グループを超え、広告主と広告会社のデジタルマーケティングのDXを支援[インタビュー]
セプテーニグループは、今年1月に組織改編を実施した。新たに中間持株会社である株式会社セプテーニ・データ・ソリューションズを設立し、その傘下にトライコーン、ミロゴス、セプテーニ・オリジナル、SEPTENI TECHNOLOGYの4社を置くこととなった。
また同時にセプテーニ・オリジナルの社名をFLINTERS(読み:フリンターズ)に変更した。(※SEPTENITECHNOLOGYの社名もFLINTERS VIETNAM(読み:フリンターズ ベトナム)に変更予定)
今回の組織改編の経緯や新会社FLINTERSが取り組んでいこうとしていることについて、新設される中間持株会社セプテーニ・データ・ソリューションズの代表でありFLINTERS代表取締役社長でもある 武藤 政之氏、シニアマネージャー 荒井 悠氏、シニアマネージャー 関 航一郎氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)
-自己紹介をお願いいたします。
武藤氏:2001年にセプテーニに入社し、現在はセプテーニ・ホールディングスのグループ執行役員として、大きく2つの役割を担っています。1つ目は、データソリューション領域を担当しておりセプテーニ・データ・ソリューションズおよびFLINTERSの代表取締役社長をしています。そして2つ目がセプテーニ及び電通デジタルの取締役として、電通グループとの協業推進を担当しています。両社における人材の交流や、オンオフ統合提案、セプテーニグループで培ってきた開発リソースを電通デジタルに提供したり、クリエイティブ領域での連携を推進するための仕組み作りなどを行っています。
荒井氏:2010年にセプテーニに新卒入社し、一貫して事業開発・システム開発に従事してきました。広告・マーケティングの開発部門全般を担当しており、セプテーニおよび電通グループとの共同開発の責任者をしています。また、培ってきたノウハウをうまくプロダクト化して、広く展開していくSaaS事業も管轄しています。
関氏:エンジニアとしてセプテーニ・オリジナルに2015年に参加しました。エンジニアを経て企画のプロダクトマネジメントを行ってまいりました。ソリューションの外販を強化するにあたり、データソリューション事業の責任者をしています。
グループの事業ドメインを拡張
-セプテーニグループの組織改編これまでの経緯についてお聞かせください
武藤氏:セプテーニグループでは中期計画において事業ドメインの拡張を掲げており広告代理事業を補完するDXのデータソリューション領域に取り組んでいく必要があります。
そこで、この領域を担ってきた4つのグループ企業を統括する中間持株会社(=株式会社セプテーニ・データ・ソリューションズ)を設立し、広告代理事業以外の経営資源を集約することによって事業を加速させることになりました。
そこで、セプテーニ・オリジナルとSEPTENI TECHNOLOGYという、これまではセプテーニグループのための開発を行ってきた子会社を、外部向けサービスを行うプロフィットセンターに転換することにしました。社名からは広告代理店色の強い「セプテーニ」という看板をあえて下ろして、FLINTERSとすることになりました。
-FLINTERSの概要についてお聞かせください
武藤氏:FLINTERSはもともと株式会社セプテーニの開発部門でしたが、2013年にオフショア開発拠点としてハノイにSEPTENI TECHNOLOGY CO.,LTD.を設立、2014年に国内にも優秀なエンジニアが集まり活躍しやすい環境を整備するために株式会社セプテーニ・オリジナルを設立してグループ内のサービス開発をおこなっていました。
今回の再編を機に、「FLINT=火打ち石」を由来として、株式会社FLINTERSとFLINTERS VIETNAM に商号変更をして、グループ外企業にもDX支援してまいります。
FLINTERSが持つ、3つの強み
-デジタルマーケティング業界向けに、どのようなサービスを提供していくのでしょうか?そのサービスにおいて貴社の強みはどこにあるとお考えですか?
