事業領域を拡大し新たな市場を切り開く―ノバセル田部社長が語るマーケティングの民主化とは [インタビュー]
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on 2022年5月18日 inラクスルのグループ会社であるノバセル株式会社は3つの新規事業を発表した。本事業発表会に合わせ、田部正樹 代表取締役社長(ラクスル株式会社取締役CMO)にノバセルの歩みと3つの新規事業の狙いや今後の展望について話を聞いた。
※ 事業発表会の内容は下記のリンクよりご確認ください。
ExchangeWire/ノバセルが3つの新サービスを提案―マーケティング業界が抱える課題を解決(URL)
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)
事業会社目線のサービスを提供
―自己紹介をお願いします。
2014年にラクスルに入社して以降はマーケティングの責任者を担当しており、現職はラクスルの取締役CMOと2022年2月に立ち上がったノバセルの代表取締役社長を兼務しています。
ラクスルはネット印刷・集客支援のプラットフォームを展開しています。ラクスルという事業会社で事業を成長させるために実施してきたテレビCMのマーケティングのノウハウをそのまま私のほうでサービス化をしたのがノバセルになります。
―ノバセルで展開している運用型テレビCM市場がここまで成長を遂げた理由はどこにあるのでしょうか。
大きくは2つですが、1つ目はノバセルが事業会社目線のサービスを提供していることです。
広告業界は広告代理店の方々が牽引してきましたが、その結果、広告代理店の論理に基づいて広告も掲出されていました。しかし、我々の発想は逆で、事業会社の論理=本当に欲しいものとして「広告投資がいかにしてビジネスにインパクトを与えてくれるか」を追求するためにサービスを展開してきました。
事業会社発で広告業をおこなうのは非常にユニークな立ち位置でもありますが、投資回収を正しく行うことへフォーカスをした運用型テレビCMのサービスを提供することにより、同じような事業会社にこのサービスを認めていただいたのではないかと考えています。
2つ目は、インターネット化が進んで運用型テレビCMの市場ニーズが高まってきたことにあります。
従来のテレビCMは、コンビニやドラッグストアで商品を購入する際に、自社の商品が想起をされることを目的に流されていました。要は、頭への刷り込み(リアルでの購買行動)がCMの効能だったのです。
しかし、インターネットが世の中に浸透し、インターネットビジネスを行う会社の比率が増えていった結果、CMを見た瞬間にスマートフォンで検索が一般的にもなされるようにもなりました。そのため、必ずしもリアルでの購買行動がテレビCMのゴールとは限らない状況になり、インターネット広告と同じ指標で結果が数値化したり、広告運用したりすることへの需要が高まってきました。
これらの理由により、ノバセルの事業としても、運用型テレビCMの市場としても、成長をすることができたと考えています。
―2021年度、ノバセルではどのようなアップデートをおこなってきましたか。
ノバセルの分析ツール「ノバセルアナリティクス」で示しているサイト流入結果の分析などの指標を市場に受け入れていただいたのは非常に大きいですが、機能のアップデート、というよりは、ツールの精度を磨き続けてきたことに尽きるかと思います。
また、本ツールを活用することにより様々なユースケースも出てきました。例えば、我々のアナリティクスを使えば、クリエイティブが異なる数十本のテレビCMを一気に流しても、どのクリエイティブが優れていたかが分かり、デジタルマーケティングのようにテレビCMを使いこなすことができます。
ノバセルについては今後もアナリティクスの精度を上げながらユースケースをキャッチアップし、効果の出た事例を共有・広めていくことを中心に進めていこうと考えています。
“指名検索数”が指標として有用であることを周知
―「ノバセルトレンド」では指名検索数をCMの効果指標にしています。指名検索数がCMの効果指標として有用である、ということもサービスの周知と合わせて今後は必要になるかと想像するのですが、どのように考えているでしょうか。
指名検索数をあげることがビジネスにとって有用だというデータは揃っている一方で、まだそこに気付いていない企業は非常に多いです。まさにこの周知を進め、市場を活性化していくことがノバセルトレンドのリリース理由の一つになっています。
