「全国展開で圧倒的リーチを目指す」―デジタルガレージが美容サロン特化サイネージでDOOH進出[インタビュー]
これまでインターネット広告の運用を始めとするデジタルマーケティング支援等を手がけてきたデジタルガレージがデジタルサイネージ広告(DOOH)市場に進出した。主戦場とするのは美容サロン。「サキザキテルコ」という独特の名前を冠したサイネージ広告商品が生まれるまでの経緯などについて聞いた。(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)
端末開発企業と美容商社との提携で実現
―自己紹介をお願いします。
デジタルガレージ マーケティングテクノロジーカンパニー パフォーマンスマーケティング本部 OOH推進部 部長の諸石真吾と申します。マーケティングテクノロジーカンパニーではマーケティング支援事業を展開するとともに、新規市場の開拓及び事業の多角化を目的として、DOOHという成長市場への参入について検討を重ねてきました。
今年8月より、全国の美容サロンの顧客を対象に動画コンテンツと広告を配信するデジタルサイネージメディア「サキザキテルコ」の提供を開始しています。当社と、IoTデバイス開発企業の株式会社ピースリー、そして美容総合卸売商社の株式会社ダリアとが業務提携を締結することでこの取り組みが実現しました。
―サイネージ端末の特徴をお聞かせください。
着座確認による効果測定機能を搭載しています。美容サロンはお客様が立ったり座ったりを繰り返すので、着座を判定してから動画を再生することが現実的ではありません。そのため本端末は、着座関係なく動画を再生し続けますが、着座した状態と空席を判断します。つまりビューアブル再生をレポートできる、美容サロンに最適化した端末です。
また、複雑な操作を必要としない仕様であることも特徴です。美容サロンに特化したデジタルサイネージメディア事業を展開する上で、圧倒的なリーチを確保したいという考えがあります。スピード感を持って全国的に配布できる仕様であり、かつ効果測定機能を搭載した本端末を、業務提携を結んだピースリー社が美容サロン専用に開発しています。
―どのような美容サロンを対象としているのでしょうか。
本メディアの特徴は長尺の動画配信なので、女性の平均滞在時間が90分で、一つのセット面に一日当たり4人以上が訪れるような美容サロンを対象にしています。言い換えると、サイネージ端末一台を通じて月間100人にリーチできるような美容サロンです。このような条件を備えた美容サロンを、美容専門商社のダリア社と協議しながら選定しています。ファーストステップとして2021年3月までに全国約3,000店に18,000台を設置する予定です。
長尺の動画広告視聴に最適な環境
―どのような広告主層を取り込みたいと考えていますか。
美容意識が高まる環境で視聴することを考えると、やはり相性が良い美容系の商品です。そして美容サロンを訪れるお客様の割合から、主に女性向けの商品を取り扱う広告主様に、美容サロンの環境だからこそ可能なプロモーションを提案しています。
一般的には、いわゆるスキッパブルな動画広告であれば、数秒の短い視聴時間を確保することさえ難しいとされています。しかし、美容サロンの施術中に過ごす時間であれば、30秒〜90秒の長尺動画でもじっくりと観てもらえる可能性があります。そのため、興味関心・理解促進を目的としたアプローチに最適であると考えています。
当社が実施した調査では、動画を視聴した71%のお客様が、「動画の内容が美容師との会話につながった」と回答しました※。受動的に動画広告を受け取るだけでなく、会話をすることで広告効果が更に高まると考えています。この環境を活かし、今後、美容サロンでのサンプリングや商品を実際にその場で試してもらうなど、美容師とのコミュニケーションが生まれるサービスの拡充も進めていく予定です。
―コロナ禍の影響はどのように受け止めていますか。
緊急事態宣言を受けて不要不急の外出自粛が求められた4、5月は売上が落ち込んだ美容サロンもあると聞いていますが、適切な感染対策を行った結果、6月に入ってから前年同月比で売上が150%増となった店舗もあるようです。
感染対策の一環で、雑誌や電子書籍閲覧用タブレットを撤去する店舗がありますが、サキザキテルコは端末への接触を必要とせずに動画をご覧いただけるため、コロナ禍でもお客様が楽しめるツールとして、また美容師とのコミュニケーションツールとしても活用することが可能です。様々なニューノーマルへの対応が必要とされているなか、デジタルサイネージメディアとして最適なサービスを展開していきます。
ステークホルダーが多い業界への配慮
―「サキザキテルコ」というキャラクター名を冠しているのはなぜですか。
美容サロンを訪れるお客様と動画広告の間にここちよい距離感を保つという発想からです。電車や屋外などとは異なり、現時点ではまだデジタルサイネージの設置が進んでいない美容サロンという空間に広告媒体を持ち込む上で、特別な配慮が必要と考えました。
そこで、デジタルサイネージメディアのキャラクター「サキザキテルコ」を作り上げました。キャラクターの性格や好みを配信コンテンツに反映させることで、単純に動画コンテンツや動画広告を配信するメディアではなく、パーソナリティを持つデジタルサイネージメディアとして認知されることを目指しています。キャラクターの「サキザキテルコ」が独自の目線でユーザーからの質問に答えるお悩み相談室、占いなどのオリジナルコンテンツも毎月新作を配信しています。
その他の配信コンテンツとして、「サキザキテルコ」のパーソナリティに合致する各メディアにお声がけをし、動画コンテンツを提供いただいています。お客様の豊かなライフスタイルを後押しするという想いを込めて、「みんな、ここちよく、自分らしく。」をコンセプトに、美容、ファッション、食、ライフスタイル、エンタメなど幅広いジャンルを配信しています。
―「デジタルサイネージ端末に対して広告を配信する」以外にも様々な準備が必要とされるのですね。
仰る通り、今後も様々な取り組みが必要です。お客様や美容サロンに必要とされる、新しいデジタルサイネージメディアとしてサービスを提供すべく、さらなるアップデートを進めていきます。
※美容サロンを利用した10代~60代の方200人へのアンケート調査(2020年6~7月実施)
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。