YouTuber 2.5時代の新しい企業価値の作り方[インタビュー]
サイバーエージェントのグループ会社CyberLiGは、企業YouTubeアカウントの運用を中心としたマーケティング支援サービス「KITEN-キテン-」を開始した。
サービスの概要やリリースの背景にある市場環境について、同社代表取締役社長の夏川登志郎氏にお話を伺った。
YouTubeで新しい企業価値を
―今回リリースされたサービスの概要と特徴についてお聞かせください
企業のYouTubeアカウントの開設から運営に当たっての制作や運用をお手伝いするというサービスとなります。
―想定されている顧客層についてお聞かせください
業種は問わないですが、現在ゲーム会社からお問い合わせをいただいているほか、化粧品、飲料メーカー、鉄道会社などからもご相談を受けたり、こちらからご提案をしたりしております。企業様に対しては、新しい価値を作るために、新しいチャンネルを作りませんかとお話させていただいております。
―どのくらいの予算規模になるのでしょうか?
コンテンツの投稿頻度や設定をするKPIにもよるのですが、YouTubeの性質上、チャンネル登録がKPIになることが多いです。登録数を伸ばすには、週に3-4本をアップする必要が出てまいります。さらにPR展開やデータ分析などのオプションも含めると、年間数千万円から億単位のご予算感とお考えいただければと思います。
―もともとYouTubeのチャンネルを持っていない広告主からの引き合いが多いのでしょうか?
当初はそのように想定しておりましたがYouTubeチャンネルを既にお持ちのお客様からもお問い合わせをいただいており、むしろ現時点ではそちらのニーズが高いです。
例えばゲーム会社の場合、今まではゲーム大会の様子などをビデオ撮影し、それをYouTubeにアップするといった取り組みをされていましたが、これはこの会社の資産のストックにしかなっていませんでした。このようなお客様の場合、YouTubeで動画をアップすることの大切さを理解されており、「YouTubeというメディアをもっと活用しなければいけない。」と思っておられるという状況です。
―そうすると、YouTubeに投資する際のある程度の予算感のイメージも持たれているということですね。
もともとデジタルに投資されているお客様であり、YouTubeに芸能人が参入することで、YouTubeの媒体価値が上がり、そこにチャンネルを持つことの価値を既に見出されているのでしょう。
新型コロナウイルスの拡大により、企業がPRをすることができる場が、YouTubeにシフトしているということも感じていらっしゃるのかと思われます。
―企業にもよるでしょうが、どのようなコンテンツを発信することを希望しているのでしょうか?
お話しできる範囲でいうと、一般的な企業PRに収まらないようなコンテンツ展開を求められている企業が多いです。YouTubeで動画を投稿し、インフルエンサー施策はもとより、それをYouTube以外にも広げていくような組み立てをされるケースもあります。
いわゆるデジタルマーケティング施策における重要なチャネルの一つとして、YouTubeを位置づけることを求めてられています。
また、私たちはもともとライブインフルエンサー事業を続けてきましたので、元々インフルエンサー視点であることを強みにしています。
そのようなところを活かしつつ、YouTubeの提案をしております。
これからはYouTuber2.5の時代に
―今回のサービスを立ち上げた背景についてお聞かせください
3年ほど前、インフルエンサーマーケティングの中心はインスタグラムでした。その一方で、PR投稿が増え、それに対しファンが冷めてしまう、ということも見られるようになりました。
そして伸びていったのがYouTubeによるマーケティングです。
当時は、YouTubeと企業との相性の良しあしもあったように思います。コンテンツは、ゲーム実況中継が多く、また、中には過激な動画をアップするYouTuberも多く見られました。
マーケティングの場としては、アプリダウンロードを目的としたものはマッチする一方でブランド目的では参入しづらい状況でした。
この当時のことを、私たちはYouTuber1.0時代と呼んでいましたが、その後芸能人やインスタグラマーがYouTubeに参入し、クオリティーの高い動画や社会的意義のある動画が増え、台頭してきました。これをYouTuber2.0と呼んでいます。素人だけではなくプロも投稿をするYouTubeとして媒体価値も上がり、大手ブランドによる投資が始まり、タイアップ案件が増えてきたのが現状です。
今後は、企業も自社のチャンネル作ってYouTubeへと参入するYouTuber2.5のような時代が来るであろうという想いが今回の事業立ち上げの背景となります。
広告主目線では1.0~2.0はインフルエンサーの力に頼っていたところが、2.5は自らの力でYouTubeというチャネルを使ってマーケティングをしていくということになります。
―YouTubeを使ったインフルエンサーマーケティングにおいて、ここ最近変わりつつあることをお聞かせください
この2-3か月でYouTubeという場自体が大きく変わりつつあります。
今までのコンテンツは、面白ければ良しとされてきましたが、YouTuberが飽和しつつある中で、ここから先に求められているのはコンテンツの質です。
今までは個人YouTuber一人や、YouTuber同志でチームを組んでやっていたケースが多かったのですが、これからの時代は、放送作家、プロデューサー、数名の編集チーム、データ分析担当など様々な職種の人たちによるチームでやっていかないと勝てなくなってくるであろう、そのように考えています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。