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デジタル広告関係者はCookie規制にいかに対応すべきか-Outbrainがサミット開催

レコメンデーションプラットフォームのOutbrainは7月21日、都内で「Outbrain Summit 2022 -We Recommend-」を開催した。(Sponsored by Outbrain)

 

鍵となるのはユーザーエンゲージメント

基調講演には、この日に合わせて来日した共同創業者兼共同最高経営責任者のヤロン・ガライ氏が登壇。2006年に本事業を立ち上げ、2013年に日本法人を設立、2021年にナスダック(NASDAQ)に上場するまでの歴史を振り返った。またサードパーティCookie利用制限の強化に対する見解も提示。「精度が高くないターゲティングでもより良いユーザー体験を実現すること」が今後の鍵になると訴えた。

 

 

パブリッシャーについては、広告収益だけでなく、サブスクリプション機能やeコマースの運営を含めた収益源の多様化が求められると提言。とりわけサブスクリプションやeメールによるユーザー登録を重視しており、コンテンツ閲覧者の15%が登録やログインすることで、Cookie廃止による影響を相当程度に低減できるとのOutbrain独自調査の結果を紹介した。

 

さらにはターゲティング精度の低下に伴うKPIの見直しの必要性も指摘。インプレッション収益(RPM)に代わって、ユーザー体験とエンゲージメントに関連した指標の重要度が相対的に増していくと話した。

 

Outbrainではこうした市場変化を見据えた上で、ユーザー体験の最適化を実現する新技術を開発。本機能は既に米国では試験的展開が開始されており、日本においては2023年より提供開始を予定している。

 

また広告主に対しては、ターゲティングが機能しない環境下においては記事コンテンツに負けない魅力的な広告を配信すべきとの考えを披露。2022年1月に買収したコンテキストマッチ型動画プラットフォームのvideo intelligenceを通じて、Cookieに依存せずに記事コンテンツの内容に則した動画広告を配信する仕組みを整備したと伝えた。

 

最後に、創業時からグローバル社員全員で共有しているコアバリュー「信頼、透明性、誠実」を一人一人が徹底していることを再確認の意味を込めて共有し、結びの言葉とした。

 

Outbrainの最大の強みとは

 

 

パブリッシャー事業統括の益田敦司氏は、Outbrainの最新機能及びそれらを活用した成功事例を報告した。コンテンツだけでなく、その表示順やレイアウトを含めたユーザー体験全体を自動最適化する「Smartlogic」は、パブリッシャーではCTRが25%、収益が40%、広告主ではコンバージョン率が16%改善する事例が出ており、既に海外では65%以上のパブリッシャーが導入済み。ただし、日本市場の導入率は25%に留まっており、今後の普及活動に注力していく考えを示した。

 

 

一方で、直帰しそうなユーザーに対するウェブ接客ツールである「Explore More」は、既に国内60媒体以上が導入。単価の高いインストリーム広告在庫の創出を実現するSmartvideo(video intelligence)は、通信社やスポーツニュース番組などが提供する動画コンテンツ100万本を1,000超のパブリッシャーに対して配信し、約400の広告主及び広告代理店が活用している。2022年7月現在日本は未導入となっているが、日本市場への導入を目指し、着々と準備中という。

 

営業事業統括を務める大竹ナナ氏は、Outbrainのプラットフォームとしての強み、特徴を改めて解説した。特に「新規獲得に強い」と言われる所以を紹介。オープンウェブを対象としたパブリッシャーネットワークを構築したために、検索広告やSNS広告ではリーチできないユーザーとの接点を持つことが可能であり、これが新規獲得に強くあり続ける理由のひとつであると説明した。

 

 

また現在は国内大手全国紙4紙に対して独占配信を行っており、ユーザーの半数を高所得者層が占めるとのデータも提示。さらに独自で開発された特徴的なアルゴリズムが、真の意味でユーザーに受け入れられる広告となるためにいかに働いているかという点も強調。最後に、デジタル広告になくてはならないが、永遠の課題とも言える「ブランドセーフティ」への真摯な取り組み(目視事前審査の徹底など)も結果的に新規のユーザーを獲得することにつながっていると述べた。

たとえ短くとも太い広告体験を

本イベントの終盤では、アタラ合同会社の高瀬優氏による進行の下で、Outbrainのパブリッシャーアカウントマネジメントディレクターを務める石井充久氏とゲスト登壇者の対談形式によるパネルディスカッションを開催。Cookie規制への対応のあり方などについて議論を行った。

 

 

ウェブカタログを中心としたダイレクトマーケティングを展開する株式会社フェリシモの西本宗平氏は、一時は全体の70%を占めたリターゲティング広告の出稿量を25%にまで減らし、代わってブロード配信の割合を増加させたり、またコンテクスチュアルターゲティング広告の予算を10倍に増やすなどしている。ただし、大手プラットフォームの方針は「これからも変わり得る」とした上で、柔軟な対応が必要との認識を示した。

 

毎日新聞社の永山篤氏は、ファーストパーティーデータやIDソリューション及びGoogle社が提供するパブリッシャー指定の識別子(PPID)の活用方法などを検討中。しかしながら、IDソリューションが有効な広告在庫数は限定的であるため、ターゲティング可能でかつ一定の配信規模を満たした広告在庫の確保を課題視している。こうした現状を踏まえた上で、膨大な広告在庫を有するOutbrain提供のコンテキストターゲティングは「Cookieレスのソリューションとしては強力」との見解を示した。

 

 

今後の展望について西本氏は、Cookie規制を受けてリターゲティング広告の効率性が低減していくことを鑑みて、CRM施策の活用に加えて、「広告接触時間が短くてもその体験を太くする」ことを強調。広告内容を「すぐに購入を迫るのではなく、記事形式で商品理解を深めるもの」にすることが有効になり得るとの見解を述べた。

 

また永山氏は、悲報や衝撃的な事件を報じるニュース記事はトラフィック急増をもたらすものの、必ずしも広告配信面としては適さない場合があると指摘。広告在庫の管理作業の合理化を今後の課題として挙げた。

 

約1時間半にわたるセッションの終了後は、ネットワーキングイベントを開催。Outbrainとの取引関係にある広告主、広告代理店、パブリッシャーなどがガライ氏を含めた同社社員やその他の業界関係者たちとの情報交換などを行った。

 

 

Outbrainが本イベントを開催するのは3年ぶり。入場前の検温、消毒、マスクの常時着用徹底、消毒液の配布といった感染対策を敷いた上でオフラインでの開催に至った。会場では久しぶりの再会を喜ぶ出席者の姿も見られ、オフラインならではの人と人とのコミュニケーションや、またオフラインセッション特有の緊張感や刺激が懐かしく感じられた。

 

当日のダイジェスト映像は以下からご覧になれます。

 

 

お問い合わせはこちらまでお願いいたします。
E-mail: pr-jp@outbrain.com

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。