自社だけでなく他社競合も含めたテレビCM後の指名検索数の検証をしようとすると非常に大変ですが、今回リリースをしたノバセルトレンドを活用することにより、世の中のCMが指名検索数を通じて、どれだけ効果があったのかが分かります。
それが分かったうえでどうするのかというと、どのクリエイティブが良かったか、どの番組が当たったかということが分かるので、テレビCMの運用レベルを1段上げることができます。
これはデジタルの運用型広告では日常的に行われていることではありますが、そのノウハウ・やり方をテレビCMでも同じようにやっていただくことで、マーケティングに生かしていただければと思います。
その結果、ノバセルトレンドが市場に受入れられて活用が伸びれば伸びるほど「テレビCMの効果指標として指名検索数は重要だよね」と広告主の方々にも気付いていただけると思います。
運用型テレビCM市場が立ち上がった際にも、ノバセル(ラクスル)では市場への活性化に取り組んできましたが、今回はこのノバセルトレンドを通じて、同じようにチャレンジをしていきたいと考えています。
スピード感・クイック性をシステムで作り上げる
―「ノビシロ」では「数万円から、最短20分で100人の声を集める」と示されていますが、このスピード感を実現できた理由はどこにあるのでしょうか。
クライアントの調査設計(対象・質問内容など)に基づきながら、リアルタイムにモニターおよび回答を集めるスピード感・クイック性をシステムによって作り上げたことにあります。
我々が提供しているサービスは、いずれも人が時間をかける労働集約型の作業を、インターネットやテクノロジーに置き換えることで、自動化や高速化を行っています。例えば、ノバセルアナリティクスの効果測定も、従来は人が時間をかけながら実行していた作業を自動にしました、というものです。
―ノビシロと相性の良い調査はどのようなものを想定していますか。
スピード感が求められるもの、例えば会議中にAなのかBなのか悩んでいて、結果がすぐ欲しい際には使っていただきやすいと思います。
そのほかにも、広告バナーのクリエイティブのAとB、どちらが刺さるのだろうかなど「数十万の予算をかけて外部企業に依頼をして聞くほどではないが、安価ですぐ結果が出るならば本当はアンケートを取って決めたい」というケースは多々あるかと思います。
リスクを最小化する成果報酬型のマーケティングプラン
―「クロスコミット」は成果報酬型のマーケティングプランとなっていますが、本サービスを提供する狙いは。
広告業界は基本的に、広告の効果が出ても出なくても支払い費用は一緒です。そのため、テレビCMに興味はありながらも、効果が出るか分からないので広告出稿に踏み切れない企業は非常に多いと思います。
「効果が出なかった時のリスクを最小化したい」もしくは「広告の効果と広告費用が連動するならば広告を出したい」と考えている企業はたくさんいて、その課題を解決するためのプランがこのクロスコミットになります。
また、マーケターとして自身で動くことに自信が無い、可視化をするまで手が回らない、という方にも本サービスをお使いいただけると考えています。
戦略立案を起点にマーケティングの民主化を進める
―今回の3つの新事業により、ノバセルとして新たに戦略立案・リサーチおよびWEB広告に事業領域を拡大されました。今後の展望についても改めてお聞かせください。
まずは今回新たに拡大をした、戦略立案・リサーチおよびWEB広告について、着実に取り組んでいくことが最重要だと捉えています。特に戦略立案・リサーチはテレビであってもウェブであっても、マーケティングのスタート地点になる重要なセクションだと考えています。
企業のマーケティング担当者が自身で戦略立案をしたり、戦略立案のためのリサーチが出来るような環境を整えることで、ノバセルが掲げるマーケティングの民主化を推し進めたいと思います。
―ノバセルではテレビCM・WEB広告に取り組んでいますが、更に別の広告領域に取り組んでいくビジョンはあるのでしょうか。
我々の主語は動画広告です。JR東日本の「トレインチャンネル」を販売した事例もありますし、タクシーサイネージの取り扱いも広告代理店の立場でしています。
そういった文脈も含めて、動画を使ったデジタルサイネージや、TVerに代表されるコネクテッドTV向けの動画広告には引き続き注目をしております。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。