第一想起率の向上を達成した、セプテーニのデジタル認知施策[インタビュー]
by ニュース
on 2022年7月13日 in
印象的なテレビCMと聞かれて、「そこに愛はあるんか?」というフレーズが頭に浮かぶ方も多いだろう。このCMで知られるアイフル株式会社は長らくテレビを中心に広告出稿を行ってきた。しかし、YouTubeをはじめ、デジタルメディアでの動画活用の必要性を感じ、2年ほど前からセプテーニと電通とタッグを組みデジタル領域に踏み込むこととなった。
そしてアイフルがKGIとして設定するのは第一想起率。これを向上させるためのセプテーニ独自の指標設計や、リサーチデータなどの活用がいかにKGI達成に結びついたのか。
これらの取り組みについて、アイフル株式会社 宣伝部 部長 阿部 育生氏、同社 宣伝部 宣伝課 何 媛媛氏、Septeni Japan株式会社 パフォーマンスグロース本部 第一部 シニアチーフパフォーマンスリード 前川 純一氏、同社 ビジネスプロデュース本部 第一部 チーフアカウントリード 渡部 伸晃氏に話を伺った。
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 渡辺 龍)
(Sponsored by Septeni Japan)
上質なテレビCMのクリエイティブをデジタルにどう転用するか!?
―自己紹介をお願いします
阿部氏:私が所属する宣伝部では、マーケティングとインハウスのデザイン組織があり、マーケティングの方は認知分野とダイレクトマーケティングの両チームを持っている形になります。
何氏:私は、テレビCMからウェブ、デジタル広告、広告の運用管理を含めたデータの分析などに携わっております。
前川氏:私はパフォーマンスグロース本部に所属し、プレイヤーのエキスパート職であるシニアチーフパフォーマンスリードとして大手広告主様の運用型広告を中心としたプロモーション戦略の実行やパフォーマンスの改善に携わっています。
渡部氏:アイフル様とは、2年ほど前から主にデジタル認知施策の取り組みを行っており、デジタルのメディアを包括的に活用しながら、戦略設計から施策実行までのサポートを一貫して行っています。
―今回のプロモーションの概要についてお聞かせください
阿部氏:これまで広告制作からテレビCMの出稿までは電通さんにお願いしており、そこでの広告効果は高かったのですが、ローテレ層やノンテレ層と言われる若い世代が増えてきたこともあり、デジタルメディアへの進出を検討し始めました。CMのクリエイティブが上質なのでWEBでも活用したいと考えていたところ、電通グループでデジタルに強いセプテーニさんを紹介いただき、一緒に取り組むことになりました。それからはYouTubeを皮切りに、Twitter、TVer、ABEMA、TikTokと配信媒体を増やしていきました。
渡部氏:テレビCMで活用していた「凛とした女将」シリーズのクリエイティブを広告の中心に据えて、2020年7月にYouTubeでのプロモーションをスタートしました。YouTubeと一口に言っても多種多様なリーチの手法があるので、まずどのメニューがブランドリフトに寄与しやすいかの効果検証をしました。その結果を受け、ある程度YouTubeでの勝ちパターンが見えてきたので、他のメディアにも幅を広げていこうと考え、次にTwitter広告をスタートしました。
―取り組みにあたり、セプテーニさんが意識されたことはなんでしょうか
渡部氏:テレビCMのクリエイティブをデジタルで転用したときに、テレビと比較してどの程度リーチ効果があり、かつブランドリフトに繋がるかを見るための評価設計をどのように構築するかについては、一番初めのプロモーションから意識していました。
アイフル様の認知配信の目的は第一想起率の向上です。数あるブランドの中で一番に想起される状態を目指すわけですから、ブランドマネジメントの中でも特に難しい指標です。また第一想起をどう上げていくかは、私たちが広告運用で使っている媒体の管理画面上の数値では可視化することができず、そこをKPIとしながら運用していくという事例もまだ少ないものでした。その評価設計をしっかり作った上で、どのタイミングでどのように評価をして、プロモーションを見直すのか、といった考えをある程度固めた上で施策を開始するというのが、お取り組みの最初に双方で決めたことでした。
―お取り組みの中でどこに苦労されましたか
何氏:元々はテレビCMのクリエイティブしかなかったので、それをそのままウェブ上で使用しても、うまく目標達成に繋がらないこともありました。そこからは素材の尺の変更や冒頭にロゴを入れるなど、細かな部分での調整に時間を割きました。また、各媒体で視聴率やユーザーの視聴態度も異なります。YouTubeのユーザーはやはりコンテンツの視聴を求めているので、そこに広告が出ると邪魔に感じてスキップするユーザーも多いと思います。一方でTwitterは、他の人のつぶやきに広告が違和感なく入り込んでいることも多いと思います。そういったことを踏まえながら、各メディアの特性を掴んで、邪魔にならないプロモーションを考えることにも時間を割きました。
前川氏:そもそも本プロジェクト自体が非常に先進的な取り組みであり、成功事例が少ない中でそこの部分をどう作っていくかは大きなチャレンジでした。それでもアイフル様の役員の方から「失敗してもいいからチャレンジをして、そこから学ぼう」というお話をいただきながら、トライ&エラーを繰り返していきました。
