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モビリティサービスのOEM展開を構想―IRISの「Tokyo Prime」が目指す次なる一手[インタビュー]

IRISのタクシー・サイネージメディア「Tokyo Prime」は2016年にサービスを開始し、今年で5年を迎えた。サイネージの設置台数は全国で約52,000台(2021年10月現在)となり、これは日本最大のネットワークとなる。コロナ禍も続くなか、タクシーサイネージを取り巻く状況はどのように変化し、IRISはどのような一手を打っていくのか。IRISの現在の取り組みと今後の展望について、眞壁清太朗取締役 CTO(最高技術責任者)に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

 

 

全国12都市、52,000台のネットワークに成長

―眞壁様の自己紹介をお願いします。

私は2007年に株式会社ドワンゴに新卒で入社し、エンジニアとしてtoCサービスのシステム開発に従事しておりました。フリークアウト・ホールディングスおよびIRISには2019年から入社し、Tokyo Primeのサイネージ広告システムの開発に従事しております。

2021年9月にはIRISで取締役CTOを拝命し、システム開発の統括とプロダクトマネジメントの統括を担当しております。

 

―2021年9月時点のTokyo Primeのサービス状況についてご共有ください。

Tokyo Primeのサイネージ導入台数は現在、52,000台となっております。配信の地域は全国主要の12都市で、東京・神奈川・埼玉・千葉・名古屋・京都・大阪・神戸、広島・福岡・仙台・札幌、となっています。また、月間のリーチ数では、延べで2,600万という規模感になりました。

各地域・都市別の広告配信メニューも用意しておりますので、地方テレビ局の広告のような使い方が出来るのも、Tokyo Primeの特徴となります。

新しい広告メニューとしては、“Long Video Ads”という、長時間の乗車をされているお客様に10分程度の長尺動画を見ていただくメニューと、“シートベルト着用アナウンス”という、自社商品とタイアップしたシートベルト着用動画を掲載できる広告メニューを作りました。

こちらの具体的な事例としては、テレビ東京で放映されていたアニメ「オッドタクシー」とコラボして、シートベルト着用アナウンスを流すと共に、Long Video Adsでアニメ第1話の冒頭3分&PVの放映をしておりました。

その他には、ヴィスタコミュニケーションズ株式会社が運営・管理するタクシーシェルター(屋根付タクシー乗り場)のポスター広告とTokyo Primeのサイネージ広告をセットで販売する取り組みも行っています。

「Tokyo Prime」

 

タクシーサイネージはコロナ禍でも躍進

―2021年9月時点における、Tokyo Primeの広告出稿状況はいかがでしょうか。

2020年4月から9月の落ち込み以降急回復を見せ、2021年に入ってからは過去最高売上を更新し続けております。広告出稿が戻ってきた理由としてコロナ禍でありながら、主要設置先であるタクシー会社様が休業せずタクシーをしっかりと稼働していただいていたこともあり想定表示回数についてほぼ達成しているという点だと考えています。

広告主としては、BtoBのクライアント様が特に多く、引き続きタクシーサイネージを重要な面として見てもらっています。

BtoCのクライアント様もコロナが落ち着いてきているという情勢もあり、直近は徐々にお問い合わせや、出稿状況が以前の状況に戻りつつあります。

 

―広告の効果測定についてはどのような取り組みをしていますか。

コロナ禍以前からの取り組みにはなりますが、株式会社マクロミルの調査を通じて、広告接触者に対しての事後アンケートを取ることが可能となっております。また、通常お出ししているレポートでは、表示回数を日別・時間帯別等でレポーティングしておりますが、他のOOH媒体に比べると、表示回数のレポートをしっかりと報告出来るというところは、クライアントからもご評価いただいている点だと認識しています。

「広告効果検証オプション」

 

デジタルサイネージ市場は成長産業

―デジタルサイネージ市場は今後どのように成長していくのでしょうか。

デジタルサイネージの設置自体はコロナ禍でも次々に増えており、デジタルサイネージ市場自体は成長産業として伸びています。また、タクシーやエレベーターに代表される、限定されたターゲットに向けてデジタルサイネージを展開する余地は依然として大きく、今後も広がっていくのではないかと思います。

一方で、サイネージは交通広告が全体として苦戦している印象もあります。そのような意味では新しいサイネージが市場全体としては増えていくとは思いますが、サイネージの交通広告が大きな市場として現在はあり、ここがどのくらい回復してくるかは、市場全体の成長にもつながっていくかと思います。

 

―タクシーサイネージ市場としてはいかがでしょうか。

タクシーサイネージ市場に限れば、早くて来年の春以降にはコロナ禍前に近い市場感に戻るのではないかと踏んでいます。

一方で、タクシーサイネージの広告枠は事前販売であり、ネット広告のようにRTBで取引される枠ではありません。要は、外を移動する人=タクシー利用者が戻り、クライアントの出稿意欲も戻り、広告出稿がなされる、という流れのなかでタイムラグが非常に大きいです。そのため、緊急事態宣言の有無などで、人出が思うように戻らなければ市場の回復はもっと遅くなることを想定しています。

 

タクシーサイネージシステムのバージョンアップ

―システムのバージョンアップ後は、具体的にどのようなことができるようになるのでしょうか。

5年が経過しサイネージの台数も増える中、システムのサーバー負荷等は問題となっていませんが、新しいこと(メニュー)を行う度に、既存のシステムへの付け足しで対応をしてきたため、社内のオペレーターが触るツールの使い勝手、ひいては保守性が下がって来ていると感じています。また、今まで使用してきたシステムの制約上で試すことが出来ていないこともありました。

今後も安定したサービス運営および広告配信を担保していきたいと考えており、これらを改善するような形でシステムを整えたいと思っています。

このシステムの刷新も踏まえたうえで、エリア別にコンテンツを出し分けたり、乗客者のモーメントを据えた広告配信を行っていきたいと考えています。

また、タクシー以外のモビリティ分野にも参入し、モビリティプラットフォームとして横展開していきたと考えており、実証事業も進めています。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。