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「ウォールドガーデンの世界で、私たちはもっとオープンでありたい」:カンヌのパネルディスカッションより

ExchangeWireリサーチの最新プロジェクト「The Rise of the Independents(独立系の台頭)」に続いて、イクエイティブ(旧スマート)がカンヌライオンズでパネルディスカッションを開催し、パブリッシャーがウォールドガーデンの世界を乗り切るための戦略と技術について議論した。

 

このパネルディスカッションはイクエイティブのクルーザーの船上で開かれ、そこではサードパーティCookieの廃止、カスタマイゼーション、コンテキストの重要性など、さまざまな課題が話し合われた。

 

ExchangeWireのCSO、キアラン・オケーンが進行役を務め、ボセントのメイリス・シュバリエ氏、デクセルトのソフィー・トス氏、Mピュブリシテのセバスチャン・ノエル氏がパネリストとして参加した。

 

パブリッシャーはすべて、ウォールドガーデンか?

議論の核心に迫るため、オケーンはまず次のような質問を投げ掛けた。「この断片化された世界では、パブリッシャーはすべてウォールドガーデンだといえるだろうか?」。しかし、その答えは三者三様だった。

 

トス氏は「ある意味、私たちは皆ウォールドガーデンだが、そのウォールドガーデン同士をつなげることもできる。誰でも新しい試みは怖いが、パブリッシャーとアドテクが協力すれば、きっとうまくやれるだろう」と述べた。

 

ノエル氏はウォールドガーデンに、少し違う意味付けをしていた。「私は、フランスでいうところの『オープンガーデン』という言葉の方が好きだ。そこに壁は存在しない」

 

オケーンはこれに対し、「アイルランドではそれをフィールドと呼ぶ。つまり、野原の方が良いということか?」と訊き返した。ノエル氏は次のように答えた。「そう、私たちは野原を目指している。壁はいらない。私たちは、コンテンツを読みたい人にも、インベントリを購入したい人にも、すべての人に対してオープンでありたいと思っているのだ」

 

一方、シュバリエ氏は、すべてのパブリッシャーがウォールドガーデンの定義に当てはまるとは考えていなかった。「みんながそうした能力を持っているとは思えない。すべてがウォールドガーデンであるとはいえないだろう。しかし、ウォールドガーデンのいくつかの側面、特にスケール化については良いヒントをもらったと思う」

 

価値交換

次に話題はコンテンツの価値へと移った。これはパブリッシャーにとって望ましい揺り戻しの動きだ。「メタにないものの一つは、本物のプレミアムコンテンツだ。しかしパブリッシャーには自社コンテンツがあり、現在、それこそがこの環境における本質的な価値となった」とオケーンは述べた。パネリストたちもこの価値のシフトを感じているのだろうか?

 

ノエル氏はそう願っていた。「コンテキストとコンテンツが、ウォールドガーデンに対抗できる、最高のアドバンテージであり、最大のパワーであることを願っている。そうなればバイヤーにとって、プレミアムパブリッシャーに投資すべき理由となるだろう」

 

トス氏も同意する。「私はそれを需要と供給の『出会い』と呼んでいる(中略)それは広告主に、オープンマーケットで広告予算を使い果たす代わりに、質の高いパブリッシャーに予算を投じる機会を提供する」。同氏はその出会いを二者択一と捉えている。「規模を追求するか、質を追求するか、どちらかだ。私たちにグーグルやメタのようなリーチを期待することはできない」

 

「価値対リーチで考えなければならない」さらにノエル氏は続ける。「リーチは考えなくても分かる。価値について考えることが重要だ。私たちはユーザーを知っている。私たちのコンテンツには価値がある。私たちはこの価値を高めることで、読者や広告主に、より直接的な価値をもたらすことができる」

 

シュバリエ氏は、コンテキストにも価値を見いだしている。「単にプレミアムコンテンツがあれば、それで十分というわけではない。フェラーリを持っていても、車庫にしまったままでは誰にも気付いてもらえない。気付いてもらうためには関連性が必要だ。そのためデータの収集を開始し、データベースを構築する必要がある。」

 

規制の影響

オケーンは「Rise of the Independents」レポートで、アドサーバーの選択におけるプライバシー規制の重要度が10点満点中8点だったという調査結果にも言及した。

 

トス氏はプライバシーの重要性を認識していた。「とても重要な要素だと思う。会社はプライバシー対応のために法務部門を置いている。不適切な行為がもたらすリスクを回避するためだ。プライバシーは業界全体にとっても非常に重要な課題だ」

 

シュバリエ氏はオーディエンスの信頼を回復する必要性を感じていた。「データ保護責任者(DPO)を設置する企業が増えている。信頼は大きな問題だからだ。広告に対する人々の信頼が揺らいでいる」として、「私たちは、自分たちでインベントリを管理することを重視している。なぜなら、それこそがプライバシーに対処する最善の方法だからだ」と同氏は述べた。

 

議論はさらに盛り上がった。近くのクロワゼット通りで過ごす夜のひとときを前に、オケーンは次のように締めくくった。「とても前向きなディスカッションだった。プレミアムパブリッシャーの今後に大きな希望を持つことができた。エコシステムのこのような変化は、むしろプレミアムパブリッシャーの生き残りと成功につながるものだと確信した」

 

アドサーバーの現状について詳しく知りたい人は、Rise of the Independentsレポートをダウンロードしてほしい。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS

2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。