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YouTube広告在庫の質と量をいかに担保するか―Momentum、ADK、コーセーが実証実験[インタビュー]

ブランディング動画広告と言えば YouTubeだが、そこにはブランド毀損のリスクが存在する。この課題を解決すべく、YouTubeの優良チャンネル群を揃えたMomentum社と総合広告会社のADK社が化粧品大手のコーセーとともにセーフリスト配信の実証実験を実施。動画広告の質と量の担保について両社に話を聞いた。(Sponsored by Momentum)

 

広告会社独自のアドベリ対策とは

 

―自己紹介をお願いします。

 

佐藤氏:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズのアドテク本部に所属する佐藤有希と申します。総合広告会社である当社とプラットフォーム各社との連携を図る部署にて、アドベリフィケーションを推進するチームの一員として活動しています。

 

伊藤氏:同じくADKの伊藤美波です。広告主様向けにデジタルメディアの買い付けやプランニングを行う部署で、化粧品大手であるコーセー様の担当を務めています。

 

柳谷氏:Momentum株式会社の柳谷俊輔です。当社は日本語に特化したアドベリフィケーションの専業ベンダーとしては草分けであり、2014年より事業を開始しました。ウェブ広告のブロックサイトのリストや、動画広告配信先のセーフリスト、Pre-Bid(入札前ブロック)、Post-Bid(入札後ブロック)機能などを提供しています。

 

 

―「アドベリフィケーション」という用語を耳にする機会が過去数年間で急激に増えた一方で、外資企業と日本企業またはブランド広告主とそれ以外の広告主ではいまだ意識に開きがあると言われています。

 

佐藤氏:当社の顧客にはいわゆるナショナルクライアント様が多く、ブランドセーフティは常に重要課題です。当社ではかなり早い段階から独自にブロックリストまたはセーフリストの整備などを通じてアドベリフィケ―ション対策を行ってきました。ただし、広告主様の個別のご要望に応じて各担当者がそれぞれの対策を用意していたので、その担当者の知見や時間的資源によってそれらブロックリストやセーフリストの質や量に大きな違いがあったというのも事実です。

 

すべてのお客様に対して一律に提供し得る基準を満たした組織的なアドベリフィケーション対策を整備する必要性を以前から痛感していました。

 

伊藤氏:私が担当するコーセー様は、新商品の発売時にブランド認知を目的としたテレビCMや動画広告を出稿することが多く、とりわけブランドセーフティを重視されています。また同社様にはブランドごとの広告担当者様とは別にデジタルマーケティングを横断的に管理する専任者様がいらっしゃり、デジタル出稿におけるブランド毀損のリスクを十分に把握された上で、そのリスクをできる限り少なくしたいとのご要望を示されています。

 

そこで当社ではこれまで人気上位のチャンネルへの広告配信を予約できるYouTube Select(旧Google Preferred)などを活用してきました。

 

YouTube広告の利点と課題

 

―ディスプレイ広告と動画広告でアドベリフィケーション対策が異なるのでしょうか。

柳谷氏:ディスプレイ広告におけるアドベリフィケーションでは、これまでタグを用いて配信前に広告をブロックするPre-Bid(入札前ブロック)が一般的に活用されてきました。一方のPost-Bid(入札後ブロック)では第三者配信を用いなければならないのですが、日本市場ではこの第三者配信が浸透していない。そこで当社では自らが第三者配信機能を持つことで、Pre-BidとPost -Bidの双方を装備しました。

 

さらに接続先のDSPやアドネットワークから収集したデータに基づくブロックリストをリアルタイムで更新した上でダッシュボード表示する「HYTRA DASHBOARD」を広告会社様向けに提供しています。

 

動画広告については、昨今のコロナ禍による外出自粛の傾向を受けて、YouTubeへの出稿が増えています。そうであるにも関わらず、YouTube上にはいわゆるヘイト、アダルト、グロテクスク、炎上系といった問題ある動画が少なからず存在するというのが課題です。そこでこうした動画コンテンツ上に広告が配信されるリスクを減らすために、当社では機械判定と人的チェックからなるHYTRA DASHBOARD Channel Safe Listというプロダクトを提供しています。

 

佐藤氏:日本最大級の動画配信サービスであるYouTubeは、多くの人にリーチできる貴重なメディアです。動画広告をYouTubeに配信する広告主様は非常に多く、インストリーム広告となると事実上ほぼすべてYouTubeへの出稿というのが現状です。一方でユーザー生成コンテンツ(UGC)が多いために、どうしても広告主様によっては一部不適切と判断される動画が含まれてしまう。ただし、広告会社の担当者がYouTube上のチャンネルすべてを目視で確認していくというのは事実上不可能です。

 

柳谷氏:HYTRA DASHBOARD Channel Safe Listは、Momentum社が提供するブランドリスクのないYouTubeのチャンネル群です。伊藤様が先ほど言及していたYouTube Selectは素晴らしい仕組みだと思いますが、CPMが高く、またGoogle独自のスコアによって恣意的にチャンネルが選ばれるので、外部からはなぜ特定のチャンネルがリストに含まれ、そして含まれないかが分かりにくいという課題があります。

 

そこで当社では、海外のパートナー企業から提供されたデータを活用しつつ、YouTubeの動画内容を機械に加えて人間の目視による確認を行い、膨大な優良チャンネルを取り揃えたリストとしてご提供しています。

 

HYTRA DASHBOARD Channel Safe List概要

実証実験の結果はいかに

 

―Momentum社のHYTRA DASHBOARD Channel Safe Listを用いた実証実験の概要とその結果についてお聞かせください。

 

