デジタル広告運用者を、テレビCM運用へいざなうために- テレシーアナリティクスの全貌とは[インタビュー]
テレシーは今年8月に運用型テレビCMのセルフサービス型分析ソリューションの本格的な提供を開始した。
テレビCM放映後のユーザーのWebやアプリ上での消費行動を可視化することが出来るツールである。
また、同8月にはCM効果の判定および分析を可能とする測定技術において特許を取得している。
同社のプロダクト開発責任者である、取締役 CPO 吉濱 正太郎氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan野下智之)
テレシーアナリティクスの概要
出典:テレシー
テレシーアナリティクスは、テレビCMの効果について、ユーザーのオンライン上の行動を可視化することが出来るWebアプリケーションです。
本プロダクトでは、テレビCMについて、ネット広告と同じように、CPM、CPA、CPIなどの費用対効果を確認することが出来ます。これを活用することで、テレビCMを運用することが出来るようになります。
従来テレビCMの効果は、パネル調査によりブランドリフトをしたかどうかということ追うことが主流です。ですがキャンペーン全体の評価をするというものであるため、次回のキャンペーンにおいてはどこを具体的に改善すればよいか、といった、テレビCM枠ごとの評価をすることが出来ないのが課題でした。
テレシーアナリティクスでは、視聴率データをもとに、エリアや局、CM枠ごとにCPAやCPIを拾いながら、毎日確認をすることが出来ます。
ダッシュボードから、軸ごとに良いところや悪いところがわかりますので、次のキャンペーンで目標に合わせた買付やクリエイティブの改善を行うことが出来ます。
テレシーアナリティクスをWEBダッシュボードで提供開始した背景は、クライアントからの要望が多かったことに尽きます。もともとは放映終了後にレポートティングをして、それをもとにクライアントがテレビCMの運用改善をするということを続けてまいりましたが、PDCAをより速く回していくためには、ダッシュボードからリアルタイムでデータを確認いただくことが求められるようになったということです。
これにより、例えば長年ネット広告の運用をされてきたクライアント様は、同じような感覚で、テレビCMの運用をすることが出来るようになります。
テレシーアナリティクスの分析の範囲
出典:テレシー
テレシーアナリティクスがカバーしている指標をフルファネルに落とすと、認知は対象外ですが、それ以降の興味・関心・検討・購入について、一定量のWebのトラフィックから確認することが出来ます。
興味関心は指名検索数の増減から、そしてそこから正しくSEOが効いていたらセッションが増えてきますので、その部分をしっかりとみていく。さらにLPOが効いていれば、またそこの数字が増えてくるというように、ブレイクダウンをしながら数字を確認することが出来ます。
これらの数字をどこから取得するのかというと、WebトラフィックについてはGoogle AnalyticsからAPIでデータを引っ張ってくることが出来ます。アプリは、MMPである「Adjust、AppsFlyer」と公式にデータ連携をしています。それにより、ユーザーのWebサイト上でのクリックやコンバージョン、アプリのインストールや再起動などを計測することが出来るようになっております。
テレシーがアナリティクスで定義する「CMの効果」とは?
