【CARTA HD調査】2021年のデジタルサイネージ広告市場規模は594億円の見通し、2025年には1,083億円と予測
株式会社CARTA HOLDINGSは、デジタルサイネージ広告市場に関する調査結果を公表した。2019年、2020年に続いて3回目の調査となる。
【デジタルサイネージ広告市場規模推計・予測2020年-2025年】
出典:同社プレスリリース
新型コロナウイルス感染拡大防止策などに伴うデジタルサイネージ広告市場の低迷は2020年で底を打ち、2021年は回復基調にあるものの、コロナ禍以前となる2019年時の市場規模までには達していない。需要増に貢献することが期待された東京五輪は多くの競技で無観客開催となったために、その影響は限定的なものに留まった。
一方で配信面は充実と拡大の一途を辿っている。鉄道の主要駅に設置された特大サイズの媒体が通勤客の関心を引き、美容院、スーパーマーケット、エレベーターといった屋内空間ではデジタルサイネージを目にする機会が急激に増えた。さらにはタクシーの車窓や喫煙所といった新たなスペースへの取り付けも進められている。経済動向と連動した広告需要の回復を受け止める基盤の整備は着実に進捗しており、今後の市場成長が見込まれる。
2021年のデジタルサイネージ広告市場規模は594億円の見通し(前年比114%)。尚、配信面が拡大し、効果測定に関する課題が解決すれば、これまでデジタルサイネージ広告の出稿実績がなかった広告主からの需要を取り込むことができると期待されている。今後数年間はたとえ人流が2019年時の規模にまで回復することはなくとも、こうした新たな広告需要を吸収していくことで、2025年のデジタルサイネージ広告市場規模は2021年比約2倍の1,083億円規模に達すると予測している。
以下、各セグメント別の動向となる。
■交通
鉄道車両や駅施設、タクシー、バス、空港、航空機などが含まれる。新型コロナウイルス感染症拡大抑止を目的とした緊急事態宣言の発令などを受けて、人流の減少を理由とする広告効果の減少や世間からの反発に懸念を抱いた広告主が出稿を控える傾向が続いた。
その中で、タクシー広告への出稿は際立って速いペースで回復。経営層向けのターゲティングメディアとして確立したことに加えて、媒体の新規取付けも継続している最中にあり、更なる市場の成長が見込まれる。
出典:同社プレスリリース
■商業施設・店舗
スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア・薬局をはじめとする小売店やショッピングモール、美容室、飲食店などが含まれる。いずれも媒体の新規取り付けが積極的に行われているため、今後は広告配信面の拡大に伴う急激な市場成長が見込まれる。
とりわけスーパーマーケットの食品エリアでは小型のデジタルサイネージ端末を目にする機会が増えた。コロナ禍でも人流の減少が限定的であり、感染状況に左右されにくいという特徴がある。
現在は小売店を通して自社製品を販売する食品・飲料メーカーなどの販促費からの広告出稿などに支えられてるが、配信面数が一定規模に達すれば、マス広告向けの広告宣伝費の対象となり、飛躍的な成長を遂げることが期待される。
【デジタルサイネージ広告市場規模推計・予測(商業施設・店舗)2020年-2025年】
出典:同社プレスリリース
■屋外
外出自粛措置と関連して夜間の放映が制限されるなどした結果、コロナ禍の影響を大きく受けた。一方で若者向けのターゲティングメディアとしての評価を確立した渋谷駅周辺のデジタルサイネージ端末への出稿は好調を維持している。
デジタルサイネージ端末一つ当たりの広告視聴者が最も多くなり得るカテゴリであるがゆえに、広告効果の測定のあり方についての課題意識が強いという特徴がある。また媒体のオーナーが乱立しているため、ネットワーク化しにくいとの課題も指摘されている。目下ではメディアレップ事業者やテクノロジー事業者がこれらの課題の解決に取り組んでいる。今後も引き続き市場変革が行われていくことが予想される。
■その他
地方自治体の建物内や、商業ビル及び居住用マンションのエレベーターなどが含まれる。また日本全国に約2万4,000局を展開する郵便局でも実証実験が行われている。ただ現時点では行政サービスや住民や利用者に対する情報案内の一環として利用される傾向が強く、広告配信面として積極的に活用されるには至っていない。長期的かつ潜在的な可能性を持った市場である。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。