フォロワー至上主義を脱し真のブランドインフルエンサーを発掘 [インタビュー]
コロナ禍でも成長を続けるインフルエンサーマーケティング市場。だが、市場が大きくなることで様々な課題も見えてきている。広告主にとって、そのインフルエンサーが本当に自社のパートナーとして適切であるかどうかを見極めるうえで、インフルエンサーマーケティング業界にあるいわゆる“フォロワー至上主義”は、課題の代表例としてもあげられることがある。
このような課題に対して、トライバルメディアハウスは今年8月に 、国内で唯一のTwitter DataOfficialPartnerである株式会社NTTデータが提供する「なずきのおと」の付帯サービスとして、Twitterの全量データを活用しユーザーの消費行動への影響力を可視化する、「HOPSTAR(ホップスター)」というユニークなプロダクトをリリースした。
リリースの背景や、同社が認識するインフルエンサーマーケティングの市場感について、同社プロダクト担当者の服部真人氏にお話を伺った。
HOPSTARプロダクトサイトはこちら
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下智之)
フォロワー至上主義を再考する
-貴社の事業概要について改めてお聞かせください
当社ではソーシャルメディアマーケティングを軸に、大きくはソリューションやプロダクト開発の二つに分けた事業を展開しています。売上の比重はソリューションのほうが大きいのが現状です。
弊社のソリューション事業としては、ソーシャルメディアの運用やコンサルティング、キャンペーンの企画立案などをサービスとして提供しています。また、プロダクト開発の事業では、SaaSで提供するマーケティングツールを提供しています。
Boom Researchという、ソーシャルメディアやブログ上のクチコミを収集することができるツールや、Engage Managerというソーシャルメディアの統合管理ツール、必要な情報を簡単に残せる、必要な情報が簡単に見つかる情報共有ツールwelogなどを提供しています。
ソーシャルメディア黎明期から大企業のデジタルマーケティング支援を行っており、確かな実績があります。また、グループ親会社のNTTデータやネットイヤーグループとの事業シナジーも強みとしております。
また、代表をはじめソーシャルメディアマーケティングに関する著書を出しているメンバーもいるなど、業界のオピニオンリーダーとしてリーダーシップを取っています。
-インフルエンサーマーケティングについての現状のご認識をお聞かせください。どのような課題がありますか?
インフルエンサーマーケティングに対する課題はいくつかあります。一つはインプレッションやフォロワー至上主義です。いわゆるインフルエンサーマーケティング会社とインフルエンサーとの握りはフォロワー数一人当たりいくらというところにあり、インフルエンサーは、フォロワーが多ければ多いほど1投稿あたりの金額があがっていく仕組みになりがちです 。
そうすると、どうしてもフォロワーが多ければ多いほどインフルエンサーとしての価値が高くなるという図式が生まれてしまいます。
インフルエンサーの方全てが対象ではないですが、ほんの一部の悪意のあるユーザーに限定して、フォロワーをお金で購入し、偽のフォロワーであたかも影響力を大きく見せるということを、一部のインフルエンサーが行っているのは、インフルエンサーにも非はありますが、このようなサービスを提供にしてしまっている企業や社会にも問題はあると思っています。(多くのインフルエンサーの方は真面目に取り組んでいると信じています。)
本来インフルエンサーマーケティングとは企業全体のマーケティング活動の中で考えるべきですが、そうではなくキャスティングが至上命題となってしまっているようなケースもみられます。
そうすると、商品とインフルエンサーがマッチしているかを考えずにキャンペーンが実施されてしまったり、インフルエンサーの意図にそぐわない形でプロモーションが行われてしまったりすると、広告主・インフルエンサー両者にとって不幸な結果となってしまいます。
その他にも、最適なインフルエンサーをどのように探すべきか、あるいは効果を測るべきポイントが不明瞭などということを、多くの広告主が課題に挙げており、ROI(費用対効果)の検証にも課題が残っています。
インフルエンサーはリーチやインプレッションで買うものではない
-プロダクトの概要と提供背景をお聞かせください
HOPSTARは、従来のインフルエンサーマーケティングツールと異なり、独自に定義したインフルエンス数(注1)・ファンスコア(注2)を用いて影響力を数値として可視化しブランドにとって最適なインフルエンサーを見つけることができます。
従来のインフルエンサーマーケティングツールでは、フォロワーやエンゲージメントの数などを中心にそのインフルエンサーの価値を評価していることが一般的ですが、HOPSTARでは、SNSユーザーがフォロワーの消費行動に影響を与えた形跡をインフルエンスログとしてトラッキングし、ブランドの消費行動に影響力のあるインフルエンサーを選定する方法でインフルエンサーを見つけることができます。
