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インターネット広告自動運用ツール、Shirofuneが市場シェア9割超へ

デジタルインファクトは、Shirofuneと共同で、広告主・広告代理店(以降広告運用者)向け、インターネット広告運用自動化ツールの普及状況に関する調査を実施し、その結果を公表した。

 

■インターネット広告運用自動化ツールの定義

両社はこの調査でインターネット広告運用自動化ツールを、「運用型で提供されている検索連動型広告とディスプレイ広告を複数の媒体にまたがり予算管理・入札・レポーティングなどを統合的に管理・自動運用を行うツールと定義している。

このなかで、特定の広告プラットフォーム事業者、媒体社が提供するツール、OEMとして広告会社に提供されているツールなどを除いている。

 

■市場背景

広告運用自動化ツールは、2000年代後半から2010年代前半頃まで機械学習やAI機能を用いた検索連動型広告を中心とする運用型広告の自動入札の最適化に特化したものとして、多くの広告予算を投資する広告主向けを中心に需要が形成された。

また広告会社においても、これらのツールを全社的に導入し、その運用業務の効率化に向けて試行されてきた。だが、広告プラットフォーム側が自ら提供する機械学習やAIを活用した自動最適化機能が普及したことで、機械学習やAIを用いた主に外資系ツールベンダーが提供する自動入札ツールの多くは、機能的優位性を発揮しずらくなった。

そしてこれらのツールの多くは従量課金体系で提供をされてきたこともあり、厳しい競争環境に置かれている広告代理店のビジネスモデルとなじみにくく、広告代理店の広告運用の現場における利用は減少傾向をたどった。

その一方で、消費者と広告主とのタッチポイントが分散化するなか、多くの広告運用者はGoogleやYahoo!JAPAN、Facebook/Instagram、LINE、Twitterなどの大手広告プラットフォームを中心に、複数のチャネルをまたいだ広告運用が必要となっており、チャネルを横断した予算管理、広告配信における入札調整、レポ―ティングなどを一元的に効率よく管理することが求められるようになりり、広告運用業務領域を幅広くカバーし、かつ複数の広告チャネルを統合的に管理する機能を持つツールへの需要が高まっていった。

 

 

【インターネット広告運用自動化ツール導入アカウント数(件数)※3

2016年と2021年※4

 

1

※3:広告主が広告出稿にあたり広告プラットフォームごとに必要となるアカウント(口座)数

※4:2021年9月末時点

デジタルインファクト/Shirofune調べ

 

■市場動向・市場シェア

【インターネット広告運用自動化ツールシェア数(導入アカウント数ベース)】

 2021年9月末時点

2

デジタルインファクト/Shirofune調べ

 

2010年代後半まで需要が拡大した従量課金型で特定媒体の入札機能に特化した広告運用自動化ツールは、一部の大手クライアントや、ソリューションベンダーと強い関係性のあるクライアントの利用を中心に引き続き活用されている。また、これらのツールの中には、マーケティング統合型ソリューションのチャネルの一つとして導入されているものもある。

一方で、広告代理店のビジネスモデルや広告運用の現場の実情に沿い、広告運用業務全般を、複数の広告プラットフォームを一元的に管理することが出来るShirofuneの導入が広告主のみならず、大手広告代理店から中堅広告代理店に進んだ。

これらを背景に、2021年9月末時点のShirofuneの広告運用自動化ツール市場における市場シェアは、91.3%に達している。

 

■市場の今後

広告運用者は、従来多くの時間を割いてきた広告運用業務に掛かる手間を抑制し、より高度な取り組みや、これを支援する業務にリソースを割く流れがみられる。広告プラットフォームはもとより、3rdPartyの広告効果計測ツールやMA/CRMツールとのデータ統合に加え、Web 広告・アプリ広告の違いを問わない領域的な発展をしていくこ とが期待されている。

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。