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ヤングカンヌ国内ゴールド受賞、セプテーニのクリエイティブディレクター飯島 夢氏に聞く〝世界に挑んだ経験〟[インタビュー]

2021年、「ヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)」の国内予選で最高賞であるゴールドを受賞し、日本代表に選出されたセプテーニのクリエイティブディレクター、飯島 夢氏。クリエイティブとの向き合い方や、世界に挑んだ経験を広告業界にどう還元していきたいかなどについてお話を伺いました。

(Sponsored by Septeni Japan)

 

ヤングカンヌに挑戦した理由とは?

—自己紹介とお仕事の領域について教えてください。

クリエイティブディレクターとして、コスメやエステなどの商材案件を主に担当しています。広告クリエイティブの企画から制作までのディレクションが主な業務です。それに加えてコピーライティングを得意領域としているので、社内でもコピー起点の企画や提案にジョインしたり、勉強会や研修を実施しています。

 

—ヤングカンヌに挑戦された理由をお聞かせください。

現在の広告の多くは、商品の売上を増やすことや、企業の認知度を上げることを第一の目的としています。一方でヤングカンヌは、社会における切実な課題の解決が目的であり、「クリエイティブを通してどう社会と向き合うことができるか」といった思考を求められます。

この思考は今後、クリエイターに欠かせないものになると考えています。

広告自体も、商品の売上を増やすことや、企業の認知度を上げることのみではなく、それ以上の価値を求められるようになるでしょう。社会と向き合った上で、クリエイティブと向き合うこと。その実践の場になるというのは、ヤングカンヌの大きな魅力です。

 

—ヤングカンヌの国内予選と本選、それぞれの作品について、背景にある思いや創作時に心がけたことについて教えてください。まず予選の作品からお願いいたします。

国内予選では、「クリエイティビティの力を使って、先進国で孤独を抱える人を減らす」という課題が出されました。こちらがゴールドを受賞した作品です。

 

 

SNSのTL(タイムライン)をベースに、左側は孤独な状態にある生前の人物のTLを、右側は孤独が原因で亡くなった人物のTLを表現しています。私たちは誰かが孤独なとき、それが大切な人であっても、なかなか声をかけることができません。しかし最悪の事態になると、優しい言葉をかけがちです。その言葉は、生前の人物が一番欲しかった言葉だったかもしれない、と考えました。

 

 —誰にでも起こりうる事柄のようにも感じました。

読後感は良くないかもしれません。「もしかしたら自分もやっているかもしれない」と思うようなことを可視化しました。生前、孤独なときには誰ひとり言葉をかけないのに、亡くなってしまったときにはじめて「ゆっくり休んでね」、「がんばったね」のようなコメントがずらりと並ぶ… しかし、それらの言葉は必ずしも亡くなった人にしかかけられない言葉ではありません。今すぐにでも、隣で孤独かもしれないその人に対してかける事ができる言葉です。亡くなった方にかければ「弔い」の言葉ですが、今いる大切な人にかければ「救い」の言葉になる。大切な人への救いの言葉を増やしたいという願いを込めました。

 

 

日常の怒りや違和感を「クリエイティブ」にぶつける

—それでは、ヤングカンヌの本選の作品について、背景にある思いや創作時に心がけられたことについてお願いいたします。

本選ではユネスコをクライアントとして、人種差別に対抗する動画募集キャンペーン「I Am Antiracist」の告知ビジュアル作成という課題が出されました。こちらが提出した作品です。

 

 

「I am not racist, but…」は差別の現場でよく使われる言い回しで、「私は差別主義者ではないが…」という意味です。そうは言っていても、butの後には、たいてい差別的な言動が続きます。自分は差別主義者じゃないと言って保険をかけながら、差別をする。このような見せかけの「非-差別」を明るみに出し、人種差別主義者ではない人(not racist)ではなく、人種差別に対抗する人(Antiracist)へと転換させるクリエイティブを作成しました。差別をしないと言うだけでなく、積極的に差別に反対するよう転換を迫っています。

私は差別をはじめとして、日常に対しての怒りや違和感は、「記憶しておく」ことを大事にしています。怒りや違和感を覚えておくことは非常につらいことで、強制されることではありませんが、私にとってこれはひとつの対抗の仕方です。クリエイターである前にひとりの人間として、怒りや違和感を持ってクリエイティブに向き合っていきたいです。

 

 —クリエイティブディレクターとしての経験を作品に活かせたと感じることはありましたか?

