ExchangeWire.comとOpenX、日本及びアジア太平洋市場のプログラマティック広告市場調査レポートを発表-日本市場に特徴的な「慎重な姿勢」とは
オンライン広告取引の最新動向を伝えるExchangeWire.com(英・ロンドン)とアドエクスチェンジグローバル大手のOpenX(米・カリフォルニア)は、日本及びアジア太平洋市場のプログラマティック広告市場の概況を示す「The State of Programmatic in JAPAC: Current and Future Drivers of Growth」と題した共同調査レポートを発表した。
両社は2020年2月に本調査を実施。オーストラリア、インド、インドネシア、日本におけるパブリッシャー、広告主、広告会社などに勤務する200名以上からの情報提供などに基づきまとめられた。またピュブリシス・グループ、マイクロソフト、タイムズ・インターネット、ユニリーバ、ザクシスといった業界を牽引するオピニオン・リーダーたちがレポート制作に協力している。
同調査レポートは、プログラマティック広告支出の増加ぶりを伝えながらも、日本市場ならではの特徴として「他の調査対象国と比較して、プログラマティック広告支出の増加により慎重な姿勢を見せている」傾向があると指摘。日本及びアジア太平洋市場全体で、オンライン広告の不正を減らすための取り組みであるads.txtの普及が十分に進んでいないことにも言及しながら、市場の課題解決に向けた取り組みを強化する必要性を示唆している。
その他の主なトレンドとして、以下の点が挙げられている。
プログラマティック広告支出が増加
過去1年で日本及びAPAC地域の広告関係者の76.6%がプログラマティック広告投資を増加。日本市場に限定すると、この数値は66.1%となる。尚、約半数(47.5%)は過去1年で25%以上の伸び率を示した。一方でプログラマティック広告支出を減らしたのは調査対象の1割に満たない。
プログラマティック広告支出増加の要因は様々
効果的なデータ活用、広告取引の効率化、消費者ターゲティング、質の良い広告在庫へのアクセスなどがプログラマティック広告投資増加の要因として挙がった。とりわけ日本市場においては、ターゲティングの精度と広告在庫の収益化を理由とする回答が目立つ。
ads.txtの採用が引き続き課題に
日本市場における回答者の11%が取引している広告在庫の中でads.txtを通じて承認されたものは皆無であるとし、また18%は少なくとも広告在庫の4分の3以上がads.txtで承認されているはずであると回答。日本市場が「他の調査対象国と比較して、プログラマティック広告支出の増加により慎重な姿勢を見せている」という傾向との関連性が示唆されている。
日本及びAPACを通じてヘッダービディングが普及
日本の広告関係者の93.8%がヘッダービディングを活用。ただし、ヘッダービディング機能の提供事業者が合わせて増加したため、とりわけ新興国では過剰供給の傾向が見受けられる。
今後はDOOHがプログラマティック広告予算増に寄与
現状ではコロナウイルスの感染拡大防止を目的とした外出自粛を受けて経済活動が停滞しているが、この外出自粛が緩和ないし解除された以後は、経済は回復基調に向かうことが期待される。ただし、外出自粛の解除後にDOOHへの広告支出が回復するか、またはアプリ内メディアやコネクティッドTVへと予算が移行するかは今後注視する必要がある。
ExchangeWireとOpenXによる共同調査レポート(英語)はこちらから。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。