サイバー・バズが注力する、2020年のインフルエンサーマーケティング [インタビュー]
サイバーエージェントグループの100%子会社として2006年に設立されたサイバー・バズ。
その後独立し、2019年9月には東証マザーズに上場を果たした。
上場に至る経緯や背景、同社が注力するインフルエンサーマーケティング市場について、代表取締役社長 高村彰典氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan野下智之)
上場による大きな変化
-2019年9月に東証マザーズに上場されました。これまでの経緯や上場を目指された背景、上場後のビジネス環境の変化についてお聞かせください。
サイバー・バズは、サイバーエージェントの100%子会社から始まりました。元々ブログマーケティングの会社として始まったのですが、サイバーエージェントの中で、当時「一旦、会社を止めてもいいかもしれないね。」という議論がありました。
サイバー・バズは、私がサイバーエージェントの役員時代に設立された会社でしたし、元々自分で会社を経営したいという気持ちがあり、「私の方で引き取ります」ということで、2010年に代表取締役に就任し、その後、株式を取得して経営をしていく道を選びました。
2013年以降はソーシャルメディアの領域で注力をしてきました。2015年頃からInstagramが普及しはじめ、個人のメディア化が進むのを目にし、市場が今後伸びていくと感じたため、資金調達によりSNSマーケティングのビジネスをより強化すべく上場を目指しました。
上場して、知名度と信頼度が上がったことで、今まで以上にアライアンスのお誘いを受けるようになりました。そしてもう一つ大きく変わったのは採用面です。
「サイバー・バズ」の知名度が上がり、当社を応募していただける方が増えています。
-2019年のインフルエンサーマーケティングの市況感についてお聞かせください
2019年は一気に盛り上がりが見られた1年であったと思います。インフルエンサーマーケティングのやり方が確立されて、それが定着し当たり前になってきたような1年でした。
広告主のニーズは、動画とソーシャルメディアマーケティング全体支援
-広告主から求められていることについて、何か変化は見られますか?
当社では主力のInstagramが大きく伸びていますが、広告主側からはInstagramだけではなく、TwitterやFacebook、YouTubeなどをトータルで提案をしてほしいというニーズが増えてきています。
手法については、動画を活用して、よりユーザーのエンゲージメントを高めていくようなことを提案してほしいというニーズも増えています。
また、インフルエンサーマーケティングをお手伝いさせていただいている広告主から、ソーシャルアカウントの運用を支援してほしいというニーズも増えています。
ニーズが増えている背景には、企業の公式アカウントを作ってみたものの、フォロワー数が伸びない、社内リソースを割けないなど自社のSNSに課題を抱える企業が非常に多いという背景があります。
今後、Instagramでは、直接商品が購入できるようになるといわれています。ですので、広告主に対してはそれに備えるという意味でも、Instagramの企業公式アカウントの提案を進めています。
更なる定着に必要なものは、事例と広告効果測定
―一方で広告主のインフルエンサーマーケティングの活用は、まだまだ定着していないという声も聞くことが出来ます。
化粧品・トイレタリー業界の広告主においては、インフルエンサーマーケティングを実施するのが当たり前になっています。
それ以外の業種はまさにこれからであるかという認識です。
インターネット広告市場は2兆円を超えましたが、インフルエンサーマーケティングの市場はおよそ300億円にとどまっています。
今後市場を伸ばしていくためには、それ以外の業種にどのように広めていくかということがポイントです。
そのために、今の時点で足りないのは事例です。
しっかりと、色々な業種でインフルエンサーの活用事例が出来てくると、それが当たり前になってくると思っています。そのための課題としては、広告効果の指標が分かりづらいという点が挙げられます。いわゆる販促目的で出稿するインフィード広告であれば、広告効果は明確ですが、それほどの効果を追い切れないというのがあります。
-インフルエンサーマーケティングを活用している広告主は、実際のところどのように効果測定を行っているのでしょうか
「いいね」や「リツイート」などのエンゲージメントが主流ですが、しっかりと取り組んでおられる広告主は、配信後にPOSデータと付け合わせをして効果を検証されています。
変わるインフルエンサーの活動、チャネルの広がりとテレビからの参入
-インフルエンサー側も、Instagram、YouTube、Twitterなどのチャネルを跨いでマーケティングを支援するような活動が増えてきているのでしょうか?
今のところは、Instagram、YouTube、Twitterそれぞれに強い人を当社がチャネルに合わせてプランニングしていますが、最近ではYouTuberがInstagramをはじめたり、その逆をしたりというケースが増えてきています。今後私たちは、このインフルエンサーはどこのチャネルに強いのかを見極めていく必要があります。
-テレビで活躍する芸能人のYouTuber化が進んでいますが、これについてはどのように見ておられますか?
芸能人の中でも、YouTubeで稼ぐことができる人と、そうでない人との二極化が進むのではないかとみています。
これはこれまでのテレビの世界においても同様です。当社では大手芸能事務所4社との提携により、テレビで活躍している芸能人をインフルエンサーとして活用することができるサービスを新たにリリースしました。
データ活用と健全化に注力
-広告主とインフルエンサーの関係性は今後どのようになっていくのでしょうか?例えば、一緒に商品開発をするような取り組みは進むのでしょうか?
広告主とインフルエンサーが商品開発をすることは、なくはないと思います。ですが、それは、相当大きな影響力のある一部のインフルエンサーに限定されており、今後主流になっていくことはないかと思います。
どちらかというと、OEM提供しているメーカーと提携をして、インフルエンサーが自分でブランドを立ち上げるというような動きが進んでいます。
また、広告主とインフルエンサーとがコンテンツを一緒に考えていくというようなケースが今後増えてくるのではないかと考えております。例えば、広告主がInstagramなどで開設しているアカウントで配信するコンテンツのクリエイティブや、フォロワーをどのように増やしていくのかというようなことを、インフルエンサーと一緒に考えるというような取り組みが挙げられます。
当社では独自のインフルエンサーネットワークがあり、例えば当社とインフルエンサーとでD2Cブランドを立ち上げるなど、新しい取り組みも視野に入れています。
―今後注力していかれることについてお聞かせください
今後は、より一層データ重視のインフルエンサーマーケティングに注力していきたいと考えています。当社では、広告主やブランドごとに、施策前後のデータ分析結果やインフルエンサーとブランド単位での独自スコアなどから最適な指標を抽出し、インフルエンサーの選定に活用する最適化システム「IMO(influencer marketing optimization)」サービスを自社開発し、取り入れています。
また、インフルエンサーの健全化に向けた取り組みを引き続き進めていきたいと考えています。インフルエンサーマーケティングのガイドラインを守り、しっかりとした活動を行っているインフルエンサーを随時リスト化して明らかにすることにより、広告主にとって安全・安心なサービスの提供を心掛けてまいります。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。