伊藤氏:コーセー様が提供するヴィセというブランドのアイカラーの魅力を伝える動画広告を、HYTRA DASHBOARD Channel Safe Listを適用したものとそうでないものとに分けてYouTube上に配信し、その結果を比較検証しました。この動画クリエイティブは雑誌社様とのタイアップ企画としてタレントを起用した大掛かりなもので、15秒と90秒の2種類を用意しています。

 

 

 

佐藤氏:当社としては、優良チャンネルのみへの配信では「リーチ数の減少」及び「CPMの高騰」が多少なりとも起こり得ると想定していたのですが、その影響はありませんでした。配信面は6分の1に減少したにも関わらず、リーチ数はほぼ変わらず。しかもCPMが12%安くなりました。つまり配信効率を落とさずに、ブランドセーフティを担保したYouTube広告配信ができたと言えます。

 

 

―HYTRA DASHBOARD Channel Safe Listを適用したものとそうでないものでは前者の方が当然ながら配信面が少ないにも関わらず、配信効率が下がらなかったのはなぜですか。

 

佐藤氏:ターゲティングやフリークエンシーキャップの設定によって配信効率への影響は変わり得るとは思いますが、少なくとも今回の実証実験においては、一定の規模感で用意された優良チャンネルの広告在庫で配信数をまかなうことができたということでしょう。

 

広告会社の各担当者が個別にHYTRA DASHBOARD Channel Safe List同様の規模のリストを用意するのは正直難しい。また担当者の確認時には優良チャンネルであったとしても、その後炎上コンテンツを配信するようになるという事態はあり得ます。Momentum社が定期的に各チャンネルのコンテンツを確認し、そのリスト内容を更新しているという点を高く評価しています。

 

柳谷:現在のHYTRA DASHBOARD Channel Safe Listの規模感であれば、一般的なデジタル広告の動画キャンペーンの配信に十分に対応できると考えています。月間の広告予算が1億円以上の規模となると影響が出るかもしれませんが、ターゲティングが可能なYouTube広告でそれほどの配信規模を必要とするのは非常に稀でしょう。

 

―HYTRA DASHBOARD Channel Safe Listを適用することで、具体的にはどのような配信面への広告配信が減ったのでしょうか。

 

佐藤氏:リストが適用されていない方には、海外チャンネルで広告表示が1回のみというものがたくさんありました。海外チャンネル自体に問題があるわけではないのですが、言語や背景となる文化について理解できなければ、ブランドセーフティを担保できる配信面であるか否かを判断することさえできません。またリストを適用した方では、YouTubeの公式チャンネルまたは公式アーティスト チャンネルへの配信が増えました。

 

伊藤氏:また広告配信後に受け取るレポートでは、GoogleがNGと判断してその後使用不可になったチャンネルが報告されます。HYTRA DASHBOARD Channel Safe Listを適用していない方には、使用不可となったチャンネルが配信数の上位に出てしまうが、リストを導入した場合は少なくとも上位には見られないという違いもありました。

 

―CPMが安くなったのはなぜですか。

 

柳谷氏:これについては想定外の良い結果であり、さらなる検証が必要です。ただし「ブランドセーフティを担保するためには、CPMの負担増を余儀なくされる」という一般的な傾向をくつがえした特徴的な事例であると考えております。

 

―「ブランドリフトへの影響」についてはどのように効果測定を行ったのでしょうか。

伊藤氏:動画広告を閲覧した消費者に対して、認知率、興味関心、好意度、購入意向、ブランドイメージについてのアンケートを実施しました。結果として、リストの適用による興味関心や購入意向について大きな差はありませんでした。興味関心や購入意向の違いを生むのは配信先ではなく、動画クリエイティブの内容であるというのが当社の見解です。一方で、リストを適用した配信では、ブランドに対するイメージとして「信頼できる」「共感できる」というスコアが伸びました。

 

―今後の取り組みについてお聞かせください。

 

柳谷氏:まずはHYTRA DASHBOARD Channel Safe Listのチャンネル数をより精査した上で拡張等をしていきたいと思います。また今後は既に開始しているものもありますが、Instagramやアプリ面と言った、オープンウェブやYouTube以外のサービスについてもサービスのカバー範囲を広げる予定です。

 

佐藤氏:ブランドセーフティを担保したブロックリストまたはセーフリストを用意するために、広告会社の担当者はこれまで各々で大変な手間暇をかけてきました。ADKとしては、Momentum社を始めとする各プラットフォーム等との連携を通じて、今後は組織的な取り組みを進めることで、ブランドセーフティの実現を図っていきたいと思います。

 

伊藤氏:今回の一番の発見は、当初はブランド毀損リスクを減らすために導入した本施策が、結果的に「広告投資効率を上げる」取り組みに繋がったことです。今後のコーセー様へのご提案の中でも、引き続きブランドセーフティを意識したプロモーションが出来ればと思います。

 

コーセー担当者のコメント

コーセーでは、化粧品という特性上、広告の投資効率の向上は勿論、広告活動においては、常にブランディングやブランドセーフティを重要視して取り組んでいます。その中でこれまでも、動画広告においてもアドベリ対策について取り組みを行ってきました。広告配信の中で実際にブランド毀損に繋がるインプレッションは全体の数パーセントかもしれません。ただ、1回でも数人だとしても不快な広告印象をユーザーに提供してしまうリスクを極限まで少なくする努力はするべきと考えて日頃より取り組んでいます。今回、検証頂いた結果もふまえ、外部パートナーの協力を頂きながら、更なるブランドセーフティの強化を進めていきたいと思います。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。