ソーシャルメディアのリーチを補完-Teadsの新プロダクトにみる、ソーシャルエコシステムとの共存-
動画広告プラットフォームグローバル大手のTeadsは、2019年決算を公表した。
GAFAをはじめとする大手広告プラットフォームが世界で市場シェアを高める中、同社の売上は5億3,800万ドル(日本円:約589億円)、前年比25%という高い成長を遂げている。
このリリースに先立ってTeadsは新しい広告プロダクトであるinRead Social®︎をリリースした。
Teads Japanで営業を担当する小副川 真季氏、広告運用を担当するヴォルコワ ネリー氏とフランソワ プルースト氏に、今回の新しい広告フォーマットについてお話を伺った。
-プロダクトリリースの背景についてお聞かせください
小副川氏:広告主によるソーシャルメディアへの広告投資が増え続けていますが、既に多くの広告主が同じプラットフォームに出稿をしており、ソーシャルの次に、どのようにリーチを拡大していくかという課題を持っています。
そのような課題に対して、Teadsではいかに工数をかけずにリーチを拡げるお手伝いができないかと考えた結果、ソーシャルメディアで活用されている既存の広告クリエイティブをそのままお使いいただける、この新しい広告フォーマットをリリースすることにしました。
このフォーマットにより、媒体社に対しても新たな収益機会をご提供することが出来るようになります。ソーシャルメディア向けの広告予算は、もともとは直接的に媒体社に還元されることはありません。そこに私たちのプロダクトが介在することで、ソーシャルに出稿されている広告主の予算からも、広告収益を得ていただける機会を得られるようになります。
当社としてもこれにより、ソーシャルメディアに出稿されている広告主からもご出稿を戴く機会を得ることが出来るようになります。
―プロダクトの概要と技術的なポイントについてお聞かせください
ネリー氏:このプロダクトの特徴は、ソーシャルメディアで既に広告出稿をされている広告主様、広告代理店様にとって、とてもお取り組みいただきやすいことです。
なぜなら、Teadsに出稿を戴く際に、新たな広告クリエイティブなどのアセットをご用意いただく必要は一切ありません。ソーシャルメディアでポストされたURLをコピー&ペーストして当社にお渡し戴くくだけで、準備が完了します。
ブランドセーフティが担保されたコンテンツへの配信となりますし、課金形態も幅広く対応しています。
また、ビューアビリティー率、インビュー率ともにソーシャルよりも高いという当社による調査結果も出ております。
-このプロダクトを使った場合、どのくらいのリーチ補完が出来るのでしょうか?
小副川氏:ソーシャルではリーチが出来ないユーザー41%に、リーチをすることが出来ます。
ソーシャルとTeadsの両方お使いいただくことで、今までにない幅広いリーチを取ることが出来ます。
-どのような広告主に使っていただきたいですか?
プルースト氏:ラグジュアリブランド、ファッションブランド、飲料・食品ブランドなど、幅広い業種のブランドに使っていただければと思います。
ソーシャルメディアの広告パフォーマンスの計測基準として、広告表示時間が3秒時点でのものがよく採用されています。
Teadsでは、3秒視聴を基準にした、ビューアブルCPM課金形態をお使いいただくことも出来ます。ソーシャルとTeadsと双方3秒時点の視聴完了で効果を比較することが出来ます。第三者調査によると、ソーシャルメディアにおけるインビューの広告平均表示時間は1.7秒であるのに対して、Teadsにおけるそれは9秒です。同じ3秒数で比較した時、広告の費用対効果の点において、ソーシャルメディアに勝るとも劣らないと自負しております。
また、「FacebookがWebのAudience Networkの終了を発表したが、このタイミングは偶然なのか?」という問いに対しては、Chief Strategy OfficerのTodd Tran氏より以下の回答を得た。
「Teadsは、FacebookオーディエンスネットワークのモバイルWebのシャットダウンを発表する以前より、この立ち上げを計画しています。もちろん、この発表により、当社のinRead Social®︎がFacebookのソリューションの補完になることもあるかと思います。彼らがこの部門のシャットダウンを行ったのは当然のことだと考えています。彼らは常に独自のサービス向上のためにアプリへの開発を集中して行っています。Audience Networkでもその流れを汲むということは自然なことと予想できます。」
今回の新しい広告フォーマットは、広告主や広告代理店にとってのベネフィットがシンプルで明確である。そして同時に、独立系広告プラットフォームのTeadsが、大手広告プラットフォームが市場シェアを高めていく市場環境で、どのように向き合うべきかというお手本のような戦略と見ることもでき、大変興味深いところである。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。