最速のリーチ×最適なエクスペリエンスを提供―Twitterが目指す広告プラットフォームの進化 [インタビュー]
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on 2022年1月28日 inTwitterは2021年、15秒の動画広告配信の最適化モデルの正式導入など、動画広告の様々なアップデートを実施した。また、ライブコマース環境の整備やクリエイターの支援など、ユーザー向けのアップデートも同時に進めている。2022年のTwitterの取り組みと今後の展望について、同社のTwitter Japan執行役員 広告事業本部長の松山歩氏に話を聞いた。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)
アッパーファネルのコミュニケーションの重要性が再認識されている
―2021年、Twitterを取り巻く状況はどのように変化しましたか。
コロナ禍が続くなか、いち早く最新情報を取得したいという利用者ニーズが高まっています。その表れとして、利用者がTwitterに訪れる頻度は増加傾向にあり、ユーザー数も増え続けています。
このような背景もあり、注目が一層集まっているTwitterというプラットフォームで、企業やブランドが新商品のローンチや新CM公開を含め、各広告を出していくのは自然な流れになっています。そのなかでもVOD、eコミックス、ゲーム、パソコンなどのテック商材、といった在宅需要を支えるサービスや製品の広告主からの広告出稿が増加しました。
また、プライバシーに関する意識の高まりを受けて、コンバージョンの計測環境に大きな変化があったのも大きなトピックとなります。計測環境の変化はまだ移行期間の最中だと思っていますが、アッパーファネルのコミュニケーションなどの不変な価値に対して、広告主の需要がこの変化のなかで回帰していると感じます。
例えば、Twitterにおいては、アッパーファネルに対してのリーチ規模が大きい、ということに広告訴求の価値を感じている広告主が増えてきています。これはインストールをコンバージョンポイントにしている広告主においても同様で、ローンチやバージョンアップデートの際にはTwitterで広く認知を取ることに需要が集まっています。
―IDFAの影響で各アプリプラットフォームが苦戦を強いられていますが、Twitterが売り上げを伸ばせている理由をどのように分析していますか。
先ほどのお話にも通じますが、計測環境への大きな変化があった一方で、Twitterにおけるアッパーファネルへのソリューションデマンドは堅調で、むしろ強くなってきたと感じます。
Twitterでは従来から認知や話題化のようなアッパーファネルにおける広告訴求の価値を広告主にご評価いただいていますが、これはアッパーファネルの認知が多く取れていれば、ミドル/ロウワーファネルにおけるエンゲージメント、ユーザーアクションの量もある程度は比例して増えているだろうという考え方もしていただいているからです。
もう1つ副次的な理由としては、Twitterがアップルの提唱するSKAdNetworkへの準拠をしてきたことも挙げられます。独自のコンバージョンAPIを推進するようなプラットフォームもありましたが、一部の広告主では、SKAdNetworkに準拠したものを正のデータとして見始めており、このデータを元にPDCAを回せるクライアントも出てきています。
15秒再生の最適化モデルをスタート
―動画広告ではどのようなアップデートを行いましたか。
動画広告においては、動画コンテンツを長時間視聴する可能性の高いユーザーを特定して広告配信の最適化を行う、15秒再生の最適化モデル「15s view」を正式導入しましたが、この課金モデルへの移行が非常に進んでおり、視聴完了単価の大きな改善が確認できたキャンペーンが増えています。Twitterでは数秒の短尺動画しか見られない、とも言われてきましたが、15秒再生の最適化モデルを使っていただくことにより、15秒の長尺動画であってもしっかりと見ていただくことができています。
もう一つは「タイムラインテイクオーバー」という、Twitterのタイムラインの一番上に出てくる1日単位の独占型広告パッケージについても、昨年にスペックを改善してインプレッションを1日3,000万インプまで出せるように増やしました。
また、トレンドラインの一番上を独占する「トレンドテイクオーバー」もタイムラインテイクオーバーと同じく、リザーブド(純広告)で販売していますが、こちらもプレミアムな広告枠として大変好評をいただいています。
Twitterが新たなビジネスプラットフォームに
―近年のSNSは購買行動の場にも使われていますが、Twitterではどのような取り組みをしていますか。
