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ビジネスホテルの客室内テレビをネットワーク化-ABCインターナショナルのDOOH広告戦略

ABCインターナショナルは2019年4月より、ビジネスホテルの客室内に設置されている大型液晶テレビをネットワーク化した広告メディア、おもチャンネルの提供を開始した。ホテルの利用者が入室すると自動でテレビが起動し、音声付き動画による広告訴求を行うものである。おもチャンネルの事業概要と今後の展望について、同社の梶原浩平氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 柏海)

 

 

25,000室のプライベート空間に向けて広告配信

 

―貴社の事業概要についてお聞かせください。

梶原氏:ABCインターナショナルは朝日放送グループの海外展開を担う会社として、テレビ番組や企画フォーマットの海外販売を行っています。その一環として、インバウンド関係のPRビジネスも手掛けていますが「海外の人たちに日本の商品をPRする際には、海外にいるときではなく、日本に来たとき=旅行中にPRをしたほうが効果的ではないか」という考えから、「おもチャンネル」がスタートしました。

―おもチャンネルはどのような広告商品でしょうか。

梶原氏:「おもチャンネル」は全国(東京・神奈川・千葉・愛知・大阪・京都・兵庫)のビジネスホテルの客室に置かれている大画面のテレビをネットワーク化させた広告媒体となります。2020年10月現在は全国のアパホテル客室を対象として、25,000室以上の客室に向けて広告配信が可能で、拡大を順次進めております。

ホテルの客室は入室後にルームキーを挿入すると、自動で客室内のテレビも起動するようになっています。テレビでは起動と同時にホテルのインフォメーション情報が流れるようになっているのですが、その右下をおもチャンネルの広告枠として開放しており、音声付の広告動画が流れる仕組みです。

ホテルの客室というプライベートな空間でかつテレビの大画面を使用するため、外部からのノイズも少なく、入室の際には必ず動画が流れるので半強制的に視聴行為を促すことが可能です。

おもチャンネル

 

リーセンシー効果が高い広告媒体

 

―視聴属性としてはどのようなユーザーが想定されますか。

梶原氏:ビジネスホテルを利用する日本人のビジネスパーソン、が主な視聴属性層となります。また、出張を伴う利用となるためにビジネスパーソンでも管理職・高所得層が多くなっています。

マクロミル社が実施した宿泊者調査でも、宿泊者の内、70%以上がビジネスパーソンであることが分かっていますが、役職に就かれている方も50%以上いて、かつ60%以上が世帯年収600万円以上となっております。また、宿泊を伴う出張の際には会社から出張手当が出るとともに、普段より自由時間も多くなり、コンビニでの買い物や外食など消費行動が起こりやすくなる、という調査結果も出ております。

ビジネスホテルが建つと近くにコンビニチェーンが出店されますが、そこに宿泊される方々がよく購入されるのをご存知だからだと思います。

例えば、ホテルに着いたと同時に缶ビールや清涼飲料水、お菓子などの広告を差し込むというのはリーセンシー効果(直前に接触した広告が購買行動に与える影響)も高く、有効なリーチ方法としてご案内を差し上げています。また、ビジネスパーソンでも役職付きの方の利用が多く、BtoB商材を決済権者に直接リーチができるため、ITサービスや転職サービスなどの企業さまからも、広告のご出稿をいただいております。

なお、訪日外国人の利用については(新型コロナの影響を受ける前の)2019年の実績とはなりますが、約23%の方に利用いただいております。事業立ち上げ時の狙いでもあった、旅行中の訪日外国人の方に訴求できる数少ない動画メディアとしても、今後はご活用いただける機会が増えていくのではないかと考えております。

 

客室から体験の場 『ショールーム』 に

 

―「おもチャンネル」のロール編成や実際の配信イメージについてお聞かせください。

梶原氏:1ロールは約20分で、広告のほかにもホテルのインフォメーションやPR動画、ショートアニメ等が挟まります。また、広告は15秒・30秒以外にも、インフォマーシャルとして最大180秒の枠を使って広告配信をすることも可能となっております。

1日/室あたりのおもチャンネルの平均再生時間は約80分となっており、1動画(1ロール)あたりの再生数・フリークエンシーは約4回となっています。そのような状況下で、2020年10月の広告枠別の再生数実績としても、各広告は月間300万回以上再生された結果となりました。

―ホテルの客室、という点ではほかにどのような広告訴求メリットがあるのでしょうか。

梶原氏:ホテルの滞在時間が、他の広告媒体が設置されているロケーションに比べて圧倒的に長いということが挙げられます。

この滞在時間というのは自由時間にも相当し、消費以外にも様々な行動や体験を促すことが可能です。

ホテルのWi-Fiに接続している状況下でのみ体験できるコンテンツの案内を行い、ドラマ・アニメ・漫画などを無料体験していただくようなこともできます。ホテルの客室をまるでショールームのような体験の場に変えることができます。

また宿泊者は各自のスマートフォンを使わなくても、ホテルに備え付けのVODを利用して、無料でドラマやバラエティ番組など、長尺の番組コンテンツを楽しんでいただけるような枠も広告商品として提供をしております。以前DVDレンタルでアメリカのドラマシリーズを借りたら、他のドラマシリーズの第1話が無料で見れるようになっていましたが、そのような試し視聴ができる環境があります。数話ドラマを見たら続きが気になるかと思いますが、続きはDVDシリーズを買って下さい・借りて下さい・サブスクに登録して下さいといった誘導が出来ます。

デジタルコンテンツ以外にも、ホテルのフロントでサンプリングも行っておりますので、日用品や食品・飲料などをお部屋で体験していただく時に、映像・音声でその商品の世界観を訴求できます。商品の世界観とリンクした商品体験は非常に大きいPR効果をもたらします。

ホテル利用者への広告配信イメージ

 

新たなホテルブランドの広告ネットワーク参加を目指す

 

―今後の展望についてお聞かせください。

梶原氏:現在の設置台数は約25,000台/室となっていますが、まだまだリーチを取れるように拡大していきます。アパホテルさまの直営店を中心として増やしていくだけではなく、今後はアパホテルさま以外でも、おもチャンネルのネットワークにご加入いただけるホテルブランドを増やしていきたいと考えています。

数年後にはネットワーク拡大により、100,000台/室を狙っていきたいです。

2019年にタクシーサイネージが非常に人気を博したことを踏まえると、視聴環境や視聴者属性が似ているおもチャンネルの可能性は非常に大きいと思います。1/2以下の再生単価で提供が出来ており、ブランドリフト調査でも良い結果が出ています。

上半期はコロナ禍の状況で大変でしたが、Gotoキャンペーン等の影響もあり、ホテル利用者数も大きく戻っています。これから更に高いポテンシャルを発揮していけるのではないかと考えておりますので、配信できる客室数や商品ラインナップを拡大していきます。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。