iOS14.5およびATTフレームワーク導入から1ヶ月が経過。アプリユーザーとマーケティング予算変動の最新動向-AppsFlyer Japan -
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on 2021年5月31日 in近年、モバイルの利活用が急速に進行する流れに伴い、ビジネスにおいて個人のプライバシーに対する配慮の重要性が世界的に高まっています。
そうした中、2021年4月26日にiOS 14.5がリリースされ、ついにIDFA(Identifier for Advertisers)のアプリ単位でのオプトイン化が必須となりました。併せて、Appleによるユーザーの個人情報保護を目的としたATT(App Tracking Transparency)フレームワークが本格導入され、広告主は今後、IDFAの取得を行うためにはATTフレームワークを実装し、アプリごとにユーザーから同意を得る必要があります。
この度のアップデートは、プライバシー保護の観点から見れば当然ユーザーにとって大きなメリットとなりますが、iOSシェアが60%以上にものぼる日本において、マーケターにとっては今後のアプリマーケティングの大きなターニングポイントになります。なぜなら、ユーザーは一般的に自らの情報をアプリ側に渡すことを好まない傾向があり、これまでIDFAの利用を前提として行ってきた広告の効果測定やターゲティング・リターゲティング広告の活用に多大な影響を及ぼすためです。また、IDFA取得制限により、Appleが提供するプライバシーに配慮した計測ツール”SKAdNetwork”への適応も求められるなど、マーケターの不安は山積みと言えます。
そうした背景を受け、モバイル広告効果計測プラットフォームとマーケティングアナリティクスを提供するAppsFlyerでは、iOS14.5のリリース、ATTフレームワークの導入により、アプリデベロッパー・広告主がどのように行動し、アプリユーザーがどのように反応したか、当社が網羅する世界のアプリデータを基にその最新動向を公開いたしました。
*ATT Dashboard (最終更新日: 2021年5月25日、次回更新日: 2021年6月1日)
レポートURL:https://www.appsflyer.com/jp/ios-14-att-dashboard/
1.デベロッパーによるアプリのATT実装率は18%、ユーザーによるiOS14.5のアップデート率は16%と増加の兆し
2021年4月26日にATTフレームワークが導入されて1ヶ月が経過し、5月24日までにATTを実装したアプリデベロッパーはグローバル・全体(全アプリジャンル)で18%、iOS14.5にアップデートしたユーザーは16%となりました。
それぞれ、5月16日までの17%、14%と比べ1〜2ポイント増加しており、今後、Appleが最新バージョンへのアップデートを推奨していくことでiOS14.5の割合が急速に増加することが考えられるため、アプリデベロッパーは早急にATTの実装を対応することが求められます。日本においてもiOS14.5のアップデート率が16%とグローバルと同水準となっています。
続いて、ゲームのサブジャンルごとのATT実装率を見ると、ハードコア(29%)、ソーシャルカジノ(29%)、ミッドコア(23%)に対して、ハイパーカジュアル(17%)、カジュアル(16%)とカジュアルゲームが低い結果となっています。特にハイパーカジュアルのような気軽に遊べるゲームジャンルにおいては、ユーザーの情報に依存している広告の収益が占める比重が大きいにも関わらず、ATTの実装がなかなか進んでいないことが見受けられます。
2.ユーザーのATTオプトイン率は5月17日〜23日の期間で全体で40%と前週とほぼ同水準に
ATT導入後、ポップアップでアプリによるトラッキングを許可したユーザーの割合を示すATTオプトイン率では、新たにデータ更新となった5月17日~23日においてグローバル全体で40%、各ジャンルを見ても35%~40%と、前週(5月10日〜16日)とほぼ同水準を維持しました。日本においては、全体で38%のATTオプトイン率となっています。
一方で、今回のATTオプトイン率の統計は、実際にATTポップアップを見たユーザーとすべてのユーザータイプを対象としており、旧バージョンで「追跡型広告を制限(LAT:Limit Ad Tracking)」をONにしていたユーザーは含まれておらず、LATをONにしているユーザーの割合はグローバルで14%、日本では21%となっています。
3.iOSのマーケティング予算は前週比20%増加 Androidはほぼ変化なし
ATT導入後3週間における広告主のユーザー獲得予算の推移を見ると、これまで大きな変化がなかったiOSにおいて5月17日~23日の一週間で20%増加していることがわかりました。それに対して、緩やかなペースで増加を続けていたAndroidでは、同期間でわずか2%増にとどまる結果となりました。いまだiOS14.5のアップデート率が低いことを受け、抑えていたiOSのマーケティング予算を増やした企業が多かったことが見受けられます。
一方で、今後のiOSおよびAndroidのマーケティング予算配分の傾向については、今はまだ判断するタイミングではないため、引き続きアプリデータやiOS14.5の導入状況を基に注視していく必要があります。
最後に
この度のアップデートは、マーケターにとってネガティブなニュースだけではありません。むしろ、業界全体がプライバシー保護重視に前進するきっかけとなり、同時にマーケターにとっては大きなチャンスでもあると考えています。
ユーザーがIDFAを提供するかを端末単位で選択できるようになっていたiOS13までの仕様から、iOS14.5以降、その設定をアプリ単位で選択できるように対応することが義務付けられました。これにより、品質の悪いアプリはIDFAの取得が困難になり、結果的に淘汰されていく可能性があります。一方で、良い顧客体験を提供するアプリに対しては、ユーザーがトラッキングを許可する可能性が高いというデータも出てきています。
つまり、マーケターにとって今回のアップデートは、ユーザーとのエンゲージメントを醸成する戦略を構築し、ユーザーとの関係をこれまで以上に密接なものにしていく絶好の機会と言えます。そして、他社との差別化を行う最高の機会として、プライバシー保護を重視する観点と既存のモバイルエコシステムの共存に取り組んで頂きたいと思います。
本調査データに関するアプリジャンルごとの詳細なレポートは、以下よりご覧ください。
*ATT Dashboard (最終更新日: 2021年5月25日、次回更新日: 2021年6月1日)
詳細URL:https://www.appsflyer.com/jp/ios-14-att-dashboard/
ABOUT 鈴木 哲郎
AppsFlyer Japan Director of Sales
15年に渡るアドテク業界でのキャリアを持つ。ソフトウェアエンジニアを経て広告代理店にてアドテクのキャリアをスタート。Overture/Yahoo! Japanではキークライアント向け法人営業チームを統括。2012年にはFacebookに日本における最初の広告セールス担当者として入社。その後シンガポールの同社APAC本社に異動し、ゲーム広告主のグローバルマーケティングの支援とFacebook Audience Networkの市場拡大に大きく貢献。2019年に帰国し、Twitter傘下のMoPubのHead of Japanとして日本市場の展開を指揮した後、2021年4月に現職であるAppsFlyerに参画。セールス部門のDirectorとして、顧客視点でのソリューション活用を拡げる活動に邁進している