複数データの連携でKGI達成への道筋を探す
―調査会社のリサーチデータなども活用しながら、配信方法を考えたとのことですが
阿部氏:調査会社の計測には信頼を置いているのですが、プラットフォーマー側の仕様の変更で計測ができない項目が出てきたので、その点はセプテーニさんもかなり苦労しているようでした。その上で、代替手段で計測をすることで数値を見てきたのですが、様々な媒体とクリエイティブがある中で、クロスでどれが最適かという答えを出すのは一筋縄ではいきませんでした。ただ、セプテーニさんのおかげで各メディアでの色々なリーチの重なりや非重複リーチなどのデータを明らかにしてもらえたので、「こことここの組み合わせだとよりリフトする」といった判断がしやすかったです。
―データの分析後は、具体的にどのようなアクションをとっていったのでしょうか
渡部氏:そもそもメディアごとに消費者の期待は全く異なっているという考え方もあるので、各メディアについてしっかりと独自の指標設計を作らなくてはならないという結論に至りました。例えばTwitterだと「ユーザー間の会話の醸成や話題創出」がメディアの強みであり特徴であると考えています。そこでどのようにアイフル様のShare of VoiceをTwitter上で上げていくかといった指標をプラットフォーマーと連携しつつ、いかにブランドの接触面積、専有面積を増やしていくかを分析したことは評価できるポイントだと思います。
阿部氏:取り組みから2年経ちますが、おかげさまで当初目標としていた第一想起率の向上を達成し、あわせて申込数も業界1位を取ることができ、成果を出すことができました。
渡部氏:第一想起を上げていくには非常に多くの変数が関係しており、私たちも一概に正解を見つけられているとは思っていません。そういう意味ではメディアやプラットフォーマーとの会話の中で、彼らしか持ち得ない1st Party Dataと私たちが実際に取得した市場調査のデータを絡めながら、どのプラットフォームのどの指標を上げていくと第一想起に至るか仮説を持って運用していくことが非常に重要だと思います。
ブランドマネジメントにはマスとデジタルの協業が不可欠
―クライアントをサポートする際の、電通×セプテーニグループとしての強みはどこでしょうか
前川氏:電通は国内トップの広告会社であり、人的リソースを含めアセットが非常に充実しています。そこの幅広い選択肢からお客様に合わせて、より良い提案ができるのは大きな強みだと思っています。また、マスとデジタルの代理店が分かれていると、2社間で議論が進まないこともあるかと思います。そこでのコミュニケーションがスムーズに図れるというのは、電通×セプテーニグループの強いメリットだと捉えています。
渡部氏:第一想起の向上というブランド活動においては、競合他社も含めた市場全体を俯瞰して、マクロな目線で戦略を立てていくことが大前提になります。そういったプロモーション全体を理解した上で、デジタルに特化した施策実行まで繋げられるというのが協業ならではの良さだと思っています。ブランドマネジメントからデジタルプロモーションまで、一貫性を持たせた施策ができることが一番大きな強みです。
―今後、取り組んでいきたい領域についてお聞かせください
阿部氏:引き続きKGIに第一想起率を置いているので、やはりこの部分は圧倒的な1位を作りたいと思っています。また、集客はナンバーワンになったものの、実際に契約されて利用される方の人数に関しては、業界の中でまだ盤石なポジションを築いているわけではないので、そこを固めていくことが大きな目標です。加えて、質にも注目しながらLTVの高い取引の比率も増やしていきたいです。
何氏:メディアごとにどのような配信方法が第一想起に繋がるかはリサーチデータで測っていますが、これからはサイト来訪率やコンバージョンなど大きな枠で見ていかなければいけないと思っています。第一想起を上げる目的は、最終的には申し込みに繋げることなので、その部分の丁寧な分析は必須になります。どのような配信の組み合わせで、どうスケールしていくかを効率的に検証できるようにしていきたいです。
渡部氏:第一想起から集客、申込までを定量評価していくことが重要です。現在、マスとデジタルを横断したデータのダッシュボードの開発も行っているので、投資対効果の可視化と精度向上に取り組んでいきたいと思っています。
前川氏:この2年間で、媒体単位での方向性は見えてきています。また、当初想定していた結果も出すことができましたが、それらが全て当社だけの力かというとおそらくそうではなく、様々な外部要因が積み重なった結果だと思っています。Google Analyticsなどを含めた計測環境もようやく整えることができているので、ここからは、どうすれば第一想起が上がる運用ができ、申し込みに跳ね返ってくるのかなど、より細かな部分を紐解いていくことにチャレンジしていきます。
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ABOUT 渡辺 龍
ExchangeWireJAPAN 編集担当
立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。
その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。