出典:テレシー
次に、現在どのようなアプローチで分析をしているかについてですが、まずテレビCM広告の分析は一般的に2パターンあります。全数データを用いた統計的な分析と、インターネット結線をしているテレビIDと消費行動を実行する別デバイスをマッチングをするクロスデバイス分析とがあります。後者の行動ログはデータの突合が出来るので詳細な分析が出来る一方で、分析対象が結線されているテレビの視聴ユーザーに限られます。
テレシーでは前者の方法を選択しています。
理由としては、我々の顧客層が初めてテレビCM出稿のお客様となります。そのため、初回出稿は地方エリアからテレビCM出稿いただくケースが多くなっております。地方エリアだと、首都圏と比較して人口が少なく分析データが少数になります。
そのため、統計的に有意かという観点で価値ある分析を行うためには、全数データを活用したほうが、CM価値を証明できると考えて本分析手法を選択しています。
テレシーの統計的な分析ロジックは、特許を取得しており大きく分けて二つのロジックモデルを使ってCM効果を分析しています。
一つ目は、テレビCM効果の判定を行います。過去データを取得し、未来でテレビCMがなかった場合を推測するというものです。テレビCM放映が始まると、推定した値よりも高い値が出てきます。このリフトアップしている値をテレビCM効果としてとらえています。
過去データは、お客様の過去3か月くらいのKPI毎のデータをいただいて、顧客ごとにすべてモデルを作っていきます。精度は全国平均プラスマイナス5%程度の枠内に抑えられており、かなり精度の高いものをご提供できております。
出典:テレシー
二つ目は、推定されたCM効果数と視聴率データを用いて、局・枠・クリエイティブ毎の良し悪しを分析するというロジックモデルとなります。
本ロジックモデルを理解するために、テレビCMのアドストック(残存効果)をご説明させていただきます。
商材にもよりますが、無料ゲーム等の購入ハードルが低い商材であれば、放映コンテンツの合間にダウンロードに至りますが、BtoB商材など意思決定者の決済が必要であったり、高額な商材では検討してから購買行動に移す人もいます。そのため、多くのコンバージョンは放映したタイミングだけではなく持続的に効果が発生します。その効果をアドストックと呼びます。
アドストックが発生するため、CM放映が無い時間にCM効果は発生します。そこで我々のロジックは、視聴率をCM効果に対してフィッティングすることによって局、放映枠、クリエイティブ評価を行います。
CM効果は2週間後までしっかり追って計測
出典:テレシー
過去の分析実績から、キャンペーン全体としてテレビCMの効果は大体2週間程度続くということがみえてきたため、この2週間の効果を含めることによって正しくテレビCMを評価できると考えております。
独自に効率性を指標化「TCVI ®」
出典:テレシー
当社では分かりやすい効果指標として、テレビ・コンバージョン・インデックス(略名:TCVI®)というものを、効率性の観点での指標を定義し、CM枠を評価しています。
テレビCMはGRPという視聴率の単位で出稿量を決めるのですが、留意すべきは放映エリアによって人口が違うことから、量の概念がなく、異なるエリアの評価は適正に行えない課題がありました。
そこで我々は、TCVI(100万impあたりの獲得数)を独自に定義して、いかに効率性があるのかというところを意図する数値を導き出すことにしました。
この指標を使うことで、全国114局のメディア効果を正しく比較し、クライアント様に次の一手を考えていただくことが出来るようになっております。
なぜ、CPA/CPIだけではなく獲得数に絞った効率性を可視化する理由としましては、テレビCM買付は放送局、時期、プランニングによっても変動するため、買い付けコスト変動を排除することによって、純粋にメディア、クリエイティブを評価するためです。
テレシーのクライアント様は、これらの指標はテレシーアナリティクスのダッシュボードから日毎で確認していただくことが出来るのです。
ダッシュボードだけでは解決できないような詳細な分析をしたいというお客様も増えてきておりまして、アドホック分析もご対応しています。アドホック分析では顧客ごとの要望に応じて分析を行っております。
クライアントの意思決定を迅速化
テレシーアナリティクスの提供開始により、それ以前からテレシーで運用型テレビCMをご出稿いただいているクライアントの意思決定が早くなっているという傾向があります。
以前はテレビCM放映終了後2週間程度のタイミングでレポートを提出していましたが、CM放映途中であっても一定のデータが蓄積されていれば、その時点で次回にむけた意思決定をすることも可能です。
これはまさに、クライアントの意思決定を早めるという、我々の開発の狙いそのものでした。
ご利用いただいたクライアントからは、良いフィードバックをいただけております。
テレシーアナリティクスの今後
今後はテレシーアナリティクスを、二つの方向性に発展させていく予定です。
一つ目は取り扱いが出来る分析データの数を増やしていくということです。例えば、POSデータとの連携をして、どのテレビCM枠や時間帯、放送局に出せば一番売れるのか、ということを証明することが出来るのではないかと考えています。
二つ目は計測できる対象のメディアを増やしていくということです。我々はテレビCMからスタートしていますが、テレシーアナリティクスが特許を取得している分析手法をコネクテッドTV等のオンライン媒体なども対象としていきたいと考えております。
これにより、テレビCMとデジタル広告の効果を比較することも、可能にしていきたいと考えております。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。