×

LINE、アドネットワーク事業を始動-独自の支援プログラム提供でアプリパブリッシャーの成長を後押し

写真1:池端 由基氏



LINE株式会社は、7月30日、都内にて、同社のアドネットワーク事業のローンチイベントを開催した。

同社執行役員広告ビジネス事業担当の池端由基氏によると、LINEのMAUは8100万人を超える。コミュニケーションアプリという特性から、毎日利用するユーザーが86%を占めており、日々変化するユーザーの行動や感情を捉えることのできるデータを保持していることが強みだという。

同社が提供している主な法人向けサービスは、①企業や店舗がユーザーに対して直接的な情報発信を行う「LINE公式アカウント」、②運用型広告プラットフォーム「LINE Ads Platform(LAP)」、③店頭販促特化型ソリューションの「LINE Sales Promotion」の三点。中でもLAPが高い事業成長率を示しているという。

LINE社では近年、このLAPの新規機能開発に関連したリリースを次々と発表している。スマートフォン向け短尺動画広告配信プラットフォームの「FIVE」を子会社化したことに加えて、これまで広告枠を設けていなかったトークルームの上部に天気予報や占いといった情報と合わせて広告を配信する「スマートチャンネル」を導入。また今年11月より、広告代理店を通さずとも広告主自身が広告運用管理を行うことができるセルフサーブ機能を開始する予定となっている。

こうしたLAP機能拡張に向けた試みの一環として、同社がこの度発表したのが、アドネットワーク事業「LINE Ads Platform for Publishers」の立ち上げ。LINE内で最適化して配信している広告を、その他の外部のサービスにも配信することができるようになった。配信先には、動画配信アプリのAbemaTVやショートムービープラットフォームアプリのTikTokを始めとする4600超の外部アプリメディアが含まれる。

またモバイル向けアドネットワーク事業としてはユニークな取り組みとなる、Publisher Growth Program(PGP)と題した独自のアプリパブリッシャー向け成長支援プログラムを用意した。プログラムの中でも最大の目玉は、LINE公式アカウントをベースとしたマーケティング支援。さらにLINEポイントを優遇提供するリワードプログラムやダウンロード促進を支援するプログラムも用意している。PGPは2019年秋以降に提供予定だ。

写真2:菅野圭介氏

本イベントに登壇した、LINE Ads Platform for Publishers事業本部事業本部長兼ファイブ株式会社代表取締役社長の菅野圭介氏は加えて、アプリパブリッシャーが広告枠の設定を行なう際に、自社アプリをアップデートせずともサーバーサイドでのUIの最適化が可能であるため、アプリパブリッシャーの負担がないと強調。また将来は、広告在庫をより高単価で販売できるPMPの創設を計画しているとの考えを発表した。

イベントの後半部では、アプリやアプリ広告の運営全般に関する課題について、大手アプリ事業者を招聘してのパネルディスカッションを実施した。

写真3:南野 充則氏

ヘルスケアアプリの「FiNC」を運営するFiNC Technologies代表取締役CTOの南野充則氏は、新規アプリがマネタイズを開始するタイミングの判断について、①マネタイズするだけに十分なDAUやMAUを予め目標値として設定する、②アドネットワークを通じて広告在庫の開放を試験的に行い、ユーザーの継続率に悪影響を及ぼさないかを注視する、などの注意点を挙げた。

写真4:吉田 大成氏

レシピ動画アプリのDELISH KITCHENを運営する株式会社エブリー代表取締役社長CEOの吉田大成氏は、自社の取り組みを例にとった最新のアプリマーケティング事情を紹介。一部店舗の協力を得ることで、「ID-POS」と呼ばれるポイントカード登録情報などと紐づいた購買データとの連携に関する実証実験を展開中との現状を述べた上で、今後はアプリ上でコンテンツ閲覧後のオフラインの購買行動が分析可能になるとの見通しを伝えた。

写真5:山田 陸氏

株式会社AbemaTV広告本部本部長兼株式会社サイバーエージェント取締役の山田陸氏は、テレビCMとAbemaTV上の動画広告の両方を実施した際の両者の重複度合いについて調査結果を公表。この調査では、AbemaTVの独自リーチが75%以上あることが判明した。テレビの視聴頻度が減少している中で、動画アプリを含めた動画広告媒体の存在感が高まっていることが改めて浮き彫りになった。

写真6:岩田 幸也氏

TikTokadsのProduct Marketing Division本部長の岩田幸也氏は、「どのメディアに、どのタイミングで、どの程度のフリークエンシーで当たると動画広告のブランディング効果が最大化するのか」という重要な点が現時点では十分に可視化できていないと指摘。LINEを始めとする大型プラットフォームの豊富なデータを活用すれば、精度の高い動画広告アトリビューション手法が設計できるはずとの展望を伝えた。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。