広告品質のダイヤモンドを目指して-Yahoo! JAPAN 2021年度上半期「広告サービス品質に関する透明性レポート」について聞く[インタビュー]
ヤフーは、昨年の12月に広告サービス品質向上のための審査実績をまとめた2021年度上半期(2021年4月1日~9月30日)の「広告サービス品質に関する透明性レポート」を公開した。2021年度上半期は約5,700万件の広告素材を非承認にしたという。
この取り組みは2019年度より開始されており、今回で4回目となる。今回の結果のポイントについて、ヤフー株式会社メディア統括本部 トラスト&セーフティ本部 ポリシー室長中村 茜氏に解説いただいた。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)
広告アカウントの非承認件数は、半年で4,200件超
アカウント審査についての透明性を高めるために、従来よりも詳細な結果を公表することにいたしました。Yahoo! JAPANでは、広告主様がアカウントを開設いただく際、まずは広告主様に対する審査をしております。アカウント審査は、いわゆる広告主様の業態考査のようなものになります。過去に不正のあった方が改めて広告出稿をするためにアカウント開設を試みないかというような、確認等をおこなっております。
出典:ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」
Yahoo! JAPANでは、アカウント審査の承認を経て広告掲載を開始したあと、大量に悪質な広告を入稿してきたり、審査をすり抜けるような不正行為が発覚した場合、重大な違反をした場合には、広告単位での停止にとどまらず広告のアカウント単位で停止をしております。
重大な違反とは、例えば第三者の目から見ても明らかに虚偽広告と思われるものを出稿した場合などで、「このサイトを閉じたら二度と開けません」であったり「あなただけ当選しました、割引価格でご提供します」というようなメッセージが何度も出てくるようなものが挙げられます。
一部の広告主様においては、このような広告がユーザーを欺く不適切なものであると認識していないようにも見受けられ、啓発が必要であると考えております。
2021年4月―9月期の広告アカウント非承認件数の合計は4,202件で内訳をみると、アカウント停止措置は、申込時が約1,600件、掲載開始後についても2,500件ほどありまして、掲載を一度開始したあとにこういった行為が見られて停止させていただくということも、かなりの件数あります。こちらがまずアカウントの審査になります。
広告審査の非承認対象、多いのは広告表記と最上級・No1表示
アカウント審査の承認後、広告を入稿いただいた後には広告審査を実施します。当社では広告掲載基準を設けており、これを基準として法令違反はもとより、ユーザーに不快感や不安感を与えるようなものなど、私たちのアドネットワークに配信することがふさわしくないと判断した広告の掲載をお断りしております。
Yahoo! JAPAN の広告掲載基準は、常に見直しを図っており、直近では2022年1月13日に新基準の適用を予定しております。大きな変更点として一例をあげると、変更後は政党による行動ターゲティングの利用を禁止することとなりました。
広告の審査業務は、人と、システムを併用して24時間365日行っております。この審査の内容や件数は以下の通りです。
出典:ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」(2021年12月リリース版)
2020年度の下半期には約5,700万件の広告の素材の出稿をお断りしました。今回のレポートの対象期間である2021年度の上半期も同等程度の約5,700万件の広告の素材を非承認といたしました。ここで定義する5,700万件は、違反が認められた素材を全てカウントしており、例えば広告バナーに違反表現があり、サイトにも違反表現があった場合、2件とカウントしております。
また、非承認されたもののなかには1度非承認となり、修正して再度入稿したのちに抵触箇所が修正されておらず非承認となることもありますが、入稿されるごとにカウントしております。
広告の審査は、掲載前と掲載後の両方行っております。掲載後、掲載が終了するまでの間にサイトの内容が変わることもありますので、常にチェックを行っています。
続いて、より詳細がこちらです。
出典:ヤフー「広告サービス品質に関する透明性レポート」(2021年12月リリース版)
AとBと書かれているところは、ほぼ定常的に多くの非承認件数となります。Aのとおり、化粧品や薬用化粧品において、いわゆる薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に抵触するような表現が引き続き多い傾向となりました。Bに書かれているところが最上級表示で、いわゆるナンバーワン表現を活用したものですが非承認件数が次に多い状況です。
最上級表示については、ユーザーの皆様に事実を正しくお伝えできるよう、広告主様に対して何年何月、どこの第三者機関で調べたのかというような根拠の出典を記載いただくルールを設けています。広告タイトルにおいて、このような表示がないケースが特に目立っており、最上級表示に関する非承認理由の内訳としては第1位となっています。
また、今回ユーザーに不快感を与えるような表現が、特に動画広告に顕著に見られました。上図のGの部分がこれに該当します。動画広告で、ゲームや電子書籍などのエンターテイメント系の広告を数多くご出稿いただいておりますが、なかにはユーザーに恐怖感を与えてしまうような表現や性的表現が含まれるものなど、ユーザーが不快に感じてしまうのではないかというような表現というのが多く見られました。
これらのなかで、いわゆる法律に抵触するものの多くは、A、B、E、Iなどに含まれます。ただし、例えばBの最上級表現などが該当しますが、ユーザー保護の観点でYahoo! JAPAN 独自で、法令よりも厳しい基準を設けて審査しているケースもあります。したがって、A、B、E、Iを理由として掲載をお断りしたものが、必ずしも法律に抵触していたものということではありません。
最後は、新型コロナウイルス関連のトピックスです。2020年度の上半期・下半期、そして今期(2021年度上半期)において、広告タイトルや説明文において「コロナ」の訴求をしているもののうち非承認とした件数を報告しております。
新型コロナウイルスの感染状況の変化とともに、基準に抵触するような不適切な広告は減少傾向がみられました。
悪質な広告を排除し、デジタル広告業界が今後健全な発展をしていくためにも「広告業界の方に一人でも多くこのレポートに目を通していただきたい。」という同社は、今後も内容を精査しながら、半期に一度同様のレポートを公表していくとのことだ。
レポートはこちらからダウンロードすることが出来る。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。