Google、サードパーティCookieの廃止を再延期:アドテク業界が取るべき対応は?
by ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS on 2022年10月03日 in ニュース
アドテク業界の公然の秘密が、7月末についに公表された。Googleが再び、サードパーティCookieの廃止を延期すると発表したのだ。
Googleは当初、2022年までに「Chrome」からサードパーティCookieを排除するとしていたが、それをいったん2023年に先送りし、今回さらに予定を遅らせた。現在の予定では、期限は2024年とみられている。Googleはプライバシーサンドボックス内で、この変更に対応するソリューションの「評価とテスト」をおこなうため、時間を稼いだのだ。
今回の発表について、ExchangeWireの最高戦略責任者、キアラン・オケーンは次のように述べている。「『プライバシーという空き缶』をさらに遠くまで蹴飛ばしたとしても誰の得にもならない。業界はすでに、Chrome上のプログラマティックマーケティングに最適化された状態にある。だがそれも、ウェブ上の50%を占めるに過ぎない。広告運用の専門家の話では、この中でも、アドレサブルな在庫はわずか60%で、残りの40%のユーザーは、プライバシーモードを利用したり、強力なプライバシー設定を適用したりしているのだという。つまり、数十億ドル規模のアドレサブル市場は、オープンウェブのわずか30%にしか目を向けていないということだ。我々が行っているのは、崩壊しつつあるレガシー事業の延命にすぎない。Googleは勇気をもってプライバシーファースト時代へのタイムラインを早めるべきだったのに、結局はいつもの通り、先送りだ」
遅かれ早かれ「Cookie黙示録」がやってくる
サードパーティCookieの廃止に関する話題は、Googleが最初にこれを発表して以来、常にこの業界で物議をかもしてきた。エージェンシーもベンダーも「Cookie黙示録」に備えている。Cookieレス世界の到来が近づくなか、アドテク業界は、データの収集と、同意やプライバシーを両立させる代替テクノロジーの開発に取り組んできたが、その成果はまちまちだ。
サードパーティCookie廃止への備えはどれだけ進んでいるのか?この疑問が、いつも議論の中心にあった。サイビッズ(Scibids)の最高マーケティング責任者、ナディア・ゴンザレス氏は、「プライバシーファーストのソリューションは複雑」であり、最終期限の延長によって「広告主とパブリッシャーは代替手段をテストする時間を稼ぐことができた」と言う。アゼリオン(Azerion)の最高執行責任者、アナ・フォーブス氏も同じ意見で、「多くのブランドや広告主で、Cookieレスソリューションに向けた進展が見られる一方で、まだ備えが十分でない企業も数多く見受けられるのは残念だ」と、述べている。プライバシー保護への期待を満たしつつ、Cookieに代わるデータ収集手段を準備できていない企業は、Googleの2度目の延期措置に、安堵のため息をついているに違いない。
一方で、多くの人々が考えるよりも、サードパーティCookie廃止に向けた対策は進んでいるという意見もある。ライブランプ(LiveRamp)でアドレサビリティ・アクティベーション担当のシニアバイスプレジデントを務めるトラビス・クリンジャー氏は、「インターネットの45%以上はすでにCookieレスの世界だ。モバイルアプリ内にも、CTVにもCookieはない」と指摘し、Googleの2度目の延期は「多くの企業で、Cookieレスの代替手段への転換がまだ十分に進んでいない」という誤解に影響されたものではないかと述べた。パーミューティブ(Permutive)の最高収益責任者、マーク・パールスタイン氏はこうした考え方を支持し、ヨーロッパでは「『すべてのCookieを拒否』するオプションが導入され、すでにパブリッシャーは非常に高い(実に55%もの)オプトアウト率に見舞われている。Googleによる延期の発表はそうしたなかで」行われたのだと述べた。こうした視点で考えると、ティーズ(Teads)のジェームズ・コルボーン氏が主張する、「Cookieレスの時代は先送りされたどころか、すでに到来している」という意見も説得力が増す。Googleブラウザの競合でもあり、世界のオープンウェブの40%を占めるSafari、Firefox、Edgeといったビッグプレーヤーも、すでにCookieを廃止している。
最後の一瞬をただ待つわけにはいかない
アドテク業界が、サードパーティCookieの終焉に備えができているかどうかにかかわらず、Cookie黙示録が間近に迫っていることに変わりはない。到来が予定より少しだけ先に遠のいただけだ。このことは広告主にとって何を意味し、どんな対応をとるべきなのだろうか?だが、広告主の業種を問わず、その答えはみな同じになるはずだ。そう、今すぐ「行動を起こせ」ということだ。
「Googleの動きをあと1年待つのではなく、業界はCookieの先を見据え、効率的で倫理的な方法を模索し、すぐにでもテストを開始するべきだ。ファーストパーティのビヘイビアデータもその選択肢の中に含まれる」と、アドルディオ(Adludio)のCEO、ポール・コギンズ氏は言う。ナノインタラクティブ(Nano Interactive)でプロダクトマーケティングの責任者を務めるヘザー・ロイド氏も同じ意見だ。業界の「総力を尽くし、それによってもたらされた変化や機会、学びを積極的に取り入れるべきだ」と促している。実際、GoogleのサードパーティCookie廃止の延期という決定は、代替手段の開発の勢いを削ぐ可能性がある。しかし、アドテク業界が未踏の地に足を踏み出すための、足場固めに必要な準備期間を与えてくれたともいえる。ジェームズ・コルボーン氏は、「最終的にGoogleがサードパーティcookieを廃止するのがいつだとしても、ブランドやパブリッシャーがこのまま代替手段の導入を遅らせていては、備えが不十分なままに最後の一瞬を迎えることになる」と指摘する。要するに、Googleがくれた猶予を活かして、cookieレスへの転換を進めていなければ、やがて訪れるCookie終焉の時、取り残されるリスクが高くなるだけなのだ。
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