本的に大きく減るものではありません。その前提でCookie利用が規制された後、広告配信を前提としたサービスはどこでどのようにサービスを展開するかということを考えています。そこに昨今のDX潮流の中で存在感が大きくなりつつあるデジタルOOHと呼ばれているオンラインディスプレイです。ここに対してデジタルのプレイヤーは注目しています。

 

Cookieが規制されればデジタルマーケティングでOne to Oneが今までのようには出来なくなりますが、One to One自体の需要はあります。例えば、リテールの専用アプリをダウンロードしてもらい、購買行動に応じてアプリでクーポンを届けるのも、One to Oneの一つの方法かと思います。

 

-貴社としてはどのようなアプローチを考えているのでしょうか。

我々が設置しているサイネージは主に近距離媒体であり、全部が全部One to Oneであるべきだと考えているわけではありませんが、One to Oneの手法は研究しています。

 

我々としては、サイネージを通じて“広告”を届け、その広告を見た人にとって“価値ある情報”に転換したいという思いを強く持っています。だからこそ、場所・時間・環境・クリエイティブという要素を踏まえたうえで、訴求に応じた最適な配信をすべく精微にコントロールしていくことが重要だと考えています。

 

サイネージはインタラクティブな媒体へと進化

―2023年1月1日より、社名(商号)を株式会社マイクロアドデジタルサイネージから「株式会社MADS(読み:エムエーディーエス)」へ変更されました。今回の社名変更にはどのような狙いがあったのでしょうか。

 

外部パートナーやお取引先の皆様には創業当初から「マッズ」と呼ばれ一定の認知がありますので、そこは変えずに、我々の描く未来への思いを込めた意思表示をしたいと考えました。

 

年始に社名変更について詳細をリリースさせて頂きましたが、今後の弊社の展開していく方向性のキーワードとなるものをそれぞれのアルファベットに込めています。
(詳細リリース・URL)

 

デジタルOOHと呼ばれる市場は今後より一層拡大していくと見込まれていますが、その過程ではサイネージ=看板広告だけではなく、様々な役割を有した多様性のあるスクリーンが増えていくと考えています。

 

現在、市場では屋外広告を中心にデジタル化が進んでいますが、今後は一方向に情報発信をする広告媒体としてだけでなく、ロケーションによって使われ方が変わっていく、インタラクティブ(双方向型)性のある媒体を取り入れた市場に発展していくと考えています。

 

例えば、現にタクシーサイネージでは既に、情報を伝えるだけでなく、乗車料金の決済端末としての役割が大きくなっています。今後は店舗などを中心として、そういった情報発信以外の役割を担うスクリーンが更に増えて行くことと思います。

 

データ整備やデバイス自体も進化してくことでしょう。我々は様々なロケーションや環境要因などのデータから自動的に最適な情報を届けるだけでなく、接する人が自ら情報やコンテンツを選び、その上で価値ある情報との出会いを広告という形で提供する。
屋外ビジョンのような不特定多数から専念視聴環境のOne to Oneまで、ロケーションに合わせた利便性と最適な情報の提供が可能なサービス創りを目指していきます。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。