セプテーニではアートディレクターとコピーライターに明確なポジション分けがありません。役割分担はせずにクリエイティブディレクターが両方の領域を管轄し、責任をもってディレクションをする機会が多いです。結果的にビジュアルとコピーを総合的にディレクションできるスキルや、企画を絵と言葉の両方で考える力が身についたと感じています。

広告はコピーとビジュアル双方の科学反応があってこそなので、ポジションで線引きをせずに、全体を俯瞰して考えられる能力がとても重要です。

普段の業務でも、自分の領域を超えて意見を出し合ったり、お互いの得意分野の化学反応を楽しみながらクリエイティブと向き合っています。

 

 

今後必要とされるクリエイティブ力とは?

―ヤングカンヌでの経験を通じて、何を学び、セプテーニのクリエイティブディレクターとして、どう活かしていきたいですか?

一つ目は、企画やコンセプトなどを考える際のインサイトの見つけ方についてです。ヤングカンヌに参加して、アウトプットのユニークさだけでなく、ターゲットインサイトの見つけ方が秀逸なものが評価されており、非常に勉強になりました。
コンペティションに参加して以降、お客様に対して提供するクリエイティブも、ターゲットがついつい動くポイントに目をつけられるか、という幅広い視点で提案するようにしています。そしてそのような知見は社内勉強会を通して、クリエイティブ制作に関わる他の社員にも積極的に発信しています。

 

二つ目は、社会にとって「悪くない」クリエイティブを生み出すことの重要性についてです。広告クリエイターには、売上を伸ばす良い広告を作りたいという気持ちがあると思います。しかしそれ以上に大切なのは、悪い広告を社会に生み出さないことです。
セプテーニグループでは、デジタル広告業界の健全な発展のためのポリシーを策定しており、クリーンな広告を制作する上での基盤が整っています。しかし、今や業務に関連する法令や業界団体が制定するガイドラインを守るだけでは不十分なケースもあります。広告がこれまで社会に刷り込んできた偏見に対して自覚的になり、社会にとってポジティブに働くクリエイティブとは何かを今まで以上に考える必要があるでしょう。

 

―ヤングカンヌを経て、改めて広告に対して感じることとは?
改めてポジティブとネガティブ、どちらの方向にも強い力を持つのが広告であると感じました。広告業界には、クリエイティブの力を信じている人が多いと思います。私もそのひとりです。しかし、力を持っているからこそ、クリエイティブを批判的に見ることが必要です。意図せずとも、倫理的に問題のある表現をしてしまう可能性があると自覚することは、クリエイターにとって必須の要素だと考えます。業界としても、問題のあるクリエイティブに対して、互いにフラットな視点で意見交換がし合える土壌を整えていかなければならないでしょう。
セプテーニグループのミッションは「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」です。どういう広告が世界を元気にするのか、常に問い続けながら、今後も取り組んでいきたいです。

 

▼セプテーニへのお問い合わせはこちら

https://ln.septeni.jp/XenG7B5

 

▼カンヌライオンズ 受賞者ページ

https://www.canneslionsjapan.com/youngcompetitions/results/

 

 

 

飯島 夢

2018年、Septeni Japanに新卒入社。営業経験を経て2020年よりクリエイティブに異動。

個人理念 「自分の中の社会を通じて 変わるべき価値観や 問題に立ち向かう」をもとに活動中。わたしの中にある社会を、企画やコピーにしている。2022ヤングカンヌ日本代表(プリント部門ゴールド)、第13回販促コンペゴールド、第59回宣伝会議賞協賛企業賞など。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当

立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。
その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。