コネクテッドTV普及を前に、リッチな動画クリエイティブを日本で展開-Innovid日本市場参入- [インタビュー]
動画広告プラットフォームInnovidが、日本のリージョナルディレクターを任命し、日本に本格参入する。同社のサービスや、日本参入の背景、今後の展開について、リージョナルディレクター渡邉統一郎氏と、APAC Vice Presidentのヘンリー・シェンカー氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下智之)
グローバルで評価されているリッチな広告クリエイティブ
―Innovidについて、お聞かせ下さい
ヘンリー氏 Innovidはイスラエルで3人の創設者により2007年に設立された動画広告プラットフォームです。現在本社はニューヨークにあり、オフィスは全世界に10か所、APACでは東京が3拠点目になります。
Innovidは、もともとはインタラクティブな動画広告の提供からスタートしました。その後データドリブンであったり、動画をリッチでかつダイナミックなクリエイティブに作り上げるようなソリューションとして進化を遂げています。チャネルも、デスクトップやモバイルのみではなくコネクテッドTVなどに広げつつあります。
―お二人のバックグランドと、Innovidにジョインした理由をお聞かせください。
ヘンリー氏 私のもともとのキャリアはスタートアップから始まり、その後長い間クリエイティブサイドのマーケティングテクノロジー会社に所属していました。その後、Tapadにジョインしデータやテクノロジーに関係する仕事をしていました。そして3年前にニューヨークからシンガポールに移り、APAC地域でプロダクトをローンチする経験をしました。その後、Innovidのファウンダーと会いそこで動画広告のビジネスに対するビジネス機会を感じて、参画しました。
渡邉氏 Innovidには今年6月にジョインしました。その前は6年間Googleで、DoubleClickプロダクト(Google Marketing Platform)のセールスに従事していました。そこで、DoubleClick BidManager(DV360) や、DoubleClick Search (SA360) の日本での立ち上げを経験しました。
Googleに参画する前は、Omniture(現Adobe)でSiteCatalyst (現Adobe Analytics)やSearchCenter (現Adobe Advertising Cloud)の立ち上げを経験しました。
Innovidにジョインした理由ですが、まずは発展途上でビジネス機会がある動画クリエイティブの領域に魅力を感じたこと。またGoogle勤務時代にInnovidがグローバルでも数少ないYouTubeの認定パートナーで先進的かつマーケットから評価されていることを知っていましたし、そのようなソリューションを日本に紹介できればと思いました。
現在Innovidが注力しているのが、コネクテッドTVにおける動画広告です。これをインタラクティブな動画クリエイティブとともに日本のマーケットに展開いくことは挑戦的であり、そういったところにも使命感を感じました。
マーケットとプロダクトのタイミングを揃えて日本に参入
―今の日本のマーケットの状況とビジネス機会をどのように見ていますか。
ヘンリー氏 日本への参入は数年前から考えていましたが、その当時はまだ日本の市場が、私たちのソリューションを受け入れていただける段階には達していないと判断しました。
それから時が経ち、日本のトラディショナルな広告主の方々にも私たちが提供するリッチな動画広告に興味をお持ちいただけるようになりました。また、私たちのグローバルのクライアントも日本で動画広告を出稿したいという意欲が高まってきています。二つのトレンドから日本への参入を判断しました。
私自身の過去の経験からも言えることですが、多くのグローバル企業が日本に入ってくるとき、マーケットのタイミングはいいけれども自分たちのプロダクトが準備できていなかったり、その逆であったりということが多くあります。
今のタイミングは広告主、広告代理店、媒体社にとってもいいタイミングであり、かつ私たちのプダクトも準備が出来ている状況です。
日本の市場は非常に特別であると感じており、お客様からの個別のニーズをお聞きして、それをプロダクトに反映するというようなこともさせていただくというスタンスでいます。
日本のコネクテッドTVにもリッチな動画クリエイティブを
―日本の競合環境をどのように認識されていますか?またその中でどのように差別化していこうと考えていますか?
ヘンリー氏 日本には様々な動画広告領域のプレイヤーがいますが、色々な領域に特化しており、それぞれと部分的に競合している領域があります。私たちはクリエイティブ、広告配信、レポーティングの三つの領域をカバーしています。クリエイティブの領域ではリッチでインタラクティブでありユーザーとのエンゲージメントを促進するようなものを作るお手伝いをしています。広告配信の領域では、YouTube、Facebook、Twitterとチャネルをまたぐことが出来ます。また、配信した結果を一つの分析プラットフォームでよりリッチなデータとしてみることが出来る。これらの三つを一緒に提供できているのが私たちの強みです。
今後需要が大きくなるであろうコネクテッドTV、オンラインTVの領域では、インタラクティブでデータドリブンなクリエイティブの配信や、今までのTVCMでは取れなかったインサイトのレポーティングなどの先進的なソリューションを提供できるところが強みになるでしょう。
渡邉氏 Innovidは、Ads Data Hub (ADH)というGoogleの先進的なソリューションの数少ない認定パートナーです。これによりYouTubeのインプレッションもトラッキングすることができ、FacebookやTwitter、Teadsなど、他のチャネルの動画広告と合わせて効果測定をすることが出来るというのは、私たちの強みの具体例の一つとして挙げることが出来ます。
―日本ではまずどのようなことから始めますか?
渡邉氏 いろいろとやるべきことはありますが、まずは現在既にご利用いただいている多くのグローバルのお客様に対し日本での展開のサポートを行います。Innovidは米国では広く普及しており、インプレッションベースで全体の32%の動画広告がInnovid経由で配信またはトラッキングされているのです。
また、パブリッシャーサイドでは、私たちのタグを受け入れていただけるように取り組んでまいります。日本の事業者様に私たちの価値をお伝えして、私たちのリッチな広告が日本の既存のデジタルメディアだけではなくOTTでも見られるようにするのが私の使命です。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。