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十河宏輔氏が語る、日本市場参入の攻めどころ [インタビュー]

写真1:十河宏輔氏

シンガポールでの2016年4月設立から3年半、11の国と地域のマーケットに展開し社員数は600名規模と拡大を続けるAnyMind Group。代表を務める同社共同創業者兼CEO十河宏輔氏は、今年1年どのような取り組みをしてきたのか。同社の戦略と合わせて、お話を伺った。

聞き手:ExchangeWireJapan 野下智之

突破口は、インフルエンサーとDOOH

AnyMind Groupをこの1年どのような舵取りをしてこられましたか

2016年に会社を設立して3年半が経ちますが、常に拡大を続けており、各国でいろいろなことがあり、組織の課題は常にあります。そのような中、2019年は大きく二つの新規事業に注力してきました。一つ目はインフルエンサービジネス、そして二つ目はDOOH事業です。

インフルエンサービジネスについては、大きく二つあります。

一つはクリエイターマネジメント、セレブリティーのYouTuber化支援ビジネスです。代表的な取り組みとしては、本田圭佑さんにYouTuberになっていただき、当社がマネジメントをさせていただくというようなことも行っています。また、サニーサイドアップと共同でAnyUpを設立し、著名人・タレント・アスリートのYouTubeチャンネル支援を開始しました。

もう一つはMCN事業。当社はMCN事業をグローバルで本格的に開始しました。当社はグローバルにおけるMCNライセンスを保有しています。MCNライセンスを活用した、本領域での日本における事業展開に関しても強い自信を持っています。

二つ目のDOOH事業については、タイのDOOH事業者最大手で、6割以上の市場シェアを持つVGI社と資本業務提携をし、同社が持つ鉄道車内・駅プラットフォームなどのサイネージ枠に当社の広告プラットフォームを通じて広告配信を開始しました。

外部の事業者として同社のデジタルサイネージ広告に配信ができるのは、今のところ当社のみです。

そして地域に関しては日本市場に注力をしています。

なぜ今日本市場に注力をするのでしょうか?

写真2:十河宏輔氏

当社は東南アジアにおいて大きな成功を収めることができました。グローバル規模で見渡してみても東南アジアにおいて当社ほど成功を収めている企業は多くありません。独立系の外資系事業者としては、ほぼ取るべきシェアを取ることができたと考えております。

東南アジアの市場は成長途上にあり、当社の事業も今後成長をしていくものの、高い成長を維持し続けるには、新しいマーケットへの進出が大切になってきます。そうなったとき、日本は非常に重要な市場です。日本という市場で当社はまだシェアをとれていません。成熟している日本で、当社が突破口を見出しているのが、テックドリブンなインフルエンサーマーケティングと、セレブリティーのYouTube化支援ビジネス。そして、DOOH事業です。アジアでのネットワークと成功体験を活かして、この2つの領域で日本企業の成長にコミットしたいと考えています。

プログラマティックの思想をインフルエンサーマーケ市場に

インフルエンサー事業では、マーケットでどのようなポジションを取りにいかれようと考えていますか?

広告主側に関しては、テックドリブンでデータドリブンなサービスを提供していきたいと考えています。マーケットではクリエイタードリブンな会社はありますが、当社のようなテックドリブンな会社はないかなと思っております。プログラマティックの思想をインフルエンサーマーケティングに持ち込んでいきます。

今までのインフルエンサーマーケティングは発注者側とインフルエンサーとのやり取りがすべてマニュアルで行われてきましたが、できる限りオートメーション化を進めています。

ただし現状においてどうしてもコミュニケーションが必要なところでは、当社のメンバーがマニュアルでサポートを行っています。

当社のプラットフォーム上では、YouTube、Instagram、Facebook、Twitterなどのチャネルを通したインフルエンサーマーケティングの効果としてエンゲージメントのみならず、クリック数やコンバージョン数までも追うことができるようになっております。海外ではブランド広告主からの需要が大きいのですが、日本においてはパフォーマンス系の広告主からの需要が大きく、当社のサービスにご好評をいただいております。

インフルエンサーマーケティングサービスにおいて、ターゲットとする広告主層についてお聞かせください。

ブランド広告主からパフォーマンス系の広告主まで全てをターゲットにしています。

ブランド広告主とパフォーマンス系の広告主とではニーズは全く異なっており、ブランド広告主の場合は例えば、いいね数やコメント数などのエンゲージメントをコミットしてほしいというリクエストもありますし、パフォーマンス系の広告主の場合にはアクションをコミットしてほしいというリクエストになります。

それに対して当社では課金方法も様々なものをご用意しています。現在は、ポスト数、いいね数、シェア数、コメント数、フォロワー数、クリック数、アクション数のそれぞれに応じた課金形態を用意しており、広告主からどのようなリクエストが来ても対応できるようにしています。

日本では広告代理店を通して多く販売をしていただいています。広告代理店向けの管理画面もありますので、これを活用いただいて広く広告主に提供していただいています。

日本でインフルエンサーの経済圏を作るのが目標

日本のインフルエンサーマーケティング市場をどのように変えていかれたいですか?

まだまだ効率化されていないところが多く、データありきでサービスを提供している会社もまだ多くないです。データドリブンなインフルエンサーマーケティングを広告主の方ができるような価値を提供していきたいです。

インフルエンサーの方たちも、自身のブランディングを気にしているので、何でもかんでも広告主の要望を受け入れるような状況ではなくなりつつあります。広告主とインフルエンサー双方にとって良い案件に出会えるように、マッチングの精度を高めていきたいと考えております。そのために当社のテクノロジーを活用していきたいです。

インフルエンサー市場はまだまだ伸びしろがあると思っています。現状のインフルエンサービジネスは広告モデルです。これはビジネスモデルの一つであり、僕らがやっていきたいのはインフルエンサーの経済圏を作っていくということです。

例えばインスタグラマーは、広告ではなく物販でビジネスをすることも可能です。自分で好きな商品をプロデュースし、インスタグラムをしっかりと活用してEコマースで販売するというようなケースが今後どんどんと増えていくでしょう。

当社ではインフルエンサーの活動を、今は広告モデルで支援をしていますが、今後はEコマースや、ファンコミュニティービジネスを一緒に作るようなことにも取り組み、インフルエンサーが輝くことができる場所を増やしていきたいです。

本田圭佑さんをはじめ、色々な方を巻き込んでビジネスを拡大されていますが、どのように協力を得ているのでしょうか?

写真3:十河宏輔氏

これから5年先―10年先を見据えると、国と国との境はどんどんとなくなっていっています。強い会社はどこの国でも強いというのが当たり前になってきます。日本だけを見てビジネスをするというのは、見通しは明るいとは言えません。

そのことをお話しさせていただいたうえで、グローバルで本気で戦っていくことや、自身が手掛けている事業が本当に伸びるということをお伝えして、サポートをいただいています。グローバル文脈でお話をして皆さんからいろいろなサポートをしていただくことができているのは、僕らがアジアでしっかりとビジネスをしており、そこに対して応援をしたいという気持ちを持っていただいているということが大きいのではないでしょうか。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。