東京が伝えるメッセージは「誇り」-UnrulyによるラグビーW杯/東京五輪の動画広告戦略
動画広告配信プラットフォームのUnruly(アンルーリー)は5月30日、2019年9月より開始されるラグビーのワールドカップ及び2020年開催の東京五輪に向けての動画広告戦略についてのセミナーを開催した。
主なテーマは、日本ブランドによる動画広告を通じた海外マーケティングのあり方について。国ごとに異なる文化や国民性に合わせた動画広告の最適化方法などについて解説がなされた。
Unrulyは、米ウォールストリート・ジャーナルや英タイムズ紙といった世界的なパブリッシャーを傘下に置くニューズ・コーポレーション・グループに所属。国内外のプレミアムメディアを束ねた動画広告配信ネットワークに加えて、パネル調査や学術的な研究に基づいた「感情データ」を広告主に提供することで、その他の動画広告プラットフォームとの差別化を図っている。
Unrulyのフィル・タウンエンドアジア太平洋地区チーフ・コマーシャル・オフィサーによると、Unruly では「個人主義かそれとも集団主義か」、「流行性重視なのか機能性重視か」といった観点から各国を分類。流行性を重視する地域では有名人が登場する場面により焦点を当てる、といった形で動画広告の編集作業に役立てたり、同じ傾向を持つ国を識別して効果的にメディア予算を投下することを目的としている。
また同社の分析データでは、2012年のロンドン五輪では「インスピレーション」、2016年のリオ五輪では「興奮」が鍵となる感情要素であった。2020年の東京五輪では、「誇り」が重要になるという。
同社はこれらの感情データを最大限に活用するため、ソーシャル動画広告制作企業のブレイブ・バイソンと提携。広告主から動画広告の内容やその目的またはターゲット層などの詳細を得ると、①Unrulyがそれらのテーマに関するトレンドや見識を提供、②ブレイブ・バイソンが動画広告を制作、③Unrulyが持つパネルを通じて動画広告をテスト、④必要に応じて動画を修正、⑤修正後の動画広告をUnrulyのネットワークに大規模配信、⑥最終的な効果測定、などを行う。
ブレイブ・バイソンのケイト・バーンズCEO及びアジア太平洋地区ジェネラル・マネージャーのキャロライン・トロマン氏は、セミナー終了後の質疑に応じた際に、パネル調査でのテスト結果をどのように生かして動画修正を行うかについて説明した。具体例として挙がったのが、大手航空会社の動画広告に映し出された、客室乗務員が乗客の身体に触れる場面。欧州では親切な行為として受け止められる傾向があるが、他人に身体に触れられることを避ける人々が多くいる日本のパネル調査では、この場面に対する評価は高くなかった。この結果を受けて、日本市場向けの動画広告では該当箇所を削除したという。
セミナーに登壇した電通グローバル・ビジネス・センターのビジネス開発室の池田力部長は、社名変更告知や新プロダクトの全世界一斉発売といった例外を除いて、「国内と海外両方に有効なコンテンツを制作するのは難しい」と主張。個々のプロダクトやサービスは各地域の事情や文化に根ざしたものが多いため、それらを扱う動画広告も地域ごとに変更を加える必要があると述べた。
また横浜市文化観光局横浜魅力づくり室企画課の須田浩美係長は、横浜市の魅力を海外へと伝える動画広告において、Unrulyの感情データを活用した事例を紹介。行政機関として予算が限られている状況においては、動画を複数パターン用意することが困難であるため、感情データやテスト措置など、事前に広告効果を高めるための仕組みが重宝するとの考えを示した。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。