注1)インフルエンサーがフォロワーの消費行動へ及ぼす影響力を数値化したもの。「アウェアネス(意識・態度変容数)+ビヘイビア(行動変容数)」の合計値。
注2)ブランドのファン度を6段階でスコアリングした値。
先ほど述べたような現状課題をはじめ、広告主がインフルエンサーをインプレッションで買うビジネスモデルとなってしまっている現状があり、トライバルとしてはこうした状況を変えていきたいという想いがありました。
先に申し上げた通り、我々としてはこれまでのブランドや商品に関する投稿があったとき、フォロワーの態度変容を促したかどうかという軸で、インフルエンサーの価値、すなわち影響力を図るべきであろうと考えています。もちろんこれは、従来型を否定する意味合いではなく、今回トライバルが目を付けたポイントが違うということとご理解いただけるとうれしいです。
また、広告主とインフルエンサーとの関係は、本来は短期ではなく中長期的なものであるべきだという考えがあります。そうでないと一度きりのお付き合いとなってしまい、インフルエンサーの方もブランドや商品のこと深く理解することが難しいと考えていますし、そのようなインフルエンサーの方がよりブランドのことをより理解する、より好きになってもらう環境づくりを我々のような会社が提供していく必要があると考えています。これが、今回のプロダクトとして開発をしていこうと社内で決断した背景のひとつでもあります 。
提供先は350ブランドに限定
-提供形態や想定する顧客層についてお聞かせください
ツールは広告主や広告主を支援するエージェンシーなどに対して提供しています。
料金は、月額83,000円で年間契約という形をとっています。想定している顧客は、化粧品、アパレル、家電、食品・菓子、飲料、航空業界など、17業界、350ブランドとしています。また、Twitterの全量データを扱い日々膨大なデータ量を分析していることになります。そのためNTTデータ社とも協議の元、ブランド数を限定してご提供とさせていただいております。
あらかじめ当社が選定した350ブランドであれば収集対象として設定しているため 、お申込みいただいてから3営業日ほどでお客様にご提供することができます。
膨大なつぶやきの中 から、ブランドに最適なインフルエンサーを見出す
-現状の分析対象としているのはTwitterのみですが、今後は他のプラットフォームも対象に含めていく予定でしょうか?そのほかに何か新たな機能を付け加えていくことを想定されていますか?
この点はまさにいま議論をしているところです。現状要望として大きいのが、Instagramへの対応です。今後顧客からのフィードバックなどを元に分析対象とするソーシャルメディアを増やしていく予定です。
8月にリリースさせていただいたβ版に関しては、現時点ではブランドに最適なインフルエンサーを見つけるというところにフォーカスをしていますが、今後はプロダクト上でインフルエンサーの活動状況を可視化できるようなダッシュボード機能やインフルエンサーとのコミュニケ―ションを円滑にするDM機能などを実装していく予定です。
他社のインフルエンサーマーケティングプラットフォームなどは、インフルエンサーに登録をしてもらうことで、インフルエンサーのデータを取得し分析する形態をとっています。HOPSTARの場合は、Twitter上で膨大に発生するツイートの中から、ブランドにとってふさわしいユーザー候補を抽出してきますこのとき、影響力のあるツイートをしているユーザーは 、自身がそのブランドにとっての影響力を持っているということを認識していない場合もあります。これをまず認識してもらい、ブランド側としっかりとコミュニケーションをとってもらうのにもHOPSTARを活用してもらえればと考えています。
―HOPSTARの導入はすでに決まっているのでしょうか?
すでに、航空会社や大手カフェチェーン、大手旅行代理店など数社導入が決まっています。引き続き、HOPSTARのプロダクト認知をあげるとともに、拡販をしていく必要があると認識しております。
―HOPSTARと類似の機能を持つツールは他社にあるのでしょうか?
おそらく消費行動という軸でインフルエンサーマーケティングに対して向き合い数値を可視化していくというツールは存在しないと思われます 。
まずデータ量で行くと、Twitter社から全量データの提供を受けているのは日本ではNTTデータのみです。SaaSのサービスでこの値段で提供できるのは、当社ぐらいだと考えられます。
ぜひ HOPSTARは、インフルエンサーマーケティングに新しい考え方を持ち込んだツールになります 。インフルエンサーマーケティングにおいて課題を感じてる方や、新たに始められる方などがいらっしゃいましたらお気軽にお問合せ下さい。
HOPSTARプロダクトサイトはこちら
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。