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広告事業は「しっかり投資・大きく育成」-サイバーエージェント2019年度通期決算を公表-

サイバーエージェントは10月30日、2019年度の通期決算を公表した。

グループ全体の通期売上は4536億円、前年比8.1%増で過去最高を更新。営業利益は、308億円。第1四半期を終えた段階で一旦下方修正をしたが、その後上方修正し、最終的には前年を2.2%上回る結果で着地した。

 

 

 

ネット広告事業は内製化の先行投資

 

メディア事業はAbemaTVが牽引し373億円、前年比18.5%増。引き続きAbemaTVへの200億円規模の投資を継続したことにより前年度とほぼ同水準の178億円の営業損失を計上。

 

ゲーム事業は既存の主力タイトルが堅調に推移し売上は1522億円、前年比3.9%増。営業利益は260億円、広告宣伝費の適正化効果で前年比2.9%増となった。

 

インターネット広告事業は、2019年度にブランド広告主を中心に新規開拓に注力したことで、インターネット広告事業の売上は、2,602億円。前年比は、8.4%増(※)と好調に推移した。(※昨年5月に連結対象から外れたサイバー・バズを控除して比較)

同事業の営業利益は前年比3.4%減の206億円。クリエイティブ制作やアドテク開発体制の内製化を進めるための先行投資を行なった。

同社代表取締役社長 藤田晋氏は、「投資は長い目で回収していく。これにより、収益性を高めるとともに、高いクオリティーコントロールを実現させる。」と、その背景と方針を解説。

2020年度は、2019年度に新規で獲得した広告主との取引拡大や、AIテクノロジーを使った新たな事業機会の創出、元々の強みである運用の強化を図っていくという方針について述べた。

同事業の今後の見通しについて藤田氏は「肌感覚では市況が全体的にあまりよくない。広告主が景況感の先行きに対し少し警戒心を持っていると感じる。広告主の予算消化が進む年末から来年3月末にかけて回復することを期待しているが、現時点では読みづらい。」と慎重な見通しを示した。

 

 

出典:同社IR資料

 

AbemaTV広告事業は商品開発に注力

 

 

出典:同社IR資料

 

同社が中長期的な柱に据え育成するAbemaTVの売上は、前年の63億円から約1.8倍の111億円へと大幅に増加。

2019年度はWAUのベースアップが続き、「一つの節目となる数字」(藤田氏)である1000万を突破。藤田氏は芸能人の緊急会見や、自然災害などが起こった時、ニュース速報の視聴者数が大きく伸びたことについて触れ、「何かあったらアベマで中継している」と想起されるメディアとして定着したことを背景に挙げた。

収益モデルについては、課金サービスが好調。ユーザーのオンデマンド視聴に課金する有料会員サービスAbemaプレミアムの会員数が大きく伸び51.8万人(2019年9月)に達した。

「AbemaTVの売上に占める広告:課金比率は、足元の状況ではより課金の比率が伸びそうである」(藤田氏)と今後の見通すとともに、広告売上については景気と販路の影響を受け、2019年度下期に伸び悩みが見られたことを明らかにした。

 

藤田氏は、AbemaTVの広告事業について「単純に視聴率が上がって広告の収益が上がる、今のテレビのような枠組みがまだ作れていない。

AbemaTVが広告で本当に成長するには、決定的な広告商材が必要。例えばGoogleが検索結果に広告を入れたり、Facebookがインフィード広告を作りそこにリターゲティングを組み合わたりというように、広告効果の高さが分かりやすいフォーマットを作ると(売上は)ぐんと伸びる。今は広告主とともに色々と試しながら取り組んでいる段階。

四半期ベースでの(売上)アップダウンは、さほど気にしていない。(今後)広告商品をしっかり開発していく。」と、中長期で育ていくという考え方を示した。

 

アナリストからの最後の質問で、AbemaTVの2020年度の売上目標について聞かれると、藤田氏は「昨年ここで売上を倍にするといったことに縛られたので、今年は絶対言わないように思ってここに来た。もちろん結構伸ばすつもりであるが、非開示である。」と丁寧に非開示の理由を答えて会場の笑いを取り、和やかな雰囲気とともに2019年度期末の決算報告会を締めくくった。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。