サイバーエージェント、”販促革命センター”で仕掛ける「店舗集客型デジタル広告」[インタビュー]
サイバーエージェントは、店舗集客型デジタル広告(O2O広告)の市場規模を公表した。
この調査結果の背景にある市場動向や、同領域における戦略的な取り組みについて、同社販促革命センター 局長 高橋篤氏にお話を伺った。
―まずは、今回公表された店舗集客型デジタル広告(O2O広告)の定義について、お聞かせください。具体的にはどのようなものを指しているのでしょうか?
「店舗への集客を目的として出稿するデジタル広告」というのが定義です。私たちは昨年これをO2O広告の市場規模として公表しましたが、広告・マーケティング業界以外の方にとってもより分かりやすい表現が良いのではないかということで、呼び方を変えることにしました。
具体的には、GoogleやLINE、Yahoo! JAPAN、Facebook、Twitterなどの広告プラットフォーマー、また、位置情報サービス専門のプレイヤーなどに代表される媒体の広告プロダクトなどを挙げることが出来ます。ユーザーを店舗に誘導する目的で出稿するデジタル広告を対象にしています。
―店舗集客型デジタル広告(O2O広告)の需要拡大の背景について、お聞かせください
需要拡大の背景には大きく三つのポイントが挙げられます。
一つ目は、国内のスマホ保有率の高さによる個人におけるメディア接触時間の長さです。店舗集客型デジタル広告の出面のほとんどはスマホ端末のため、端末の位置情報を活用して来店計測が可能なのは、常にユーザーが肌身離さず携帯するスマホならではです。
二つ目は、広告商品の多様化です。広告主の需要の高まりを受けて、大手広告プラットフォーマーや各種プレイヤーが昨年から今年にかけて広告商品の種類を増やしています。
三つ目は、広告主の層が拡大しているということです。元々この領域における広告主である、店舗を保有する小売カテゴリに加え、店舗をチャネルとするメーカー企業による広告出稿の増加が見られます。
―これらの広告主は、どのような予算を割いていますか?
小売業の場合、広告宣伝部門が出稿しているテレビCMや、販促部門のチラシ予算の一部、またメーカーの場合においても、広告宣伝部門、あるいは営業部門が保有する販促予算から割り当てられているケースが多いという印象です。
しかし現状は、店舗集客型デジタル広告への出稿単価がそれほど大きくはないので、明確にどこの予算から捻出するのか、ということは定義しきれない状況です。
―公表された予測では、2020年から2021年にかけて高い成長を予想していますが、これにはどのような理由があるのでしょうか?
理由としては、先述の市場成長の背景の二つ目のポイントと同様のことが挙げられます。
大手広告プラットフォームによる広告商品が今年から来年にかけて出揃ってくるのではないかと予想しており、それを加味した上での予測となります。私たちは2021年、この市場が成長する大きなポイントとして見ています。
将来、デジタル広告によるユーザーの来店のみならず、購買行動をも計測できるような仕組みが広がれば、店舗集客型デジタル広告の需要は飛躍的に拡大するでしょう。
―広告主側は、環境が整えばいつでも投資をすると見ているのですか?
いつでもというのは正直不透明です。日本の広告費の中で、販促プロモーション領域は約2兆円あります(※)。仮に、そのうちの10%をこういった店舗集客型デジタル広告に充てよう、トライアルをしてみようと捉えると、一気に2,000億円のマーケットが出現します。
そういった意味ではこのマーケットのポテンシャルは大きいと考えています。
今後5Gの普及によっては、高速・大容量化が可能となり、動画の視聴や、映像技術に象徴される広告フォーマットの変化も考えられます。このようなこともまた、広告主の投資の加速を後押しすることになると思います。
※出典元:日本の広告費より
―この市場で今後成長を促進する要因をお聞かせください。どのようなテクノロジーや媒体の活用が期待されていますか?
今後も、基本的な成長の軸となるものは変わらないでしょう。スマホとテクノロジーの変化、大手広告プラットフォームを中心とする広告メニューの進化やアップデート、そしてそこに紐付く広告主による投資の拡大です。このサイクルが成長をより促進する要因となるでしょう。
また、「店舗のデジタル化」の領域における進化も重要な要因となります。「プロモーションのデジタル化」と掛け算となることで、今後この市場の成長は更に加速することになるでしょう。
―サイバーエージェントは今後この領域でどのような強みを発揮することが出来ますか。独自の取り組みについてお聞かせください。
まずはこの領域に取り組んでいくための組織体制です。2年前の2017年に、当社では「販促革命センター」というデジタル販促領域に特化した専門組織を立ち上げています。
加えて、特徴的な組織活動として、主に三つ挙げられます。
一つ目はクリエイティブに対する取り組みです。販促領域に特化したクリエイティブ制作を行う専門部署「ローカルテクノロジークリエイティブセンター(LTCC)」を設置し、本領域におけるクリエイティブの強化を図っています。
二つ目は、子会社のCA Retail Marketingです。店舗を保有する企業を対象に、店舗内のサイネージにおける動画コンテンツの企画立案、制作、運用まで一貫したサポート、およびビーコンやカメラを用いた来店計測など販促マーケティングをトータルで支援していきます。
三つ目は、独自の研究機関である「サイバーエージェント次世代生活研究所」です。研究対象の1つとして、“次世代店舗研究”を行っています。所属メンバーが、アメリカや中国などの先進的な企業や店舗、およびそのユーザーの動向を分析・研究を行っています。
こういった当社独自の取り組みや組織体制を踏まえて、「店舗集客型デジタル広告」の市場に取り組んでまいりたいと考えております。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。