昨年のブラックフライデーに合わせて、Twitterでもライブコマース機能のテストを行いましたが、配信から購入サイトに誘導していくためのインタラクティブ性や購入への導線設計については、今後より強化をしていきます。
合わせて、Twitterのプロフィール上に地図や商品画像(カルーセル広告)を置くことが出来る「ショッピングモジュール」の機能も数社のユーザーを対象にテストしております。これはTwitterが企業ホームページの代わりとして、ビジネスプラットフォームに進化することを狙いとしています。
現在はいずれもアメリカでの取り組みとなり、日本での実装はまだ先となりますが、近い将来、日本のユーザーにも実装されていくでしょう。
クリエイター支援を通じた3つの新規機能
―ライブコマースを演じるのはクリエイター(インフルエンサー)の方だと推察しますが、クリエイターの方々への支援も合わせて行っていくのでしょうか。
クリエイターエコノミーの推進はTwitterにおける非常に大きな柱の一つですね。昨年は3つほど新しい機能をテストおよびリリースしました。
「チップ」は自分が応援するアーティストやクリエイターのアカウントに対して、チップ=投げ銭を行える機能になります。また、「スーパーフォロー」は、有料会員のような形で、月額固定のサブスクリプション費用をアカウントのオーナーに支払ったフォロワーだけが、当該オーナーのプレミアムなコンテンツや動画を視聴できるサービスになっています。
これらの機能は海外のアカウントで設定をすることが出来ますが、日本のユーザーも彼らに対してチップを渡したり、サブスクリプション費用を支払ったりすることでプレミアムなコンテンツを視聴することが出来ます。
また、クリエイター以外も対象としたサービスにはなりますが、プロフェッショナルユーザー/ヘビーユーザーを対象とした「Twitter Blue」もテストを開始しています。従来のTwitterでは一度投稿したツイートは消すことしかできませんが、本機能を契約することで、ツイートの編集が出来たり、新たなアナリティクス機能の追加が出来たりなど、Twitter上でプレミアムな体験をすることが可能となります。
―チップとスーパーフォローはクリエイターにお金が支払われて、Twitter BlueはTwitterにお金が支払われる、という理解でよろしいでしょうか。
その通りですが、現状はチップとスーパーフォローはTwitterで手数料も一切取らず、クリエイターに全てのお金が渡る形にしています。
本サービスに対しては、収益をあげることを目的としておりません。我々は本サービスを通じたユーザー間のインセンティブの受け渡しによって、Twitter上での良質なコンテンツや会話が生まれることを目指しています。
今後もTwitterではクリエイター支援を通じて、プレミアムなコンテンツを作ってもらうための機能を整備していきます。
モバイルシフトが進む動画広告市場
―今後、動画広告市場はどのように変化していくのでしょうか。
デジタルシフトは加速していくと思っていますが、厳密にはデジタルシフトではなく、モバイルシフトが加速度的に増えていくと考えています。
特にアッパーファネルのコミュニケーションが次々とモバイルに移ってきて、今年はデジタル(PC・タブレット・スマートフォン)の広告費が、4マスをはるかに超える状況になるのではないでしょうか。
この前提で「広告主がTwitterに求めているのは何だろう」と考えていくと、Twitterは良質な認知形成や会話が可能な場所である必要があります。アッパーファネルのコミュニケーションでは、リーチ×エクスペリエンスが非常に大事で、この掛け算の結果がブランドリフトに繋がると思います。
Twitterはユーザーが多く、リーチスピードについては最も早いという評価を外部の調査期間からもいただいていますが、大事なのはエクスペリエンスです。JIAAの調査(URL)によると、ユーザーが持つ広告フォーマットへの嫌悪感も示唆されていますが、エクスペリエンスを改善していかなければ、出せばだすだけ嫌悪感が増えてしまう広告もたくさんあるのではないでしょうか。
―これらの課題に対し、Twitterではどのように対応していくのでしょうか。
タイムラインテイクオーバーやトレンドテイクオーバープラスについては、リーチを最大化したうえで、広告表示を3回までとフリークエンシーコントロールをかけています。また、タイムライン上に掲載される広告もPR表記をし、ユーザーエクスペリエンスを害することがなく掲載をしているので、その点では今の環境下に適しているのではないかと思います。
今後、各プラットフォームで広告プラットフォームがどのように進化していくかは、私も注目をしているところですが、Twitterではリーチ×エクスペリエンスのマーケットで戦うにあたって、最速のリーチ×最適なエクスペリエンスをしっかり提供していきたいと思います。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。