武藤氏:お客様のデジタルマーケティング領域におけるDX促進を目的に、SaaS事業とデータを活用した4つのソリューションとして人を軸としたサービス展開をしていきます。具体的にはそれぞれ以下のようなものになります。
1.SaaS事業
・CRALY https://service.craly.jp
・Flinters Data Hub https://www.flinters.co.jp/service/#bge-fdh
2.データソリューション事業 https://dx.flinters.co.jp
・データ活用支援
・広告効果最大化
・エンジニア支援
・コンテンツ構築支援
SaaS事業はサブスクリプションモデルで、データソリューションに関しては、都度見積りでサービスを提供しています。
当社の強みは、大きく3つあります。一つ目は、各種主要広告プラットフォーマーの認定パートナーであるということです。広告プラットフォーマーのAPIに関する知識、対応スピード、関連するシステムの開発品質など、これまでの経験からお客様に提案できることは多いと考えております。またプラットフォーマーからの認定をいただいているからこそ提供できることもございます。
二つ目は、セプテーニグループの開発部門を担ってきた事で再現性の高い開発実績があるということ。セプテーニには20年ほどに亘り蓄積されてきたデジタルマーケティングのノウハウがあり、これをシステム化したものは私たちがターゲットとするお客様に活かしていただけるのではないかと考えております。
三つ目はデジタルマーケティングに強い開発組織を持っているという点です。国内外に約200名の人材がおり、これも大きな強みです。これまでの経験から学習コストが低く、人材が国内外にいることで、価格競争力も付けることが出来ます。日本とベトナムそれぞれの人材を活かした提案が可能です。
関氏:データソリューション事業におけるコンテンツ構築支援では、グループでマンガアプリのGANMA!を開発してきたノウハウを生かして、新しくサービスを作りたいお客様の開発や運用の支援をおこなっていくというものです。私たちの強みであるデータ分析により、ユーザーの流入を増やしていくということもできます。
インハウス化広告主と広告会社のDX化をデータソリューションで支援
-デジタル広告業界における想定ターゲットについてお聞かせください。
武藤氏:デジタルマーケティングに従事している企業様がターゲットとなってきます。労働集約的な業務をシステム化したい、あるいは自動化したいという課題を抱えている企業様に、データを活用した課題解決型のソリューションはもちろん、未来創造型のDXで、顧客企業のイノベーションに伴走させて頂きたいと思っています。
より具体的申し上げると、広告運用のインハウス化を進めている企業様や広告代理店様を中心にお役に立てればと思っています。
セプテーニを通じたマーケティング支援では、お客様がインハウス化をするということになると、それでお付き合いが終わってしまいます。インハウス化を進めるお客様については、セプテーニ側からバトンを渡してもらい、引き続きFLINTERS側でシステムやクリエイティブ制作などの面で、支援させていただくというような取り組みを始めています。
ターゲット層へのアプローチは、直接行う方法と、代理店経由との二通りあります。直接の場合には、ウェビナーを開催するなどの方法をとっています。他のSaaS事業者と連携して一緒に行うという取り組みもあります。
代理店販売については、セプテーニや電通デジタルをはじめSaaS企業様などから声がけをしてもらうことがあります。
荒井氏:アプリ・ゲームデベロッパーのお客様ともすでにお取引をさせていただいており、データを活用したマーケティング支援を行うという取り組みを進めています。
-デジタルマーケティングの全工程において、どの部分でDX化がまだこれからなのでしょうか?
荒井氏:PDCAでいうと、Dのところが今まさにDX化が進みつつあります。ですがその後ろのCとAの領域はまだ属人的です。ここについてデータを集めて、よりよい次の行動につなげるための意思決定を支援し成果を改善するというところが、私たちが一番お役に立てるところなのではないかと感じています。
当社では、大量のデータをもとにしたラーニングから次の成果を予測をし、成功したケースを再現化することに取り組み続けてまいりました。インハウス化されたお客様に対して、例えば当社で蓄積された知見やノウハウをSaaSを通してご提供することでご支援をすることが出来ると考えております。
関氏:インハウス化したお客様の場合、自社のデータしかお持ちでありません。そうすると、自分たちは業界平均と比べてどうであるのかということも分かりません。一方広告代理店は、様々な業種のクライアントの広告運用を行っているので、そのデータを俯瞰的に捉えて運用をすることができ、長年培ったノウハウが貯まっておりますので、その点が大きな違いとなって来ます。インハウス化したお客様に対しては、これを補うようなサポートをさせていただくこともできるでしょう。
目標は、技術者のエコシステム確立
-中期的な事業目標をお聞かせください
武藤氏:継続的なDX支援に向けて、技術者を採用・育成し開発支援するという「エコシステム」を確立したいと考えています。これまで培ってきた「データ」を軸としたソリューションサービスに加え、「人」「教育」を軸としたサービス、これら3つを循環させることで、私たち独自の強みをさらに発揮していきます。
FLINTERSとの取り組みによりDXを促進することで、顧客企業の事業成長と共に社会の好循環を生む一翼を担うことで、ミッションである「未来につながる火を灯そう」を実現していければと思っています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。