コロナ禍の2年で売上、広告予算、ツールはどう変化した?『マーケティング最新動向調査2022』より
MarkeZine編集部[著]
MarkeZineでは2022年1月に『マーケティング最新動向調査 2022』を刊行しました。今回はその中から、コロナ禍の2年で各販売チャネルの売上、広告予算、マーケティングなどがどのように変化したのかを示すデータをご紹介します。
※本記事は、翔泳社2022年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』74号からの転載記事です。
本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2022』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。
コロナ禍で売上が減った企業と増えた企業
世界中がコロナ禍に見舞われて2年が経ち、企業の業績にはっきりとその影響と対策の成果が見られるようになった。多くの企業がマイナスの影響を受けている一方で、プラスに転じている企業も少なくない。その差は一体どこにあり、これから成長を目指すにはどうすればいいのか。
MarkeZineではデジタルインファクトと協力し、企業のマーケティングに従事・関与する1,000名以上を対象にリサーチ(Webアンケート)を実施。その結果を『マーケティング最新動向調査2022』にまとめて刊行した。
今回は本調査から、コロナ禍の2年で各販売チャネルの売上、広告予算、マーケティング施策、ツールがどのように変化したのかを示すデータを紹介する。
回答者の年代は20代が14.6%、30代が24.7%、40代が33.4%、50代以上が27.4%となっている。また、業種は「情報・通信」が31.9%と突出しており、「広告」の10.1%、「流通・小売」の6.2%が続く。その他の業種は数%程度。そのうち広告主が52.3%となっており、広告会社やベンダー、媒体社、マーケティング支援会社と合わせてほぼ半々である。BtoBは65.2%、BtoC(BtoBtoC、CtoCを含む)は34.8%だった。
回答者の役職は「マネジメントクラス」(6.7%)、「ディレクタークラス」(3.7%)、「マネージャークラス」(31.0%)、「リーダークラス」(22.4%)で合計63.8%。「一般社員」は29.8%であることから、社内で施策やツール導入の決定権限を持つと考えられる層が過半数を占めている。
販売チャネル別の売上の変化
最初に紹介するのは「売上の変化(チャネル別/昨年比)」である。2020年と比べて2021年の売上がどのように変化したのかをチャネル別に尋ねた。
「増えた」という回答が最も多かったのは「自社ECサイト」で19.4%。「直接営業」が15.0%、「ECマーケットプレイス(他社が運営するショッピングモール)」が13.6%となった。
広告予算はどう変化したか
次に、広告予算の変化(オンライン<デジタル>/昨年比)を見ていこう。
昨年と比べて予算が増えたオンライン広告で最も回答が多かったのは「検索連動型広告」の31.5%となった。「動画広告」の24.8%、「ディスプレイ(静止画バナー)広告」の24.3%、「インフィード広告」の20.4%が続く。
「減った」という回答は「ディスプレイ(静止画バナー)広告」の7.4%が最多だったが、どの広告も「減った」の割合は「増えた」に比べて小さく、「変わらない」という回答と合わせて、オンライン広告を積極的に減らそうとする動きは見られない。
しかし、昨年刊行した『マーケティング最新動向調査2021』(回答者には2020年の現状を質問した)と比較すると、1年で予算が「減った」という回答が全体で約1%増加している。特に「アフィリエイト広告」は2.0%、「検索連動型広告」が1.8%と増加割合が大きい。コロナ禍2年目となり、1年目の状況を受けて広告予算の見直しが進んだと考えられる。
マーケティング施策とツールの予算の変化
広告予算の変化とともに、自社のサイトやアプリ、ECサイトに関するマーケティング施策とツールの予算についても紹介する。こちらも2020年と比べて2021年にどう変化したかを質問している。
「増えた」という回答が最も多かったのは「コンテンツマーケティング(情報メディア、ブログなどによる情報発信)」の34.6%。「動画コンテンツ配信」の28.0%、「アクセス解析・効果測定」の24.9%が続く。「SEO」「メール配信・プッシュ通知」「Web接客・チャット」も20%を超えており、予算注力の度合いがうかがえる。
「減った」という回答については、最も多かったもので「SEO」の4.2%だった。他の施策も2~3%台で、大きな減少傾向は見られない。
しかし、実施しているか否かに着目すると、「ライブ配信・ライブコマース」では「実施していない」の回答が49.3%なのに対し、「アクセス解析・効果測定」が16.6%とかなりの開きがある。他、「増えた」「変わらない」「減った」という回答を合わせて「実施している」と捉えると、「実施している」が50%を割っている施策が「アクセス解析・効果測定」に加えて「レコメンドエンジン」「Web接客・チャット」「ライブ配信・ライブコマース」となる。
昨年の調査と比較すると、実は「変わらない」という回答が全項目で増えており、「増えた」という回答が全項目で減っている。コロナ禍でのデジタルマーケティングについてはある程度方向性が見えたということかもしれない。だが、各施策ともに国内での普及にはまだまだ伸び代があると見ることもできる。
ソーシャルメディア施策の変化
今や不可欠となったソーシャルメディアに絞った施策についても見ていきたい。
予算が「増えた」という回答が最も多かったのは「SNSのアカウント開設・運用」の28.0%で、「インフィード広告(タイムラインに表示される広告)」の17.3%、「インフルエンサー/アンバサダー/ファンマーケティング」の14.1%が続いた。
「減った」という回答はいずれも2〜3%台で目立たないが、昨年と比べると「減った」が増加傾向にあり、「増えた」も全体を通して減少している。
実施状況を見ると、「SNSのアカウント開設・運用」と「ソーシャルリスニング分析」を除くとどの施策も40%に至っていない。予算の増減も加味すれば、アカウント運用はしていても、より積極的なソーシャルメディア施策にまでは踏み込めていないようだ。
TikTokとTwitterの利用目的
最後に、近年マーケティングにおいて注目度の高いTikTokと、もはや企業インフラのような必須ツールとも言えるTwitterをどのような目的で利用しているかを尋ねた結果を紹介する。
TikTokは2021年に最も話題を集めたSNSの1つで、ショート動画の隆盛とともに今後ますます多くの利用が想定される。現状では先駆的な取り組みが中心で、目的別の利用率は「ソーシャルリスニング」(4.0%)や「潜在顧客に対する製品・サービスの認知拡大、理解、関心、購買意欲の促進」(3.7%)、「新規リードの獲得」(3.1%)が相対的に高くなっている。
傾向としてはFacebookやInstagramと酷似しており、企業での利用が進めばこうしたSNSと同様の目的で成果を期待できるのではないだろうか。
Twitterについては、「ソーシャルリスニング」(36.0%)や「潜在顧客に対する製品・サービスの認知拡大、理解、関心、購買意欲の促進」(33.6%)、「製品・サービスの販売促進」(27.8%)などを目的とする利用率が相対的に高い。
「既存顧客へのアフターサポート」(10.7%)、「既存顧客へのアップセル・クロスセルの提案」(13.1%)、「顧客とのone to oneコミュニケーションの促進」(17.3%)といった目的での利用は相対的に低い。
既存顧客に寄り添ったコミュニケーションよりも、ユーザーへの認知拡大や新規顧客の獲得を目的として利用されていることがわかる。また、FacebookやInstagramと比べると「ソーシャルリスニング」を目的とする利用が多い。
ここまで、『マーケティング最新動向調査2022』をもとに回答結果の一部を概観してきた。コロナ禍のマーケティングについて、その実態を少しでもクリアにしていただけたなら幸いである。
本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2022』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。